第66話 討伐隊、コボル洞窟へ
コボルト討伐にやって来た、討伐隊。
コボルト、数は圧倒的だが……。
討伐隊を編成した冒険者達。
集められた十のパーティーで、DランクからBランクとバラバラ。
それでも実力は十二分であり、ライムが選抜したパーティーだ。
集団戦にも慣れている手練れ達は、トロン森を歩いていた。
「見てください、アッシュさん。コレを」
「ん、なんだコイツは?」
アッシュと呼ばれたのは、屈強な男性冒険者だ。
仲間の一人が地面を注意深く見ていた。
すると薄っすらと凹凸を見掛ける。何かの足跡のようで、トロン森に生息する魔物とは違う。
「なんか、イヌっぽいな」
「もしかすると、コボルトのものかもしれない。ヘモン」
「ほいよぉ~」
グリムロはパーティーメンバーに声を掛ける。
単眼強を付け、魔導書を手にした冒険者。
名前はヘモン。知識の豊富な学者で、戦闘職ではない。
「どうだい?」
「これはぁイヌっぽいねぇ。コボルトのものかも」
「マジかよ、ってことはここまで活動範囲を広げてんのかぁ!?」
コボル洞窟を根城としているコボルト達。
中心的な活動は、コボル洞窟を主体にしている。
それでもトロン森とは距離感的にも近い。
それを踏まえると、これだけ活動範囲を広げていることになる。
「マズいね。トロン森まで足を運んだ以上、王都への侵攻も視野に入れる必要があるね」
「ふざけんなよ、そんなことさせっかよ」
最悪の場合も一応想定していた。
恐らくあり得ないし、王都には猛者が集っている。
そのため侵攻を視野に入れつつも、あり得ないと高を括る。
とは言え、可能性が完全に消えた訳でも無いためか、アッシュは足早になった。
「アッシュ!?」
アッシュは先頭をガンガン進んでいた。
周りの制止なんて一切聞く耳を持たない。
グリムロは付き合いが無いので、真っ先に気に掛けた。
「そう焦らない方がいい」
「焦ってねぇよ。ウズウズしてんだ、コイツは武者震いだぜ」
アッシュの背中からは責任感から来る重圧が見て取れた。
それをグリムロに看破されると、痩せ我慢にしか見えない。
武者震いを立てつつも、その瞳は血眼だ。
「はぁ。アッシュ、相手はコボルトだ。そう躍起にならない方がいい」
「んだと? それじゃあネイル達は、コボルト如きにやられたって言うのか?」
「そうは言っていないよ。油断はしない、ここは冷静に……ん?」
完全に水と油の関係だった。
全く異なる性格の二人は、お互いを尊重しあわない。
ぶつかり合うからこそ成長するが、この二人が今回の集団を取りまとめるリーダーなので、多少の不安がよぎる。
それでも信頼し合っているからこそ、ぶつかっても止めはしない。
全員黙って、いや笑っている。和やかな空気が冒険者の危機感を阻害した。
そんな折だ。アッシュとグリムロは何か捉えた。
「アレは……」
「おい、コボルトだぞ」
立ち止まって視線を飛ばす。
この先はコボル洞窟までの一本道。
見掛けたのはコボルトの集団で、如何やら見張りらしい。
羽を広げているからには、ロアコボルトが相当力を付けて自信を手にした証拠だろう。
「そうだね。どうやら見張りらしい」
「コボル洞窟から少し離れてんのか。ふざけんなよ、とっとと潰すぜ」
アッシュは戦いたくてウズウズしていた。
武者震いを本物に変えるが、グリムロは違う。
仲間の様子を確認し、ここは冷静に分析した。
下手に動くと罠の可能性もあるので、様々な思考を巡らせる。
「いや、まずは態勢を整えてだね……」
「そんなこと言ってる場合かよ!」
グリムロの指示をアッシュは無視する。
バン! と両腕の筋肉が悲鳴を上げる。
パツパツの服を弾くと、ビリリと繊維が破けた。
「先手必勝だおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
勢いそのままなアッシュ。グリムロは唖然とする。
三百メートル以上離れているのに、先手必勝はあり得ない。
「はぁ。相変わらずだね!」
グリムロは溜息を付いた。
とは言えアッシュに合わせられるのは、同じパーティーメンバーにも居ない。
この中だと精々グリムロだけで、討伐隊に目配せをすると、アッシュを追い掛けた。
「数は……五か!」
聞いていた話ではもっと居るらしい。
何処かに隠れているのだろうか? 舐められたものだ。
