第一章 囁かれた風 ―― 松明の勇者
疑念は、怯えた心臓のように、まだ頭の中で脈打っていた。
落下の衝撃は乾いた一撃だった。
闇の中から一気に意識を引き戻され、数秒間、俺の体が認識できたのは、腰に走る鈍い痛みと、香の煙と粉塵が混じった奇妙な匂いだけだった。
工場。
湿った段ボールと錆びた鉄の臭い。
冷蔵庫の耳障りな唸り。
目的もなく、重く、ただ繰り返される日常。
それらはすべて、目覚めと同時に溶けて消えた。
まるで、起きた瞬間に忘れてしまう夢のように。
ゆっくりと、無理やり、脳が新しい環境を理解し始める。
灰色の石壁。
幾千年も時を耐えてきたかのような巨大な石のブロック。
壁には、戦争の旗のように巨大なタペストリーが掛けられ、
そこには本の中でしか見たことのない怪物との戦いが描かれていた。
鉄の支えに固定された松明が、
揺らめく暖色の光を放っている。
その光は、
工場の蛍光灯が作り出していた、
病的で冷たい白とは、あまりにも対照的だった。
磨き上げられた大理石の床が、
炎の光を反射して輝いている。
すべてが、同じことを叫んでいた。
俺には、はっきりと理解できる言葉で。
――中世ファンタジー。
そして、
広間の中心。
獅子の頭が彫られた大きな玉座に座る男がいた。
深紅のマント。
重厚な黄金の王冠。
手入れされた長い髭。
まるで、アニメのオープニングからそのまま出てきたような存在。
俺は……召喚された。
異世界だ。
その言葉は、雷のように脳内で炸裂した。
啓示だった。
その瞬間、痛みも、不安も、すべてが吹き飛んだ。
工場での屈辱。
無為な労働の日々。
そんなものは、もうどうでもいい。
俺は自由だ。
停滞から。
凡庸さから。
役立たずだった自分から。
抑えきれない笑みが、勝手に口元に浮かんだ。
少し引きつった、ほとんど狂気じみた笑み。
人生の宝くじに当たり、
ついでに「主人公」という役まで与えられた人間の笑顔だった。
だが、その高揚はすぐに現実に引き戻される。
俺は笑っていた。
だが、他の召喚者たちや、
この場にいる重要人物たちの表情は、
どのアニメの緊迫シーンよりも険しかった。
玉座の傍。
空気は明確に敵意を帯びていた。
王の左には、
背が低く、横に広い体格のドワーフが立っていた。
太く編み込まれた髭には銀の輪。
目は燃える炭のようだった。
彼の不機嫌そうな表情は標準装備らしかったが、
俺――この場で唯一、笑っている新参者を見た瞬間、
その敵意は倍増した。
まるで、
鋳造に失敗した欠陥品を見るような目。
その隣には、息を呑むほど美しい存在。
エルフだ。
その美しさは幻想的だったが、
視線は刃のように鋭い。
白い肌。
翡翠のような緑の瞳。
長く流れる完璧な金髪が、
光を受けて銀の絹のように輝いている。
彼女が俺を見た瞬間、目を細めた。
それは、貴族的な嫌悪。
床に潰れた虫を見るような視線だった。
さらに左には、
若く見えるが、立ち姿は歴戦の兵士のような男。
完璧に整えられた軍服。
腰の剣に添えられた手は、
いつでも抜ける位置にある。
無表情だが、
あまりにも集中しすぎていて、
逆に不気味だった。
……なんだ、この人。
