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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー1:王都ディスカベル

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第7話 初日は大変だったけども

今回のメインはヒロインです。

「はぅ~、疲れた」


 僕はベッドに倒れ込んだ。

 全身から尋常じゃない疲れが溢れる。

 ダンジョン探索よりも疲れた気がして、僕は項垂れた。


「まさか、掃除にこんな時間を取られるなんて思わなかったよ」


 最初は三時間くらいを覚悟していた。

 けれどそんな甘くはなかった。

 気が付けば僕の有り余る時間を喰らい尽くし、三時間なんて余裕で超えてしまった。

 その結果、僕は一階の片隅。客室にポツンと置かれたベッドの確保に成功した。


「でも、これで掃除は一旦終了……一階は」


 僕の半日の頑張り、その成果が出た。

 一言で言えば、一階はある程度掃除が終わった。

 埃まみれの床はシッカリと水拭きをし、埃の積もった家具は綺麗に払った。


「はぁ。半日で一階だけか」


 僕の頑張りはここまでやって一階だけ。

 二階建ての建物のせいか、今日だけでは半日が限界だった。

 そのせいか、明日も明後日も掃除が続く。そんな予感がしてしまった。


「掃除は好きだからいいんだけどさ。いいんだけどさ……」


 生活水準を上げるために、衣食住は最低限整えている。

とりあえず炊事洗濯は得意な方に傾いている。

それでも残念なことがあった。リビングに置かれた家具達が、あまりにも寂しくなった。


「それにしても、ほとんど高級な家具がダメになるなんて……残念だよ」


 残念なことと言えばカビが生えて使い物にならなくなった家具達。

 あればかりは如何することもできない。

 せっかくのアンティーク品も、多分師匠の中には興味のない人も居たから、乱雑に扱っていたんだと思う。本当にもったいないと思うけど、それも師匠の魅力だ。


「仕方ない。明日は家具を買いに行こう。安く売ってくれる、リユース店でもあればいいんだけど」


 正直、お金はあまり使いたくない。

 僕は師匠達と違って、超が付く程のお金持ちじゃないから、出来るだけ蓄えは残しておきたい。ましてや人を黙らせる程の権力も無いので、図々しくはいられなかった。


「冒険者活動は……まあ、三日後とかかな」


 僕は疲れてしまっていた。流石に眠気が襲って来る。

 三日くらいなら寝なくても何とかなるけれど、リラックス状態の時は休みたい。

 大きな欠伸を掻くと、絶妙に硬いベッドに顔を埋め、そのまま体の疲れを取るように眠りについた。




 オボロが去った後の冒険者ギルド。

 一撃で倒されてしまったブレットを放置し、冒険者ギルドはいつも通り回っていた。

 冒険者達が依頼書をクエストボードから剥がし、受付カウンターに並んでいる。

 普段の忙しない日常が戻ると、冒険者ギルドの扉を、一人の少女が開いた。


「今日は人が少ないわね」


 少女は普段から王都の冒険者ギルドを利用している。

 おまけに実力もかなり高く、ズバズバと物申す性格故か、冒険者ギルドのご意見番。

 故にかなり信頼されており、王都の冒険者ギルドを利用するにあたって、少女のことを知らない者はいない。


「って、なんでブレットが倒れてるのよ?」


 真っ先に気になったのは、床にうつ伏せで倒れ、そのまま放置されているブレット。

 気絶している訳ではなく、ピクピク体を震わせている。

 如何やら体が痙攣しているようで、誰も助けようとしないので、仕方が無く少女が声を掛けに行く。


「ちょっと、ブレット。またネシアにナンパしたのね」

「あっ……げっ、エメラル」


 少女の名前はエメラル。ブレットからは目の敵にされている。

 それもその筈、幾度となくネシアにナンパを仕掛けては、上手くフラれている。

 その度に激昂し、ネシアに対して暴力を振ろうとするので、エメラルが仲裁に入り、ブレットを叩きのめしていた。


 そんな関係なので、二人の相性は最悪。

 絶対に関わり合いたくない、ブレットに至ってはそう思っている。

 しかしエメラルはブレットの体を起こすと、壁まで引き摺った。


「もう、毎回毎回ネシアに迷惑掛けて……一体何度やったら気が済むのよ?」


 エメラルは腰に手を当てて、ブレットを厳しく叱る。

