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氷銀の魔女  作者:
12/21

1-11 真相に近づく週末

 同時刻。シマ研の一室。


 深夜まで研究室に誰かがいる事は、とりわけ不思議な事ではない。


 熱心に研究に励む者もいれば、研究に対して受け身な姿勢の者もいる。


 今日は16時頃に別の研究室から研究員責任者の怒鳴り声が聞こえてきた。おそらく受け身な3年生が実験で単純な凡ミスを犯したのだろうか。


 そこの研究室は、いわゆる体育会系で、夜遅くまで研究する事が美徳であり、口先ではコアタイムで帰るぞと言っておきながら、年長の研究員が居座ると、生徒も残らなければならないという暗黙の了解が存在する。


 そういう背景があるため、深夜に研究室の照明が付いていることは珍しいことではない。


 昼間に兼孝は紅葉にも「銀髪の新入生」の異常性を伝えていた。紅葉も小さな違和感を抱いていたようだが、兼孝に言われてようやく言語化できたようだった。


 「表情が見えない」。それも確かにそうだが、兼孝が危機感を覚えていたのはそこではない。


 部屋の蛍光灯もつけずに暗闇の中で兼孝は1人、パソコンの画面をじっと眺める。


 右手でマウスのスクロールを上下させながら1人、呟いた。


「…やっぱり」


━人間の範疇を逸脱している。


 画面にはその新入生の体力測定の結果。


 50m走、反復横跳びなどの記録、それらの記録から算出される能力数値━腕力、脚力、瞬発力など。

歴代の卒業生の、それらの最大値の全てを凌駕している。


 中でも興味深いのは魔力適性。()()()()という4文字。


「…ほーぅ」


 兼孝は不気味な笑みを浮かべた。しかし、その目には一切の笑みはなかった。


「魔力適性検査は本人の魔力波(まりょくは)の通過波数と振幅のばらつきを測定し、歴代生徒の平均を100とした時の相対指標。それが『測定不能』な理由として考えられるのは━」


━適性値が「ゼロ」か、もしくは無限大か。


 前者であればこの学院に入る事は出来ないはず。堂ノ上理事長が見込んだ人物だとしたら、後者と考えるべきだろう。


━では適性値が無限大とは。


「理論上有り得るのは、魔力波の波長が限りなくゼロ━」


 魔力波も古典物理学の「波」の性質に準拠していると考えられている。


 では、「波長がゼロ」になるパターンとは?


 兼孝にはひとつだけ心当たりがある。が、それは確率的に非常に、非常に薄い。類似例が掲載されている論文を探す。


 検索リストから片っ端から1ページずつ殴り読み。


 …こんな事をしていたらまた徹夜になっちゃうよ、と兼孝はボサボサ頭を掻き乱す。また紅葉に小言を言われる。


「コントロール!コントロぉぉオル!」


 突然奇声を発したところ、隣の部屋から「おい!うるせぇよ!」という怒鳴り声のクレーム。


「はあーい、ごめんなしゃあ〜い」


 兼孝は悪びれずに謝罪。パソコンの電源を切り、暗闇の研究室を後にした。

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