その時、王が立ち上がった。
低く、力強い声が、
広間を満たす。
礼儀正しい雷鳴のような声。
「勇者たちよ。
予告もなく、ここへ招いたことを詫びよう。
だが、必要不可欠だった。
それは……予言によるものだ」
俺は、また笑いそうになった。
来た。
完全にテンプレだ。
召喚理由の長い説明タイム。
だが、その前に、
短剣のような声が空気を切り裂いた。
「……あなたは、誰?」
一人の女性が、一歩前に出た。
その立ち姿には、恐ろしいほどの自信があった。
恐怖の色は、どこにもない。
即座に、近衛兵が反応する。
槍が一斉に俺たちへ向けられ、
金属の擦れる音が広間に反響した。
空気が一変する。
荘厳から、殺気へ。
一歩間違えれば、虐殺だ。
俺は喉を鳴らし、
首筋に冷たい汗を感じた。
だが、その女性は瞬き一つしない。
黒いトレーニングウェア。
引き締まった腹筋が見えるノースリーブ。
動きやすい短パン。
髪は結ばれ、
全身に新しい汗。
どう見ても、直前まで激しい訓練をしていた。
「武器を下ろせ」
王の短く苛立った命令で、
兵士たちは即座に退いた。
彼女は数秒間、動かなかった。
その姿は、
俺が日曜出勤を想像する時よりも、
死の脅威を軽く見ているようだった。
王は深く息を吸う。
「無礼を詫びる。
私はウントール王、カストラン・ヴァロンゴ三世。
そして、こちらが王妃エルナラだ」
王妃は、
水のように滑らかな所作で一礼した。
「皆様をお迎えできたこと、光栄に思います……
このような悲劇的な状況でなければ」
王は続ける。
「我が左にいる者たちは、
ウントール最古の同盟国だ。
まず紹介しよう。
こちらは、西方山脈の王、
ドワーフ王スルガン」
ドワーフは一歩前に出て、
挨拶とも唸りともつかない動作をした。
「スルガンだ。
正直に言おう。
見ず知らずの者に、
我らの運命を託すことには反対だった。
これが無駄でなければいいがな」
彼は元の位置に戻り、
敵意を放ち続けていた。
「隣は、
エルフ王国の女族長、
ラ・ヴォンターナ家のレディ・ケアリー」
彼女は優雅に一礼したが、
その態度は完全に上からだった。
「ごきげんよう、英雄たち。
大天使ザリエフの光が、
あなた方の道を照らしますように」
そして、
わざとらしくドワーフ王に向き直り、
意地の悪い笑みを浮かべる。
「スルガン陛下。
これが、英雄に対する
最低限の礼儀というものです。
野蛮人のように振る舞うのではなく」
スルガンは低く罵り、
俺を睨みながら吠えた。
「痩せっぽちめ!
言葉を飾れば礼儀だとでも思ってるのか!
俺は野蛮人じゃない!」
……俺のことか?
どうやら、
個人的に嫌われているらしい。
そこへ、
若い男が割って入った。
「どうかお控えください、
スルガン王、レディ・ケアリー。
英雄の前です」
王が頷く。
「こちらが、
ウントール騎士団長、
サー・プロヴォロン・ポーストレ二世だ。
彼が、君たちと王国軍を繋ぐ役目を担う」
プロヴォロンは、
簡潔だが力強い軍礼を行った。
だが、
最初に声を上げた女性は、
なおも引かなかった。
「セシリア・クロガワです。
続ける前に聞きます。
ここはどこ?