 毎度のことなのでエメラルもブレットも慣れている。

 もはや日常な光景に、ブレットは今回、悪態を付いた。


「まさかお前以外に止められるなんてな」

「はぁ? そんなの当り前でしょ。ここには強い冒険者が大勢……って、誰に止められたのよ?」


 ブレットは悔しそうだった。いつもエメラルに叩きのめされるのが日常になっていた。

 それを今回は別の冒険者にされてしまった。

 しかも仲良くなった冒険者からの仕打ちにもの凄い嫌悪感を示す。


 そんな中、エメラルもまた、一体誰が止めたのか気になった。

 冒険者ギルドには腕に自信のある冒険者は多い。

 けれど今日はいつもブレットの悪行を止める一軍冒険者の姿が無かった。


「オボロ」

「オボロ? 誰よ、その優秀な冒険者は。私、知らないわよ」

「知らないのも当然だ。なんたって、今日王都にやって来たばかりの新参者だからな」

「なんでアンタが嬉しそうなのよ……」


 知らない名前の冒険者。その名はオボロ。

 ブレットを止める程の実力を持つ、それなりに腕の立つ冒険者。

 笑められるは興味を持つと、一体何者なのかと考える。


「こんにちは、エメラルさん」

「ネシア! ねぇ、ブレットに酷いことされてない? 大丈夫そう?」


 ネシアはエメラルに声を掛けた。

 エメラルはネシアに掴み掛る。もちろん変なことはしない。

 ネシアがブレットに酷い目に遭わされていないか心配したが、そんな心配は最初から要らなかった。


「はい、私は大丈夫ですよ」

「よかったわ。もう、ブレットのこと除名した方がよくない?」

「それはできません。私自身、まだ直接的な被害には遭っていませんので」

「それはまあ、遭わせてないからだけど……それはそうと!」


 エメラルはネシアに訊ねたいことがあった。

 如何しても気になることがあった。

 もちろんのこと、ネシアはエメラルが何も言わなくても、言いたいことを理解する。


「分かっていますよ。オボロさんのことですよね?」

「そうよ。そのオボロって冒険者、一体何者?」


 単刀直入に訊ねるエメラル。オボロがどんな冒険者なのか、気になる。

 もちろん冒険者である以上、同業者の実力を知っておきたいだけだった。


「そうですね。具体的なことは職権乱用になるので言えませんが、オボロさんはとにかく素早かったですよ」

「素早い? 暗殺系かしら?」

「あるいは、盗賊系かもしれませんね」

「そうね。他になにかある?」


 エメラルは本当は聞いてはいけないことを訊ねた。

 もちろんネシアも直接的なことは何も言えない。

 お互いの事情が分かっているので、微妙な表情を浮かべた。


「そうよね……実際に会ってみるしかないかしら?」

「もしかして、ギルドに勧誘されるのですか?」

「それは無いわね」

「そうですか……あっ、一つ思い出したことがあります」

「思い出したこと?」


 エメラルは冒険者ギルドとは別のギルドに所属している。

 オボロの実力を鑑みて、ネシアは勧誘するのかと思った。

 しかしその気は無いらしく、直後にネシアは記憶を呼び起こす。


「はい。実は……」

「ん?」


 ネシアは耳打ちを誘った。

 エメラルは耳を傾けると、ネシアはエメラルにだけ伝わる声を発した。


「オボロさんは“殺意”を持っています」

「殺意?」

「はい。色々な冒険者を見て来た私なので、分かります。アレは間違いなく、殺意でした」

「殺意……ね」


 殺意を持っているというのは不思議なことではない。

 冒険者の中。その内、暗殺系に限って言えば、殺意を宿しているのは普通だ。

 むしろ殺意を持っている方が、冒険者はやりやすい。

 それを抑え込めるかどうかで、ネシアの雰囲気から、オボロは悪い人では無さそうだ。


「オボロね。どんな冒険者なのかしら? 一度見てみたいわね」


 エメラルは並の冒険者ではないらしいオボロに興味を抱く。

 どれだけ強いのか。どんな戦い方をするのか。

 純粋な好奇心と共に、ネシアを助けてくれたこと、できるだけブレットを痛めつけなかったこと。二つに感謝すると、実際に会ってみたいと思うのだった。

 そんなエメラルの都合など、当の本人のオボロには伝わる筈もなく、それぞれの日常が過ぎて行った。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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