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氷銀の魔女  作者:
51/59

5-14 正しさとは

 ようやく消火器の煙と砂塵が収まった頃、兼孝は和真達に気づき、走って近づいた。


「おー和真クン、とヤバい人」


「矢場内よ!失礼しちゃうわね。()()()()よ。というかアンタにだけは言われたくないわ!」


━僕から見たらどっちもどっちなんだけど。


「いやあ、砂粒に魔力エネルギーと電磁場のエネルギーと円運動の運動エネルギーを与えたら陽子と電子の移動が起きたみたいで━」


 サラッととんでもないことを口走る兼孝に、此人は冷静に呆れていた。


「砂のシリカが金属のソディウムに変化したと」


「多分、というか間違いなくそう!」


 兼孝はバンザイをしながら此人の説明に肯定した。


━え?魔法で元素って変化するの!?


「そして金属のソディウムが空気中の水分と反応して、炎上したと」


「そういうことでーす!」


 全く反省の様子が見えない兼孝。


「……まあ、やめろと言って止まるような子じゃないのは知ってるけどひとつだけ言わせて」


 此人は真剣な顔で兼孝を見つめた。


「元素変化を伴う魔法は人によって変化の仕方が変わってくるんだからしっかり準備しなさいよ」


━え?注意するとこそこなの?危ないからやめろとかじゃないの?


━というかソディウムって何?


「ああ、和真君、ナトリウムのことよ。炎の色が黄色だったでしょ?炎色反応、聞いたことあるかしら」


━何で僕の思考を読んでるのこの人。


「確か、『リアカー無きK村』(なにがし)のやつでしたっけ」


「そーう!」


 和真の発言に、今度が兼孝が答えた。


「あの時、『あ、これソディウムだ、水はダメだ』と思ったから、こんなこともあろうかと粉末消火器を用意してたんだ」


━その前に『こんなこと』を起こすな。


「ところでさ、矢場内さんは和真クンと何してたの?」


 此人は周囲を見回した後、国武院の件について兼孝に話した。


 此人が歩き出すと、背後を和真と兼孝が歩く。


「そういえばそんな話もあったねぇ」


 兼孝も参加者のはずだが、どこか他人事だった。


「国武院は反魔法的な思想を背景に設立された教育機関だけど、侍である和真君はどうして暁星学院に来たの?」


 今まで聞かれそうで聞かれなかった疑問。


 学院の敷地を出て、どこかをめがけて3人は歩き続ける。


「……国武院に来てた堂ノ上理事長に誘われて、流されるままに編入しました。最初は生活の安定が第一でした。入る前はニュースとかで『魔法イコール悪』って印象がありました。けど、堂ノ上理事長の人柄を見てると、とてもそうには見えなくて……僕は魔法のマの字も知らなかったけど、この目で、真実を見てみたくて……」


 和真は思い付いた順に言葉を並べ、経緯と動機を語った。


「なるほど、理解したわ」


 此人は頷いた。


「その母校が、反魔法主義を掲げているのにも関わらず、ASF(アンチスペル)という魔法を使用していることにはどう考えてる?」


「国武院の教育方針は『魔法に負けない身体と精神を育む』なので、『魔法の根絶』より『魔法との共存』を目指していると考えれば理屈は通ると思います」


 此人の矛盾の指摘に対し、和真は自身の解釈を述べた。


「正しいモノの見方ね」


「要するに魔法を『禁止』するか『制限』するかの違いってことだね、反魔法主義も一枚岩じゃないんだねえ」


 兼孝はやれやれと言いたげなジェスチャーをしていた。


「魔法に反対する理由も千差万別。例えばあれ」


 此人は突然立ち止まり、ある集団を指差す。


 彼らは律儀に列になってプラカードやスピーカーを持ちながら「魔法反対!」などと叫んでいた。参加者には高齢者、スーツの男性などがいた。


「彼らは、魔法によって拡がる格差を是とせず、デモを起こしているわ。魔法適性の有無で、社会的立場が決まってしまうと思っている人たち。魔法が台頭して困る企業や団体が市民を煽動しているわ」


 交通への影響を顧みずに車道を占領するデモ集団を横目に、3人は彼らに目線を向けずに歩道を歩く。


「彼らの集団の中には、過激に走る者もいる。まさにあれ━」


 此人が指を差した先。


「我らIPDの名の下に!」


「魔法を駆逐する!やあぁぁぁぁあ!」


 迷彩服を着た2人組の男が、機関銃を突然乱射し始めたのだ。


 乾いた弾丸の発射音、遅れて発せられる悲鳴。逃げ惑う歩行者、乗っていた自転車を放棄して走って建物の影に逃げようとする男性。


「こんな街中でッ!」


「待ちなさい!《アンチキネティック》!」


 身を乗り出しかけた和真を、此人が静止し、AKFを展開した。


「これなら平気よ、行くわよ和真君!」


「はい!」


 和真が前に出て、此人が後ろから援護をする体制。


 周辺には、鉛が焦げた匂い、血の匂いが漂っていた。女性が赤ん坊を庇うように血を流して倒れていた。


「はあぁぁぁぁぁっ!」


 和真はテロリストの男に向かって突撃、男は和真に気付いて銃を乱射する。和真に命中はするが、鋼鉄の壁に当たったかのように落下した。


 和真は男に飛び蹴りを喰らわせた。男は大きく飛び、コンクリートの地面に叩きつけられた。


「悪魔どもめ!消え失せろ!」


 もう1人の男はナイフを持ち、和真に切り掛かった。それに気づいた和真はその男の腕を掴み、鳩尾に膝蹴りを喰らわせ、追撃に右ストレート。


 男は倒れ、ぴくりとも動かなくなった。気絶したようだ。


 その時、ピーポーピーポーというサイレンと、パトカーの物々しいサイレンが鳴り響いた。

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