なぜ、私たちは誘拐されたの?」
“誘拐”。
その一言で、
場の空気が凍りついた。
俺の頭の中では、
ただ一つの考えが踊っていた。
異世界。
七人。
魔法。
王。
予言。
……完璧すぎる。
王は手を上げ、
沈黙を作った。
「説明しよう」
そして語られた。
二十年に及ぶ戦争。
魔王アスタロト。
沈黙した神々。
滅びへ向かう世界。
重い話だった。
だが――
俺は、
笑っていた。
俺は、
ようやく主人公になったのだから。
「互いを知る時間はある。だが今は、お前たちがこの世界にもたらすものを確かめる時だ」
玉座の傍らにいた魔術師が一歩前へ出た。顔には深い皺が刻まれているのに、瞳は燃える炭のように鋭く光っていた。彼はビロードの台座を抱え、その上にはリンゴほどの大きさの、完全に不透明な灰色のオーブが置かれていた。
「こちらが、召喚を担った大賢者ルーファス・アルデントゥスだ」王が告げる。「識別の儀を導いてくれる」
ルーファスは敬意を込めて頭を下げた。俺を見る目だけが、妙に好奇心を帯びている。
「手をオーブに置け。魔力の適性か、固有の恩寵が示される。恐れるな」
心臓が跳ねた。クラス判定が始まる。俺の異世界が、ようやく本当に動き出す。しがない労働者で終わらないための、たった一度のチャンスだ。
最初はアンソニーだった。NBAの巨体。
彼はバスケットボールを握るみたいに自然にオーブへ手を置いた。オーブは派手に爆ぜたりしない。代わりに、鋼のようなルーンが、上昇する熾火のように浮かび上がった。重く、確かな光。
ルーファスが誇らしげに笑う。
「驚異だ。お前の肉体は魔法に完全耐性を持つ。攻撃も防御も、いかなる魔術も触れられぬ。さらに、純粋な膂力は人の限界を超えている」
アンソニーは腕を曲げ、驚いたように筋肉を確かめた。
「なるほど……ここで目覚めてから、妙に強くなった気はしてた」
広間が拍手に包まれた。安堵と希望の合唱だ。
次はセシリア。
彼女は一撃を放つ直前のような硬さでオーブに触れた。刃のように鋭いルーンが走り、光は冷たく銀色だった。
「極めて希少だ」ルーファスは声を震わせる。「あらゆる固形物を素材に、一時的な武器を生成し、形を変えられる。破壊的で、適応力が高い。戦闘に最適だ」
セシリアは眉を少し上げただけで、満足げに頷いた。
「面白い」
三番目はレアンドロ。最初から自分が一番だと分かっている顔をしている。
彼がオーブに触れた瞬間。
爆ぜた。
青、赤、茶、緑。四色の光が乱舞し、混沌なのに不思議と調和している。魔術師たちが思わず身を引いたほど、魔力が肌で分かる。
「四大元素の適性だ」ルーファスは子供のように目を輝かせた。「水、火、土、風。しかも魔力の器が桁違いだ。優れた魔術師になる」
レアンドロはオスカーでも受け取るみたいに両腕を広げた。
「元々俺は特別だった。今はもっと特別だな」
傲慢すぎて腹が立つはずなのに、正直、格好よかった。悔しい。
アメリが俺の前へ出る。
オーブが、朝日みたいに柔らかく温かな金色に灯った。
ルーファスが敬意を込めて息を吐く。
「神聖魔法だ。聖職者。癒しと祝福の恩寵を持つ。あらゆる隊に必須の存在だ」
アメリは賞を受け取る女優みたいに微笑んだ。
「神聖魔法が私に、当然よね。完璧に似合う」
また拍手。やたらと大きい拍手。
次はマーカス。
彼が手を置くと、オーブは正確な周波数の音波みたいな、規則的な模様を繰り返し描いた。
「興味深い」ルーファスが呟く。「肉体複製の恩寵だ。自分自身の複数の分身体を作り出せる」
マーカスは目を見開いた。
「分身って……めちゃくちゃ変だな。でも、慣れるしかないか」
六番目はルシアン。空気が変わった。彼の翼が、目に見えない力に反応するように、勝手に広がる。
