人は見かけによらない話
短編です
0時になった。昨日までの貸し出しリストを印刷してレジ横に張る。
深夜のレンタルDVD屋の業務の一つだ。一分でも返却期限を過ぎれば、延滞料金を貰うことになる。
その日のうちの23時59分59秒まではギリギリセーフと言うことにはなるけど、そんな時間を狙ってくるのは絶対にやめたほうが良い。店員と押し問答をしているうちに、貴重な一秒が過ぎて、延滞扱いになってしまうから。これは俺が決めたルールじゃない。レジに勝手に組み込まれているシステムだから、俺にクレームを入れるのはやめてほしい。
だからレンタル品は確実に返せるときに返しておいた方が良いんだ。というかそもそも余裕持って返しに来いよな。
「店長、昨日までの分、張り出しました~」
裏で仮眠をとる店長にそう声をかけたけど、伝わったかは不明だ。
人の来ない深夜のバイトは暇だけど、暇しているだけで昼間働くよりプラスでお金を貰えるんだから、俺にとっては最高の時間と言える。
自動ドアが開いた。ちぇっ、客が来た。
「らっしゃ~せぇ・・・」
金髪の角刈り、鼻と口元にピアスバチバチで、髑髏柄のTシャツを着こなした、THE不良と言った風貌の男性が入ってきた。なんで俺のバイトの日に限って・・・。
男は迷わず俺の前に来た。
「返却したいんだけど」
「では商品を・・・」
「ココに・・・あれ、ない。いや、さっきまで持ってたんですけど、おかしいな、ちょっと待ってくださいね」
見た目に反して腰が低い。でも商品がないなら返品作業はできない。
「商品を持って来ていただかないと、なんとも」
「いや、さっきまで持ってたんだって、電話番号とかで調べらんないの!?そう言うの!!」
おいおい、クレーマーかよ。でもこういう時、あれもダメ、これもダメって言い返すと、厄介なことになる。
「とりあえずお調べしますね」
男がぶっきらぼうに伝えてきた電話番号で借りたDVDの照会をする。
確かに一週間前にアニメ映画を数本借りている。意外なチョイス。
でもこれ、丁度昨日、というかさっき0時を越えたことで延滞扱いになった奴だ。
「あの~、確認はできたんですけど、延滞になります」
「はぁ!?今日までだよな!」
「正確には、昨日の0時までです。今はもう0時12分なので、延滞という扱いになってしまいます」
「たった12分で!?」
「それに、商品を持って来ていただかないと、そもそも返却の手続きもできないので・・・」
「なんだよ・・・俺、いま持って来てたのに!この手に!持ってたんだよ!」
そんなことを言われても・・・。
「ちょっと一緒に確認しに来てよ!」
「え、いや・・・」
「さっきまで本当に持ってたんだって!来る途中で、昔の知り合いに絡まれて・・・絡まれて・・・・あれ?」
男性が何かに気が付いたような顔をした瞬間、男は消えた。
「え・・・」
店内放送のラジオだけが響いていた。
訳も分からないまま、レジに立ったままでいると、警察が入ってきた。
「あの、このDVDってここで貸し出しているもので間違いないですか?」
警察官に血の付いたDVDのパッケージを見せられた。ついさっきの男性が借りていたDVDだ。電話番号で確認もした。ついさっき現れて、急に消えてびっくりしていると警察に伝えると、顔を見合わせた。
「この男性、すぐそこで亡くなっていたんです。不良同士の小競り合いみたいで、財布が盗まれていて。何か物音とか聞きませんでしたか?」
「えっと・・・さっきって」
「時間としては0時前にはすでに亡くなっていた可能性が高いんですが」
俺は確かに0時12分頃、彼と話をしている。店長を叩き起こして防犯カメラの確認をしてもらうと、自動ドアが勝手に開いて、俺は虚空に向かってぺこぺこしたり、レジを操作したりしていた。
「あー・・・たまにあるんですよね、亡くなったことに気が付かなくて・・・みたいな話」
ベテランらしき中年の警察官がそう言うと、若い警察官が「やめてくださいよぉ!」と泣きそうな声を上げた。いやそれ、俺のセリフ!
——ほんとにやめてぇ!!——
なんていうか、見た目のわりに・・・律儀な人だったな。




