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氷銀の魔女  作者:
32/33

4-5 熱を帯びる凍土

 午後17時50分。和真は、寮に帰るユリィを見送り、すぐに食堂へ向かって走った。


 食堂の自動ドアが開くと、祐一、竜二、ゆかりがテーブルの席に着いていた。が、食事のトレーが置かれてなかったので、食後の雑談タイムだろうか。


「おー、()()、やっと来たかー」


 和真は、祐一の呼び方が変わったことに気づいたが、一旦そこは置いておく。


「ごめんみんな、もう食べちゃった?」


「何言ってんだよ、()()を待ってたんだよ」


 竜二も呼び方が変わった。


()()が来てから食べるって話し合ったんだよ?」


 ゆかりまで。


 慣れない名前呼びに、和真は戸惑った。


「ど、どうしたの、みんな……山田君とか山内君とかは?」


「先に食べて帰ったよ。それじゃあ、行こうぜ」


 祐一に続き、竜二、ゆかりが注文の列に向かった。


 和真も笑顔で3人の後を追った。





 4人は各々、食べたい料理をトレーに乗せて会計を済ませて席に着いた。


 和真は、ごはん大盛、ほうれん草のおひたし、わかめと豆腐の味噌汁、鳥の唐揚げを選んだ。以前、ご飯が足りなくなっておかずが余ったことがあった。その反省からご飯を大盛にしたのだ。


「にしてもよ、和真」


 カレーライスをスプーンで頬張りながら竜二が和真に話を振った。


「最後のひと振り、なんか叫んだよな、技名?」


「うん、『秘技・気合い斬り』」


 祐一は苦笑いしながら、味噌汁の器を左手で持ち上げながら和真に顔を向けて言う。


「そのネーミングセンスどうにかならなかったのか?」


「うん、だって、『気合い入れて』斬ってるから」


 至って真面目な顔で澱みなく答える和真に対し、3人は吹き出した。


 和真は「え?」と目を丸くした。何がおかしいのか分からないが、和真も釣られて笑い始めた。


 ……今度はご飯が余ってしまった。おかずが足りなかった。





 深夜のトレーニングが終わった後、ユリィはシャワーを浴びた後、柔軟剤の匂いを漂わせる真っ白なタオルで水滴を拭き取る。


 最低限のショーツとキャミソールを着用し、ベッドに腰を下ろす。


「……かずまの目を見れない…」


 結局、深夜のトレーニング中も、ユリィは和真と目を合わせることが出来なかった。その理由に全く心当たりがなく、ずっと悩んでいる。


「…これが、『好き』?」


 残った水分が冷ましているはずなのに、身体が熱い。


 今日の事を振り返ると、決定的で、もう後には戻れない事実━


━かずま


 名前呼びをしてしまったことを思い出してしまい、ユリィは顔を真っ赤にし、両手で顔を覆う。


「……呼んじゃった…うぅ」


━でも


「……嫌じゃ、ない…」


 さらに、和真のあの言葉。


 ありがとう、ユリィ━


 脳内でずっと繰り返される肉声。胸の高鳴りを抑えきれない。


 息が苦しい。なのに、全く恐怖を感じない。


 ユリィはその夜、いつもより眠ることができなかった。

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