手がオーブに触れた瞬間、広間に風が走った。松明の火が揺れ、垂れ幕がはためき、騎士たちが柱に手をついた。破壊ではない、圧倒する風。
「神々よ……」ルーファスが息を呑む。「私が見た中で最高位の風属性適性だ。その潜在は……計り知れん」
ルシアンは拳を握り、決意を宿した。さっきまでの照れが、責任の重みで消えている。
「最善を尽くします。あなた方のために。この世界のために。魔王の下で苦しむ者たちの自由のために」
広間が沸いた。彼はもう、翼に相応しい英雄に見えた。
そして、最後。
俺だ。
一番しょぼい予感しかしない、アルヴェン。
深く息を吸う。顔が熱い。以前の自分の鈍さ、無為に沈んだ過去が、背中に貼りつく亡霊みたいだった。今ここで、それを祓えるはずだ。
俺は灰色のオーブに手を置いた。
オーブが光る。
弱い。黄色い。今にも消えそうな、マッチの火みたいな光。壁の松明の明るさに、ほとんど負けている。
ルーファスが止まった。息を整え、失望を隠そうとする。沈黙が濃すぎて、松明の爆ぜる音まで聞こえた。
「光……魔法だ」
希望が胸を突き上げた。
「光ですか。闇を倒すやつ。天使みたいな」
ルーファスは悲しそうに首を振った。声は低く、ほとんど嘆きだった。
「違う。ただの……照明だ。炎の光。簡単な術だ。松明のように火を灯し、維持できる。それだけだ」
足元が崩れた気がした。支えていた高揚が、瞬きより速く崩落する。
レアンドロが腹の底から笑った。その声が石壁に反響する。
「ははは。松明の勇者だ。王国の切り札は人間ランタンってわけか」
貴族や兵士の間にも笑いが広がる。乾いた笑い。希望を賭けていたものが外れた時の、焦りと絶望が混ざった笑い。
胸が締めつけられる。首筋に羞恥の熱が昇る。工場の食堂でレオにからかわれた時と同じ熱が、まるで拳みたいに俺を殴った。
マーカスが慰めようとした。
「なあ……気にするな。どんな力にも意味はある」
だが、その声には心配が滲んでいた。
俺が何か言う前に、王が感情のない声で宣告した。避けられない現実を受け入れる時の声だった。
「よかろう。これが我らの手札だ」
それで終わりだ。あの瞬間、俺の運命は固まった。
俺は、松明の勇者。
カストラン王は広間へ向き直り、赤いマントを翻す。
「今は休め。明日、戦議を行う。リオネル」
広間の脇から使用人が近づいてきた。老練な執事の見本みたいな男だ。背が高く細身で、白髪は後ろへ撫でつけられ、細い口髭、硬い表情、完璧な姿勢。セシリアと同じくらい、動きが制御されていた。
彼は優雅に一礼する。
「承知いたしました、陛下」
そして俺たちへ向き直った。
「こちらへ、英雄の皆様。お部屋までご案内いたします。失礼」
俺たちは自然に列になった。厳格な教師に引率される生徒みたいに。リオネルの前を通るたび、彼の視線は誰にも同じ、淡々とした評価を向けていた。
俺に来るまでは。
最後に通り過ぎた瞬間、彼の目が変わった。不満だけじゃない。深い嫌悪。まるで、完璧な宮殿の床に付いた汚れを見るような目。明日の朝までに掃除すべき、許されない間違いを見る目。
俺は喉を鳴らし、体を小さくして列についていった。
リオネルは広い回廊を進む。松明に照らされ、壁には王と古い戦の物語を描くタペストリー。開かれる扉の向こうには豪奢な部屋が続いた。大きな寝台、燃える暖炉、月明かりに照らされた庭園を見下ろす窓。
他の英雄たちは、目を輝かせて部屋へ入っていく。
アメリの部屋の前で、彼女が振り返り、俺に微笑んだ。俺は一瞬で顔が熱くなる。
「おやすみ、アルヴェン。明日、たぶん会うわね」
そう言って、彼女は部屋へ入った。
気づけば廊下に残ったのは俺とリオネルだけ。老執事は隠そうともしない。俺を見る目は純粋な嫌悪だった。
