6-2 戻って来た日常
連休明けの授業日の早朝。
5時32分、和真は目を覚ました。
国武院交流会の日が近づくに連れて、夢の解像度が上がっているような気がする━
目を覚ました時には、枕とベッドのシーツが濡れていた。心臓がバクバクしている。
「またか……」
3日連続で、同じ夢だ。首筋も背中も汗で湿っている。
いつもより少し早く目を覚ましたが、二度寝する気にもなれず、そのまま起きることにした。汗を流すためにシャワーを浴びた。
リモコンでテレビの電源をつけ、パンイチでおにぎりを頬張る。しかし、なぜか異常に甘い。砂糖と塩を間違えるという古典的な失敗を犯し、和真は顔を顰めた。
いつもより早くテレビを付けたため、ニュースではなく通販番組が放送されていた。商品のプレゼンをしている男性の声は、やたら高くて耳に響く。
テレビの音を聞きながら弁当のおかずを作る。色んな具材を敷き詰めた弁当箱をスマートフォンで撮影する。その写真をユリィに送る。
すぐに返事が来た。ユリィとは時々、取り止めのないチャットのやり取りをしている。
毎晩、ユリィとはジムで会ってはいるものの、ほとんど会話らしい会話はしていない。ただ2人で各々のトレーニングをしているだけだった。
しかし、和真にとって、ユリィとどうでもいい会話をできているという事実が嬉しくてたまらなかった。
ユリィとチャットでやり取りをしながら諸々の準備をしていたら、時刻は7時半を過ぎていた。
この時間になると寮が賑やかになり始める。和真は毎日、ガヤガヤする前に校舎に向かっている。今日も例外なく、リュックサックを背負って1限目の教室へ向かう。
教室にはすでに数人がいた。その中にはゆかりとユリィがいた。
「おはよう〜和真〜」
「うん、おはようゆかりさん、久しぶり」
一番最初に目が合ったゆかりに対して挨拶する。
「東条君おはよう」
「おはよう」
ゆかりと談笑していた女子生徒からも挨拶。和真はちらりとユリィの方を見た。目が合った。ユリィはこちらをじっと睨んでいた。
「どうしたの、和真?」
ユリィの謎の圧に怯んだ和真に、ゆかりは訊ねた。
「いや、なんでもないよ」
和真がそう答えると、ゆかりは和真が見ていた先を一瞥し、何事もなかったように向き直った。
和真はゆかりと女子生徒━西山と朝の雑談をした。5連休にどこかに旅行した等、他愛もない会話。
会話を終えると、和真は至って自然を装いつつ、ユリィの隣の席に座った。
「お、おはよ、ユリィ」
和真は挨拶するが、ユリィは黙ったまま、反対側を向いていた。
━あれ?何か怒らせるような事した?
和真は頭をフル回転させるが、心当たりがない。
しばらくすると、ユリィは和真の方に顔を向けた。相変わらず瞳に光が宿っていないが、何か言いたげな目をしていた。
「……お、おはよう、かずま」
遅れて挨拶が返ってくると思ってなかった。和真は改めて、おはようと言った。
「……かずま、寝れてない?」
和真の顔のどこに着目してユリィがそう言ったのか分からないが、眠りが浅かったのは事実である。
「んー、たしかに、あんまり寝れてないかも」
和真はそう答えて誤魔化すように笑った。ユリィもそれ以上追及してこなかった。
その後に祐一、竜二、山内が挨拶した後、和真の近くの席に着いた。
いつもの男子特有のバカ話を始めると、ユリィは窓の景色を眺め始めた。窓に反射して見える顔は、ぷくーっと膨らんでいるように見えた。
*
ゆかりが教室に入った時には、すでに窓側の席に銀髪の少女が座っていた。
「ユリィおはよー!」
ゆかりは目一杯手を振った。ユリィは無表情で小さく手を振り返した。
━ユリィ、なんか変わった?
後から遅れて西山もやってきた。おはようを言い合った後、5連休に何をしていたか雑談していた。
さらに遅れて和真も教室に入ってきた。和真が何かに反応していたので振り返って確かめると、ユリィが和真の方を睨んでいた。
━これは嫉妬の目だね。
ゆかり達との雑談を終えた和真は、当たり前のように、かつぎこちなく、ユリィの隣の席に座った。
━これは、距離が近づいたかな。
和真の周りに男子が集まり、雑談が始まるとユリィはそっぽを向いた。窓に反射して見えるユリィの顔は少し、赤いように見えた。
━これは間違いなく嫉妬。
━それにしても、嫉妬してるユリィかわいい。
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いつもより少し早く目を覚ましたため、
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いつもより少し早く目を覚ましたが、




