4-5 熱を帯びる凍土
午後17時50分。和真は、寮に帰るユリィを見送り、すぐに食堂へ向かって走った。
食堂の自動ドアが開くと、祐一、竜二、ゆかりがテーブルの席に着いていた。が、食事のトレーが置かれてなかったので、食後の雑談タイムだろうか。
「おー、和真、やっと来たかー」
和真は、祐一の呼び方が変わったことに気づいたが、一旦そこは置いておく。
「ごめんみんな、もう食べちゃった?」
「何言ってんだよ、和真を待ってたんだよ」
竜二も呼び方が変わった。
「和真が来てから食べるって話し合ったんだよ?」
ゆかりまで。
慣れない名前呼びに、和真は戸惑った。
「ど、どうしたの、みんな……山田君とか山内君とかは?」
「先に食べて帰ったよ。それじゃあ、行こうぜ」
祐一に続き、竜二、ゆかりが注文の列に向かった。
和真も笑顔で3人の後を追った。
*
4人は各々、食べたい料理をトレーに乗せて会計を済ませて席に着いた。
和真は、ごはん大盛、ほうれん草のおひたし、わかめと豆腐の味噌汁、鳥の唐揚げを選んだ。以前、ご飯が足りなくなっておかずが余ったことがあった。その反省からご飯を大盛にしたのだ。
「にしてもよ、和真」
カレーライスをスプーンで頬張りながら竜二が和真に話を振った。
「最後のひと振り、なんか叫んだよな、技名?」
「うん、『秘技・気合い斬り』」
祐一は苦笑いしながら、味噌汁の器を左手で持ち上げながら和真に顔を向けて言う。
「そのネーミングセンスどうにかならなかったのか?」
「うん、だって、『気合い入れて』斬ってるから」
至って真面目な顔で澱みなく答える和真に対し、3人は吹き出した。
和真は「え?」と目を丸くした。何がおかしいのか分からないが、和真も釣られて笑い始めた。
……今度はご飯が余ってしまった。おかずが足りなかった。
*
深夜のトレーニングが終わった後、ユリィはシャワーを浴びた後、柔軟剤の匂いを漂わせる真っ白なタオルで水滴を拭き取る。
最低限のショーツとキャミソールを着用し、ベッドに腰を下ろす。
「……かずまの目を見れない…」
結局、深夜のトレーニング中も、ユリィは和真と目を合わせることが出来なかった。その理由に全く心当たりがなく、ずっと悩んでいる。
「…これが、『好き』?」
残った水分が冷ましているはずなのに、身体が熱い。
今日の事を振り返ると、決定的で、もう後には戻れない事実━
━かずま
名前呼びをしてしまったことを思い出してしまい、ユリィは顔を真っ赤にし、両手で顔を覆う。
「……呼んじゃった…うぅ」
━でも
「……嫌じゃ、ない…」
さらに、和真のあの言葉。
ありがとう、ユリィ━
脳内でずっと繰り返される肉声。胸の高鳴りを抑えきれない。
息が苦しい。なのに、全く恐怖を感じない。
ユリィはその夜、いつもより眠ることができなかった。




