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氷銀の魔女  作者:
52/60

5-15 不信感

 テロリストは無論、逮捕された。


 テロリストを無力化した一行は、駆けつけた警察官によって「任意で」同行を求められた。最寄りの警察署での事情聴取に2時間以上もかかった。解放された時点ではすでに正午を超えていた。


 和真は事情聴取の間、精神的に揺さぶられていた。


 鮮血。悲鳴。倒れている人━


 初めての惨劇に、和真は吐き気を隠すことができなかった。


 テロ事件の当事者になってしまったことで、自分はもう後戻りできないのでは、と不安に駆られた。この場にユリィがいないことが幸いだった。


 入り口の自動ドアが開き、一行は警察署を後にした。警察署から離れた段階で、和真はようやく落ち着きを取り戻すことができた。


 矢場内の提案で、学院に帰る前に外で昼御飯を食べることになった。


「あー、ホントに長いんだからポリスメンは」


 兼孝が身体を伸ばしながら不満をこぼした。


「まったく、ちょっと人よりボロボロの格好してるだけでさ、根掘り葉掘り聞いてきてさ、人を疑うことしかできない集団なんだね、あーあー、やんなっちゃう」


 兼孝は心底うんざりした表情をしていた。


「それが彼らの仕事だからよ、警官にだって人を信じる心はあるわよ?」


 此人が兼孝を(たしな)めた。


「でもでもぉ、流石に『あんたホントに人間?』って聞かれた時は流石に()()でしたよぉ?」


━流石に人外扱いされたら怒るんだ……。


 和真は心の中で笑っていた。表情は引き攣ったままだが。


「日頃の行いよ」


「そりゃそうですね…やっぱ」


━自覚はあるんだ……。


「それにしても、IPDの連中、まだ生き残りがいたのね……」


 此人の声のトーンが下がった。


 IPD、彼らテロリストが叫んでいたが、組織名だろうか。


「こないだ自衛隊の旧基地に潜伏していた連中を倒したのに……」


 自衛隊の旧基地━和真は思い出した。


 今朝のニュース━


 自衛隊の基地だった場所にテロリストが潜伏していて、政府軍と警察隊が鎮圧したとの報道。


「…それ、もしかして今朝のニュースでやってた事件…ですか?」


 和真は恐る恐る訊ねた。


「ニュースを見ているとは感心ね、和真君の想像通りだと思うわ」


 テレビを付けてもニュース()()見ていないの間違いである。


 当事者らしい此人は政府関係者か何かだろうか。


「言い忘れてたけどアタシ、コズミックの一員よ」


 コズミック━暁星学院の特務部隊。


 それが和真の認識であり、それ以上のことはよく知らない。


━あれ?コズミックが公的機関じゃないんだったら、ニュースと違うんじゃ?


 ニュースには「政府軍と警察隊で鎮圧」とあった。そこにコズミックを示すワードが出てこないのは、おかしいのではないか。


 和真は、テレビの報道に拭いきれない違和感を抱いた。それともコズミックとは、一般的には知られていない秘密組織のようなものだろうか。


「あ、そーいえば矢場内さん、《かめむし》先輩も国武院に行くんですよね?今どこで何してるんですかぁ?」


 兼孝は思い出した様に此人に訊ねた。


━…え?今なんて?


「あー《かめむし》君ね、今は井伊議員(せんせい)のもとで秘書研修中よ、3日後には戻って来るみたいだけど」


━か、かめむし…?


 人の名前あるいはニックネームにしてはあんまりなのではないか、和真は思った。


 完全に蚊帳の外に置かれた和真は、暇そうに周囲を見回した。《ソイゼリヤ》の看板を見つけた。今度食べに行こうか。


━かめむしってどんな人なんだ……。


 ただ、名前のインパクトが強すぎて、その場で聞く気にはなれなかった。


 今日だけでなく、この連休は色々な出来事があり過ぎた。一旦この連休を振り返る時間が必要だ。日記として残しておいた方が良さそうだ。

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