そう思ったアッシュは引き摺り出してやろうと、ニヤッと笑った。
「おらよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
アッシュは地面を蹴った。
分厚い腕を振り上げると、コボルトを狙う。
背後を取って攻撃を繰り出すと、気が付いてクルンと振り返ったコボルトの頭を潰した。
「バウワウッ!?」
倒された仲間を見て、コボルト達は動揺する。
一瞬引き攣り、体勢が崩れたが、すぐに反撃の構えを取る。
手にしている武器を振りかざすと、アッシュに襲い掛かった。
「おらよぉ、とっとと来やがれ」
先制攻撃を繰り出したアッシュ。
拳を振り抜きコボルト達を牽制する。
見えている限りだと五匹のコボルト。
「「「バウワッ!!!」」」
連携を取ってアッシュを襲った。
手にしている槍上の武器を突き出してくる。
当たれば貫通してしまう。……が、アッシュには届かない。
「フン、サボんなよグリムロ」
「当然だよ」
アッシュはスッとコボルトの攻撃を避けた。
真後ろから突き出されたのは尖ったクリスタルの槍。
コボルトの槍とぶつかり合うと、カタカタと震え、コボルトの首を刺した。
「バウワ……」
コボルトの生命器官を破壊した。
体を強烈な悪寒が襲うと、膝から崩れ落ちる。
パタリと倒れてしまうと、グリムロの流石の槍捌きが光った。
「ふっ。この程度かい? それなら……」
「「「俺達の敵じゃないなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」」」
集められたのは十を超えるパーティー。
討伐隊を組んだ冒険者達は、コボルト達を襲った。
アッシュとグリムロが先陣を切り、油断させた所で仕掛ける。
正面からも背後からも飛び出す無数の冒険者。
コボルト達は突然の急襲に慄いている。
総勢で五十人弱の冒険者が一斉に飛び掛かると、近接部隊だけで充分だった。
「「「バウワウワァァァァァ!!!」」」
コボルト達は一斉に吠えた。でも冒険者達は怯まない。
血眼な瞳でコボルトを睨みつけていて、ここまでの道中で溜まった鬱憤を晴らす。
決して手を抜くことは無く、コボルト達を袋叩きにすると、簡単に倒してしまった。
「なんだぁ、コイツら。全然弱ぇじゃねぇか」
「騒がしいよ、アッシュ」
「なんだグリムロ!?」
アッシュとグリムロは喧嘩になってしまった。
相変わらず、息の合わない二人だ。
パーティーメンバーも困り顔を浮かべたものの、確かにコボル洞窟前に居たコボルト達は弱かった。
「みんな凄いよ、フレーフレー、みんな!」
「ふはぁ~、この調子だと出番無しかなぁ?」
後衛陣では、ハピラスとニャンが互いに寄り合っていた。
応援が効いたのか、身体能力が強化されている。
これぞ集団戦で、それぞれの役目を果たしていた。
「あはは、流石にこれだけの冒険者がいれば楽勝だよね……ん?」
少年冒険者ガーンは少し離れた位置に居た。
これだけの冒険者が揃えば怖い物無し。
そう思った一瞬、大きな瞳が洞窟の奥を捉える。
「どうしたんだ、ガーン?」
「なにか見つけたの?」
パーティーメンバーが気になって声を掛ける。
固まっているガ―ンの視線を追ってみると、神妙な表情になる。
洞窟の奥で何か動いている? そう思うと、ドスンドスンとけたたましい地響きが鳴った。
「な、なんだ急に!?」
「みんな気を付けて、コボル洞窟からなにか来る」
「しかも一つじゃないんだろ。コイツは……」
突然の地響きに気圧される冒険者達。
コボル洞窟の奥地から、何かが湧いて出て来る。
ここまでの戦闘は所詮前哨戦だ。
コボル洞窟はコボルトの巣窟。見張りのコボルトを倒してくらいで、甘く見るのは軽率だった。
「バウハッ!」
「バウワウワァ!」
「バウッファ!」
ドスンドスンと洞窟の奥が揺れる。
地響きが幾つも重なり合うと、コボル洞窟から這い出るイヌ。
二足歩行のイヌ魔物、コボルトがわんさか出て来ると、手にした武器を掲げ、コボル洞窟前を陣取る冒険者達に殺意を剥き出しにして襲い掛かるのだった。ここからが本番で、圧倒的な数は群れを成し、冒険者達はより強固な結束力を必要にさせた。
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