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Criminal  作者: 花咲薫
7/12

6


 『会議室』と書かれた扉から、クラーク達が出てきた。

 扉を閉めると同時に、三人はため息をつく。


「……あの子供の話、お前は信じるか?」


 ロイドの問いに、クラークは答えない。代わりに、ステラが口を開いた。


「今は信じるしかないと、思います。……他に、情報はないわけですし」

「あの少女が言うには、その『友達』が黒フードの奴らを雇ったということになるな。……予想はしていたことだが、面倒くさいことになりそうだ」


 ため息交じりに、クラークはつぶやいた。

 一体、どこからたどって行けばいいのか――

 そのクラークの思考を読みとったかのように、ロイドが口を開く。


「黒フードの奴らから、たどっていけ」


 クラークの目の前に立ち、命令口調でそう言った。

 呆れ顔を浮かべ、「どうやってたどっていけばいいんだよ。何の情報もないんだぞ」と反論を述べる。


「だから、さっきも言っただろ? 『便利屋』を使えって。もちろん、裏に通じてる奴をな」

「裏に通じてる便利屋って――まさか、便利屋(ハンディマン)を使えって言うんですか!?」


 ステラが、ヒステリックな叫び声をあげた。廊下を歩いている人達の視線が、三人へと向く。

 裏の世界で、一番と言われるほどの腕を待つ便利屋の事を、表側の人達は便利屋(ハンディマン)と呼んでいる。

 性別も、身長も、容姿も謎。どんな仕事を扱っているのかも分からず、ただその名前だけは有名であった。数十年前から話題になっているが、一体その人物の年齢はいくつなのか。もちろん、それも分からない。

 

「それを使うのが、一番てっとり早いだろう。上の許しは出てる」

「そんな……! 便利屋が、便利屋を――犯罪者を使うっていうんですか!?」


 うるさいな、という表情でロイドはため息をついていた。

 クラークは唾をごくりと飲み込み、厳しい表情を浮かべていた。

 

「……そいつと、連絡をとる手段はあるのか」

「クラーク! まさか、本気で使おうなんて――」

「もちろんある。お前がそれを望むなら、今日の深夜零時に、アバカロフ公園に呼び出しておくが?」

「――クラーク!」


 ステラの叫び声が、クラークの頭に突き刺さった。

 使うか、使わないか――

 長い沈黙の後、クラークはゆっくりと口を開いた。


「……使う。――使おう、そいつを。便利屋(ハンディマン)を、使う。それしか、選択肢はない」


 まるで自分に言い聞かせるかのように、彼はそう言った。

 その答えに、ロイドは微笑む。ステラは、信じられないと言った表情を浮かべていた。


「分かった、じゃあさっき言った時刻と場所に、呼んでおく。それと、会議室の中にいる子供はお前に任せた。子供だからと言って、容赦はするなよ? あいつが嘘をついている可能性もあるし、もしかしたら犯人かもしれない。……分かったな?」


 クラークはゆっくりと頷く。

 ロイドはその動作を見ると、小さな笑みを浮かべたまま、廊下を歩いて行く。

 彼の後姿が見えなくなったとたん、ステラがクラークに噛みついてくる。


「あんた、便利屋(ハンディマン)を使うなんて、本気なの!? なんで、ああやって答えちゃったのよ!」

「……仕方ないだろ」


 うんざりとした表情で、クラークは言う。ステラの態度に、半ば呆れている様子だった。


「仕方ないって……! あたし達は、『正義』のために働いているようなものよ!?」


 『正義』という言葉を聞いて、クラークは思わず笑ってしまった。


「ステラ、お前は夢を見すぎた。そろそろ現実を見ろ」

「何よ、それ……! 私は本気で――」


「いい加減にしろ!」と叱咤し、クラークは冷たく言い放つ。


「……この会社に、『裏』とつながってる奴らが一人もいないとでも思ってるのか? そんなわけないだろう。俺も、出来る限りそっち側の力は使いたくないが、今回は仕方ない。……それとも、正義とやらを貫いてこの事件を迷宮入りさせるか?」

「っ……」


 ステラは悔しそうな表情を浮かべながら口を閉じた。



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