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新アイドルプロジェクト 始動

「これまでにはない、女性アイドルグループを立ち上げよう!」


 会議室で、プロデューサーを務めることになった南野圭祐がスタッフ全員を前にそう宣言した。今は、アイドル戦国時代。そう簡単に全国区にまで成長し、人気グループの仲間入りをすることは難しい。事務所も立ち上げたばかりだ。スタッフからも疑問の声が上がる。


「南野さん。これまでにはないって言いますけど、何か案はあるんですか?」


 そう、それが問題だ。アイドルグループを立ち上げるには、一般的に応募をかけてメンバーを募り、一次の書類審査を経て、それに通過した子が二次以降のオーディションに進む。そして、それを勝ち抜いた一握りだけが、この芸能という世界で輝くことができる。非常に狭き門である。


 しかし、これまでアイドルグループの立ち上げにスタッフとして関わってきた経験のある南野は、この常識とも言える手段に疑問を持っていた。果たして、プロデューサーを中心としたスタッフだけの選考でメンバーを選んでよいのか。何か、落選した子にも光るものが必ずあるはずだ、と。そこで南野が考えたのは、その常識を覆すようなものだった。


「オーディションをやらない?南野さん、それはどういうことですか?」

「そうですよ。そんなことしたら、メンバーが何百人、何千人になってしまいますよ」

「うん。そうなる可能性はあるね」


 スタッフは呆れた顔で南野から視線を外す。確か、この前行われた人気グループ『レモネードファンタジー』の第3期生オーディションは、倍率が2千倍近かったようだ。オーディションを行わないということは、その応募した全員がグループに所属することを意味する。当然、収拾が付かない。


 しかし、南野はそこに着目した。最終選考やその前の選考で落ちた子でも、正式なメンバーとの実力差はほとんどない。運に左右されることも十分にある。その子たちだって、輝けるものを持っていると信じている。


「我がグループに所属できるのは、過去にどこかのアイドルグループのオーディションを受けて落選した子に限るとする。何千人、何万人といるだろう。その子たちがうちのメンバー募集を見て応募すれば、即、メンバーとして登録できるようにする」

「即って…」

「しかし、活動できるのはネット上でのみ。そこでの活躍が認められ、ファンが『是非、生で会ってみたい』と支持された子だけが、ネット上から現実世界に飛び出して歌ったり、踊ったり活動することができる」

「あー、なるほど」

「我々がオーディションを行うのではなく、目の肥えたファンがネット上でオーディションのような審査をする。プロの目からではなく、一般人の目でメンバーを選んでいく仕組みだ」


 スタッフたちが、南野の言葉を聞き入りはじめた。


「そこで、私は考えた。応募してきた子、全員にタワーマンションの鍵を授ける」

「タワーマンション?」

「もちろん、ネット上の架空の建物だ。一人一部屋。そこで、自分たちがそれぞれ考えたアピールをファンに向けて行う。過激なものや他人を蹴落とそうとするのはダメ。即刻、退居してもらう。ファンの心を射止めた子たちが、その部屋から外へ出て、この現実世界で活躍してもらおうじゃないか」

「グループ名とか、もう頭にあるんですか?」

「タワマンガールズ『ダイアストロフィズム』が候補。略して『ダイスト』。『地殻変動』という意味だ」


 この南野のアイディアにスタッフは賛同した。こうして、オーディションを行わない、新アイドルプロジェクトが口火を切ったのである。


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