表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴン・ファイト  作者:
第一章
6/11

5

 黒板に三角形が書かれ、横に三本の線が加えられていく。一番上が特別特待生、その下に特待生、一番下が一般学生。

「この学校は完全成績主義だ。お前たちには座学は基本的にほとんどやらせない。クラス編成も体力や技術の向上をメインに授業。そして、強ければ強いほど学校の待遇も良くなってい


る。まず、お前らの中で最も強いものが特別特待生。これは一人だけしかなれない。勿論、学校の待遇も違ってくる」

 具体的には、学費の全額免除や生活費の支給。どちらも、一学生には手に余る相当な額らしい。寮室はホテルのスイートルームのような部屋が用意されているそうだ。特別特待生となれば、それだけ、学校としても国としても手放したくない存在なのだ。

 お前たちにはこれになれるように励め。そのために強くなるのもひとつの手だ――とガダン先生が告げる。

「次に特待生。これは三人だ。こいつらには学費免除、特別特待生とまではいかないが生活費も支給される。寮の部屋も一人部屋だ。それ以外は一般学生。学費も払ってもらうし、生活費も支給されない。部屋は二人部屋だが、特別特待生や特待生より小さい。まずは、特別特待生とは言わずとも特待生を目指すのが妥当だろう。そして、クラス分けは上から順に決まっていく。ここは一番上のクラス。つまり、目標がとても明確で分かりやすいクラス、というわけだ」

 特別特待生と特待生。その言葉を聞いた何人かの視線が動いた。探るような目が教室を駆け巡る。一般生が自分たちの目標、あるいは標的を探しているのだろう。

「キョロキョロするな!」

 ダガンの声に、浮いていた視線が止まる。全員が前を向き、ガダンの方を向く。

「心配しなくても、今から名前を読み上げる。その順番が順位だ。名前を呼ばれた者は寮の鍵を渡す。まず、序列一位、セール・ハルト」

 名前を呼ばれた生徒が席を立つ。立ったのは、一番最後に入ってきたあの生徒――血まみれの生徒である。彼が特別特待生。つまり、この学校の一年の中で最強だということだ。人は見た目で判断できないとはよく聞くが、あの異常性はどう判断すべきかわからない。

 ガダンはセールの服を見ても何も言わなかった。まるでそれが何もおかしなことろがないように、当たり前のように平然としている。セールは持っていた剣を腰から下げた左右の林檎色の鞘に仕舞い、深紅の手で鍵を受け取った。

 全てを赤く染めた彼が一位。俺もいずれあのように全てを紅く染まる時があるのだろうか。あるとすれば、それは遠くない時だろう。

「次、序列二位。スタン・R・サケイ」

 立ったのは、前の席の生徒だった。胸の辺りまである薔薇色の髪がさらりと揺れる。後ろ姿だけなら女性にも男性にも見えるが、微かに見えたその横顔は少なくとも肌色をしていなかった。黒というか焦げ茶色に見えたが、長い髪が影になったせいだろうか。まぁ、制服がズボンだから男に間違いはないのだが。身長は百六十五ぐらいで少し小さめだ。両手に皮の手袋を嵌めて、右肩から提げた細長い赤褐色のカバーは彼の得物が入っているに違いない。恐らく中距離型の間合いの広い武器、槍や彼女と同じ棍棒だ。ならあの手袋は滑り止めか。自分の短い間合いをカバーするためか。

 スタンは鍵を受け取ると、自分の席に戻るためにこちらに向き直った。その顔を見た数人が息をのんだ。俺もその例外ではない。

 顔の三分の一が……ない。顔の中心から左の鼻筋を横切って、そのまま直線的に伸びている境目。三分の一が黒く黒く、変色している。爛れているわけではない。なのに、眉毛が、目が、まつ毛が、瞼が、ないのだ。

 火傷? だが、あんな綺麗に境界が出来るはずがない。もしかしたら生まれつきか? 気になるが、波風の立たない生活のためだ。聞かない方がいいだろう。

「次、序列三位、六戸芽室」

 鍵を取りに行ったのは例の彼女だった。三位という順位に不満があるのか、八つ当たりに鍵を引っ手繰る。それをガダンはセールとスタンを誰にでもわかるように睨んで席に着いた。

 そして、次に呼ばれたのは、

「序列四位、土田・D・雄大」

 俺だ。順位は、合格発表の際に予め聞かされていたので、大した驚きもない。ただ、この順位は些か面倒な立ち位置だ。下から狙われやすい。特待生でなければ、学費を払わなければいけなくなる。そうなれば俺はこの学校にいれなくなってしまう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