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廊下を歩いていると、突然腕を掴まれた。クラークは足を止め、振り返る。
そこには、不敵な笑みを浮かべているロイドがいた。
不思議そうにクラークは首をかしげる。
「朗報だ。事件に関しての情報を、提供してくれる人が現れた」
クラークはステラと顔を見合わせた。そして、再びロイドを見て、
「本当か?」
「嘘をついてどうする。会議室に待たせてあるから、とっとと行くぞ」
そう言って歩き出すロイドの後姿を見て、ステラはくすりと笑う。
「あれが、あなたの幼馴染ね? 政府の人だって言うから、もっとお堅い人なのかと思ってた」
「……行くぞ」
ため息交じりにそう言うと、クラークはロイドの後をついて行った。
*
横に長い机に、パイプ椅子がいくつか並んでいた。入って正面にあるガラス窓からは、太陽の光が注がれている。
会議室の椅子に座りながら、正面に座っている『情報を提供してくれる人』を見て、クラークは思わず顔をしかめた。
こじんまりとした体で、緊張しているのか目を泳がせている、その人物は、どこからどうみても十代前半の少女であった。
右隣に座っているステラに、小さな声でクラークは耳打ちをする。
「なぁ、本当にこいつが、事件の事に関して、なんか知ってるのか?」
「そう信じるしかないでしょ。手元にある情報なんか、無いに等しいんだから」
「……」
クラークはため息をつき、今一度少女を見つめた。少女はこちらの視線に気づいた様子で、恥ずかしそうに俯く。
「さてと――早速だけど、本題に入らせてもらうよ」
左隣に座っているロイドが、いつもと同じ、冷たい声でそう言った。
「は、はい」と少女は震えた声で返事をする。
「最初に確認しておくけど……その情報は、確かなものなんだろうね?」
そう言うロイドの目は、「嘘をついたら、子供だろうと容赦しない」と語っていた。
「はい、もちろんです」
自信の満ちた目で、少女は言う。
「……それじゃあ、まぁ――話してもらおうかな」
「はい。――あの事件の犯人は、私の友達です」
その少女の言葉に、三人は同時に驚愕の表情を浮かべた。