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氷銀の魔女  作者:
37/39

4-10 Investigation

 真夜中の貝塚グループ研究室。


 部屋の照明もつけずにただデスクトップ型のパソコンのモニターを、兼孝はじっと見つめていた。真夜中ゆえに相方の紅葉(くれは)はすでに帰宅。他の研究室では照明が付いているが、この部屋だけは異様な静けさに包まれている。


 兼孝が気になっていること。


━ユリィ•フロストの異常な身体能力と魔力反応。


━ハイペリオンの涙。


 これらは繋がっているのではないか。


 根拠はない。兼孝の直感だ。


 暗闇の中、光の発生源のモニターが映すのは、銀髪の少女の戸籍情報。


「ユリィ•フロスト━父、熊谷(くまがや)正義(まさよし)、母不明。妹にエリス•フロスト。おそらく父親は養父だね」


 次に兼孝は、世界的に有名な検索エンジンを開き、日本人男性の氏名を迷いなく入力する。


「熊谷正義━反魔法主義政党、『共和民主党』の国会議員。『プロジェクト•Y(ユグドラシル)』の最高責任者」


 兼孝の目が鋭く光る。


「プロジェクト•Y。表向きは『魔法への依存の脱却と富国強兵政策を実現する』計画、か」


━果たしてそうだろうか?


「…どうにも、きな臭いねぇ」


 これも兼孝の直感だ。真実かどうかなど、国家機密にでも触れない限り、わからない。


「もしかしたら、知りすぎたら」


━ボクは後戻りできなくなるかもしれない。


「そして、ハイペリオンの涙━」


 それは、魔法が発見された後に判明したものだ。


 かつて人類が地球を離れ、月に文明を築いた証拠、「べステージ1」にて発見された「浮遊物質」━それが「ハイペリオンの涙」と名付けられた。


「溝呂木さんが言ってた『ハイペリオンの涙』は、きっと物体そのもののことじゃない」


 ()()


「魔力反応のパラメータがわかればもしかしたら━」


 真相に辿り着けるのではないか。


 兼孝はパソコンとモニターの電源を切り、部屋の照明のスイッチをオンにし、ひと息ついた。一度夢中になると、呼吸をすることすら忘れる。


「休み明けの1年生の魔法実習━TAの予約しないとね」


 兼孝はスマホを取り出し、リマインダーに書き込んだ後、ユリィの魔力波を解明するために適当に印刷した大量の論文を夜通し読み込むのだった。





 理事長室前。


 徹夜明けの兼孝は、朝一で理事長である堂ノ上真聖に呼び出された。


 兼孝は扉を軽く叩く。「入りたまえ」という低い声が内側から響く。


 兼孝は扉を開き、理事長室に入る。


「おっはよーございまあぁぁぁぁす!」


「やあ、貝塚君。よく来てくれた」


 堂ノ上は、兼孝の深夜テンションにも全く動じない。ボサボサ頭で、猫背で情けなく両腕を力無く振り子のように振る兼孝の目をじっと見つめ、厳かに口を開く。


「単刀直入に言う。君に調査に行ってほしい場所があるのだ。コズミックのメンバーも一緒だ。その場所は━」

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