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氷銀の魔女  作者:
19/28

2-7 縋る瞳

 ユリィは体育館での事件を遠目で見ていた。


 獣の様な目を持つ者と相対する人物、東条和真に自然と視線が向いていた。


 相手の攻撃を完璧に回避する和真、完璧な反撃を決める和真。


 そして、


「『弱いものに刃を向け、力を振りかざす』。それが『剣術部』の理念ですか?」


 そのひと言で蘇る記憶━


「感情を持つから弱くなるのだ。人を殺す『兵器』に感情など不要だ」


 あまりにも残酷な声━


「フロストさんって優しい人なんだね」


 和真の口から発せられた、「優しい」━


 両者の声が、ユリィの中で反射し続ける。


 ……苦しい。息が吸えない。身体が震える。頭の中が撹拌される。


 寒い。




 ユリィは女子寮の自部屋のベッドで1人、横たわっていた。


 午前の出来事。


 これまでユリィは他人を寄せ付けないように振る舞ってきた。それでも近づいてきた人━


 ユリィは和真が接近してくる気配に気付けなかった。猫に意識を向けていたからに違いない、とユリィは自分に言い聞かせる。


 「優しい」と和真が言った。今もユリィの心に深く突き刺さっている。


 痛いはずなのに、苦しいはずなのに、あたたかくて、安心感さえ覚える。


 「ユリィ」と呼ぶ声すら、あたたかい。


━これは、なに?


 ユリィは両手を胸に当てる。気のせいか、心臓の鼓動は、いつもより静かだった。呼吸のリズムもゆったりとしているようだった。


 あの反撃(カウンター)を思い出す。


 あまりにも完璧で、美しい。


「……もしかしたら、東条なら……」


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