情報が欲しかった。仲間が欲しかった。あの無力感の重さ以外なら何でもよかった。俺は必死に話しかける。
「本当に、別の世界に来たなんて信じられないです。ええと……宮殿に魔法の本とかありますか」
リオネルはまともにこちらを見ない。視線は前方の虚空に固定され、俺は無視すべき家具みたいだった。
「ございます。ただし、許可された者のみが使用できます。より重要なのは、その知識を理解し活用できる者だけが触れるべきだという点です」
俺は笑ってしまった。防衛反応だ。
「はは……でも俺、召喚された英雄ですよ。許可はあるってことですよね」
笑いは途中で死んだ。彼の表情が、露骨な嫌悪と不承認に変わったからだ。あの目は、俺がずっと抱えてきた恐怖の具現だった。
リオネルが溜息をつく。退屈と侮蔑だけで作られた音。
「形式上の許可は出るでしょう、英雄アルヴェン。ですが……率直に申し上げますと、意味は薄いかと。書庫は広大で、秘奥の知は複雑です。あなたのように……あまりに基礎的な力では、深い学びは不要であり、また活かしきれません。あなたの魔法は、その、仲間の方々と比べて有用性に乏しい」
乾いた一撃だった。平手打ちみたいに直線で、逃げ場がない。リオネルはレオの役目までやってのけた。顔が熱くなり、喉が詰まる。俺はただ頷いた。反論する力も、息をする余裕もなかった。
廊下の突き当たりの扉の前で、彼が冷たく尋ねる。
「他にご用は。英雄……アルヴェン」
俺が言葉を作る前に、彼はもう苛立った調子で続けた。
「なければ失礼いたします。私には職務がございますので」
「は、はい……ありがとうございます」俺は小さく答えた。異世界もの史上、最も歓迎されない侵入者みたいな気分だった。
扉が乾いた音を立てて閉まり、俺は世界から切り離された。
部屋は広大だった。俺のアパートの狭い空間とは残酷なほど違う。
杉と絹の匂いが満ちている。清潔で、冷たくも爽やかな香り。湿った段ボールやディーゼルの油の匂いとは別物だ。寝台は小さな車くらいの大きさで、天蓋と白いカーテン付き。厚い絨毯が床を温め、隅には大理石の浴槽が蝋燭の柔らかな光を反射していた。
「……すごいな。この国、どれだけ金があるんだ」
贅沢すぎる。俺みたいな人間には。
俺は鞄をベッドに放り投げた。重さがさっきより増している気がした。荷物だけじゃない。さっき刻まれた恥まで詰め込まれている。
ここは魔法の世界。夢見がちなオタクが憧れる場所。なのに俺の魔法は、ただの灯り。
落胆が、地平線で見たサイクロンみたいに押し寄せた。俺は四元素の支配者じゃない。物語の英雄じゃない。
俺はただの……アルヴェン。
部屋の電気が切れたら照らせるだけの男。
ベッドの端に座る。絹の感触が、妙に心の奥を揺らした。鞄からスマホを取り出す。画面は真っ黒。電源を入れようとしても反応しない。俺の世界の技術は、ここでは無力だ。かつて怠惰の錨だったそれは、今はただの死んだ重りになった。
俺は仰向けに倒れた。絹は薄く、ぬるく、部屋は静かすぎた。
スマホとイヤホンを鞄の奥へ丁寧にしまう。まるで、元の世界との最後の繋がりを埋葬するみたいに。静かな埋葬だ。
白い髪と尖った耳に触れる。変化した証は、それくらいしかない。
「皆が望む英雄は……俺じゃない」
だけど、俺がいる。
俺は、何かをしなきゃいけない。皆に示すために。何より自分に示すために。俺は呼ばれただけの失敗作じゃないと。
人生を変えるのは、いろんなものより重い。
やり直さなきゃ。
「だから……やるしかない。勇気を出す。役に立つ。何かになる」
天井を見つめる。ここに来て初めて、馬鹿みたいな笑顔が消えていた。代わりに残ったのは、静かで、苦い決意。
「明日は新しい日だ……アルヴェン」
もう一度、やり直そう。
そして俺は目を閉じ、眠りに落ちた。




