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氷銀の魔女  作者:
20/21

2-8 休日の〆

 男子寮。


 結局和真は、図書館に行くことは出来なかった。


 図書館の利用可能時間は平日では10時から20時まで。土曜日は11時から16時まで。日曜日は閉館。


 忘れていたことに気付いた時には15時51分。寮を出た時点では15時になる前くらいだった。図書館にギリギリ間に合ったとしても、ゆっくり本を探すことはできない。


━月曜日までおあずけ……


 和真はモヤモヤを残したまま、日曜日を過ごさなければならない。とはいえ、どうしようもないので、脳内を切り替えて漫画でも読むことにした。麦茶をお気に入りのマグカップに注ぎ、机の上に置いておく。


「擬音が独特だな……どうやったら『ミメテァ』なんて思いつくんだ…」


 誰にも届かない独り言を呟きながら漫画の一コマ一コマを凝視し、熟読。


 一冊読み終わる頃には2時間経過していた。





 昨日のリベンジで和真は、食堂のきつねうどんを注文し、会計をした後は空いているテーブルに座る。そこに祐一と竜二がやってきた。


「よーっす」「お疲れー」


 2人の軽い挨拶に、和真も軽く「お疲れ」と返した。


「東条お前やったらしいな」


 竜二は楽しそうに聞いてくる。数時間前の剣術部の事件のことだろう。


「…たぶん、やっちゃったかも」


 和真は2人から目を逸らした。やってしまったという自覚はある。


 一方その隣で祐一は興奮気味だった。


「すごかったんだぞ、3年の先輩の攻撃をひょいひょい避けてバァーンって、一撃!」


 もう少しボキャブラリーどうにかならなかったのか。和真は苦い笑いしか出来なかった。


「…多分それ誇張入ってるよ」


「いいなー俺も見たかったなー、あの先輩、後輩いびりで有名らしいからなー」


「嫌な先輩を成敗する1年、めっちゃスカッとした。勧誘の断り方もきっぱりしててカッコよかったぞ」


 何故か誇らしげな祐一。


「僕としては無かったことにしたいんだけどね…」


 これは多分月曜日になったらクラスメイトにいじられる。そう思うと和真は、胃薬が欲しくなった。





 深夜。


 いくら濃度の高い休日といえど、深夜のトレーニングを欠かすわけにはいかない。それはユリィとの約束がなかったとしても。


 トレーニングジムに向かう途中、キジトラの猫コマチが和真の後ろからついてきた。短い足でちょこちょこ一生懸命歩く姿が愛らしい。


 施設に入ると、案の定ユリィが既にトレーニングをしていた。


 ユリィは和真とコマチの存在に気付き、トレーニングを中断し、視線を向けた。


「……35世…」


 ユリィはコマチを見てそう呟いた。


「…そう呼ぶんだ」


 小野小町35世という猫の呼び方の相違に和真はつい笑ってしまった。


「……分からないけど」


 アメジストの瞳にハイライトはないが、そう言うユリィの表情は少し、柔らかくなったような気がした。

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