第61話 所詮はコボルト、されどコボルト
会議が混沌として来ました。
「……と、言うことよ」
マフラーは僕達に、コボル洞窟で何があったのか話しをしてくれた。
正直、想定内の話だとは思った。
あくまでも僕は、あくまでも僕も基準だ。これがどれだけのヤバさかは分からないものの、大変な目に遭ったのは変わりない。
「それで、命からがら逃げて来たのよ」
「そんなことがあったのね……」
エメラルは同情していた。残念だけど僕には無理だ。
チラリ視線を泳がせると、エメラルの真剣な眼差しを見る。
チクチク僕の胸に刺さると、マフラーは首を横に振る。
「ううん。判断が鈍っていたのよ」
仕事人だ。マフラーは仲間想いであり、ライムに怒ることが出来た。
あの状況で、感情的な牙を持ち合わせ、同時に律する力も持っている。
それだけで優秀な冒険者、Cランクには充分な素養だった。
「私達の判断が、後少し、後少しだけ早ければ、こんなことには……」
「でも、マフラーとラッシュは無事に逃がされたんだ。危険分散は済んでいた筈だよ?」
この状況で、意味の無い擁護に走る僕。
果たしてこれに何の意味があるのだろうか?
残念だけど、意味はほとんど無かった。マフラーとラッシュが今こうして生きているのは、ネイル達の判断が間違っていなかった。それに更なる理由付けをするのが程度だ。
「えっと、それじゃあ、どうしたら?」
「どうしたらもなにもないよ。コボル洞窟でなにが起きたのか、その真実を知らない以上、これ以上は憶測になるよ」
僕の意見は間違っていなかった。
会議室の空気が若干重たくなった。
あくまでも希望的観測であり、ネイル達が生きているのかさえ分からない。
ましてやコボル洞窟で何が起きたのか、知る由も無かった。
「だから……」
僕はチラリと視線を動かした。
会議室の上座の席。そこに座っているのは、ギルドマスターであるライムだ。
話の全容を把握した今、何を思うのか、畜生の考えを聞く。
「なるほど、そのようなことがありましたか」
ライムが言葉を発した。空気が重たくなる。
今僕達は同じ部屋の中に居る。
つまりは逃げ場がない訳だ。
ライムが開放してくれたのは、冒険者ギルド奥の会議室。
ここに集められているのはある一定のランクを超える冒険者達。
本当は数人程度集まればよかったが、流れ的に僕達も参加する羽目になっていた。
「どうなってるんだ、マフラー。コボル洞窟は安全じゃなかったのか?」
立ち上がったのは男性冒険者だ。
屈強な体をしており、言葉遣いも若干粗暴。
マフラーに文句を言っても仕方が無いが、とりあえず発破を掛ける。
「私達もそう思っていたわよ」
「けれど、安全では無かった。そうだろう?」
鼻の高い男性冒険者が口にした。
肩にクリスタル製の槍を掲げ、切れ目な瞳はマフラーを射る。
マフラーの肩を持つが、話は進展しない。
「ねぇ、ネイル達はどうなったの?」
「分からないわ。それを捜索しているのよ」
「そっか。そうだよね?」
キョトンした顔を見せる女性冒険者。
明らかに後衛型であり、武器も大それたものではない。
アレは一体なに? クリフ……的な奴だろうか?
「とにかくコボル洞窟はとても危険なダンジョンになっているの」
「それじゃあどうするのかな?」
「パターンは二つよ。一つはこのまま沈静化するまで放置する。もしくは強硬手段で鎮圧するの」
瞳の大きな少年冒険者が言葉を投げ掛けた。
これから何をするべきなのか。マフラーに意見を求める。
一瞬で会議らしい雰囲気が漂うと、マフラーは提案を二つも出した。
一つは穏健派な意見であり、このまま放置すること。
コボル洞窟のコボルト自体は大したことが無い。
けれど特別凶悪な個体が現れたとなれば、その個体が落ち着くまで、コボル洞窟には近付かない。根本的な解決にはなっていないが、手段の一つではある。
もう一つは急進的な意見であり、恐らくこちらが優先される。
コボル洞窟に生息する、謎の凶悪コボルトを討伐する。
それが出来れば自体は一気に沈静化され、再び元の姿を取り戻す。
マフラー的にも、仲間達の救出を念頭に入れていた。
既に死んでいる可能性はあるけれど、可能性が全く無い訳では無い。
コボル洞窟のコボルトを薙ぎ払えば、生存率は格段に高まるのだ。
実際、コボルトはそれほど強くは無い。
だから人数の有利さえあれば、如何にでもなる。
それがならなかったら今に繋がるけれど、敢えて何も口にしない。
「そんなの決まってんだろ! ぶっ潰しに行くだけだ」
「いや、沈静化を待つ方がいいよ」
「はぁ!? なに言ってんだ。そんなこと言ってる間に力を付けて、暴れ回ったらどうするつもりだ!」
「ネイル達が戻らないんだよ。少し落ち着くのを待ってから行動に映るのも悪く無い筈だ」
「そんなことしてる暇があるのかッ!?」
「それは分からないが、感情的になり過ぎるのも、冷静な判断力を鈍らせるだけだよ」
早速口論になってしまった。
確かに穏健派の意見も、急進派の意見も間違ってはいない。
どちらにもそれぞれ利点があり、無暗な行動が余計に油へ火を注ぐ結果に繋がらないとも言えない。
「どっちが正解かな?」
「さぁね~」
「さぁね~、って。うーん、分からないよね?」
「私は戦えないから、決まった意見に従うよ?」
中には会議の暑苦しい雰囲気に溶け込めない冒険者も居た。
もはや会議室の中で、二分・三分されてしまっている。
意見がまとまる気配が無く、僕は無表情で困っていた。
「これ、どうしたらいいのかな?」
正直僕みたいなポッと出の意見は通らないのは明確。
かと言って、何も口にしないのは違う。
僕は僕の判断で動くことにしている。だからどっちの判断が正しいとかは言えなくて、エメラルとクロンの姿を見た。二人は何を思うのか、チラリ視線を飛ばすと、目が点になっていた。
(あー、ダメだ)
まず初めに分かったのは、クロンのこと。
考えることを放棄している。
徹夜したこともあってか、目が点になったまま。
これは会議の状況に呆れている訳では無い。
そもそも何も考えていないのだ。
完全に半分脳が休んでいる状態。
目を吊り上げたまま、瞼を開き眠っている。
エメラルもそれが分かっているせいか、クロンを起こそうとしない。
(後はエメラルだけ……頼んだよ、エメラル!)
こうなった以上、この状況をまとめられるのはエメラルだけだ。
僕は全てエメラルに丸投げした。余計な言葉を口にしない。
矢面になってくれるのはエメラルだけで充分。僕は黙っておくことにすると、口を噤んだまま会議の決着を待った。
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