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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
2ー2:コボルトの眠る喉元

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第61話 所詮はコボルト、されどコボルト

会議が混沌として来ました。

「……と、言うことよ」


 マフラーは僕達に、コボル洞窟で何があったのか話しをしてくれた。

 正直、想定内の話だとは思った。

 あくまでも僕は、あくまでも僕も基準だ。これがどれだけのヤバさかは分からないものの、大変な目に遭ったのは変わりない。


「それで、命からがら逃げて来たのよ」

「そんなことがあったのね……」


 エメラルは同情していた。残念だけど僕には無理だ。

 チラリ視線を泳がせると、エメラルの真剣な眼差しを見る。

 チクチク僕の胸に刺さると、マフラーは首を横に振る。


「ううん。判断が鈍っていたのよ」


 仕事人だ。マフラーは仲間想いであり、ライムに怒ることが出来た。

 あの状況で、感情的な牙を持ち合わせ、同時に律する力も持っている。

 それだけで優秀な冒険者、Cランクには充分な素養だった。


「私達の判断が、後少し、後少しだけ早ければ、こんなことには……」

「でも、マフラーとラッシュは無事に逃がされたんだ。危険(リスク)分散は済んでいた筈だよ?」


 この状況で、意味の無い擁護に走る僕。

 果たしてこれに何の意味があるのだろうか?

 残念だけど、意味はほとんど無かった。マフラーとラッシュが今こうして生きているのは、ネイル達の判断が間違っていなかった。それに更なる理由付けをするのが程度だ。


「えっと、それじゃあ、どうしたら?」

「どうしたらもなにもないよ。コボル洞窟でなにが起きたのか、その真実を知らない以上、これ以上は憶測になるよ」


 僕の意見は間違っていなかった。

 会議室の空気が若干重たくなった。

 あくまでも希望的観測であり、ネイル達が生きているのかさえ分からない。

 ましてやコボル洞窟で何が起きたのか、知る由も無かった。


「だから……」


 僕はチラリと視線を動かした。

 会議室の上座の席。そこに座っているのは、ギルドマスターであるライムだ。

 話の全容を把握した今、何を思うのか、畜生の考えを聞く。


「なるほど、そのようなことがありましたか」


 ライムが言葉を発した。空気が重たくなる。

 今僕達は同じ部屋の中に居る。

 つまりは逃げ場がない訳だ。


 ライムが開放してくれたのは、冒険者ギルド奥の会議室。

 ここに集められているのはある一定のランクを超える冒険者達。

 本当は数人程度集まればよかったが、流れ的に僕達も参加する羽目になっていた。


「どうなってるんだ、マフラー。コボル洞窟は安全じゃなかったのか?」


 立ち上がったのは男性冒険者だ。

 屈強な体をしており、言葉遣いも若干粗暴。

 マフラーに文句を言っても仕方が無いが、とりあえず発破を掛ける。


「私達もそう思っていたわよ」

「けれど、安全では無かった。そうだろう?」


 鼻の高い男性冒険者が口にした。

 肩にクリスタル製の槍を掲げ、切れ目な瞳はマフラーを射る。

 マフラーの肩を持つが、話は進展しない。


「ねぇ、ネイル達はどうなったの?」

「分からないわ。それを捜索しているのよ」

「そっか。そうだよね?」


 キョトンした顔を見せる女性冒険者。

 明らかに後衛型であり、武器も大それたものではない。

 アレは一体なに? クリフ……的な奴だろうか?


「とにかくコボル洞窟はとても危険なダンジョンになっているの」

「それじゃあどうするのかな?」

「パターンは二つよ。一つはこのまま沈静化するまで放置する。もしくは強硬手段で鎮圧するの」


 瞳の大きな少年冒険者が言葉を投げ掛けた。

 これから何をするべきなのか。マフラーに意見を求める。

 一瞬で会議らしい雰囲気が漂うと、マフラーは提案を二つも出した。


 一つは穏健派な意見であり、このまま放置すること。

 コボル洞窟のコボルト自体は大したことが無い。

 けれど特別凶悪な個体が現れたとなれば、その個体が落ち着くまで、コボル洞窟には近付かない。根本的な解決にはなっていないが、手段の一つではある。


 もう一つは急進的な意見であり、恐らくこちらが優先される。

 コボル洞窟に生息する、謎の凶悪コボルトを討伐する。

 それが出来れば自体は一気に沈静化され、再び元の姿を取り戻す。


 マフラー的にも、仲間達の救出を念頭に入れていた。

 既に死んでいる可能性はあるけれど、可能性が全く無い訳では無い。

 コボル洞窟のコボルトを薙ぎ払えば、生存率は格段に高まるのだ。


 実際、コボルトはそれほど強くは無い。

 だから人数の有利さえあれば、如何にでもなる。

 それがならなかったら今に繋がるけれど、敢えて何も口にしない。


「そんなの決まってんだろ! ぶっ潰しに行くだけだ」

「いや、沈静化を待つ方がいいよ」

「はぁ!? なに言ってんだ。そんなこと言ってる間に力を付けて、暴れ回ったらどうするつもりだ!」

「ネイル達が戻らないんだよ。少し落ち着くのを待ってから行動に映るのも悪く無い筈だ」

「そんなことしてる暇があるのかッ!?」

「それは分からないが、感情的になり過ぎるのも、冷静な判断力を鈍らせるだけだよ」


 早速口論になってしまった。

 確かに穏健派の意見も、急進派の意見も間違ってはいない。

 どちらにもそれぞれ利点があり、無暗な行動が余計に油へ火を注ぐ結果に繋がらないとも言えない。


「どっちが正解かな?」

「さぁね~」

「さぁね~、って。うーん、分からないよね?」

「私は戦えないから、決まった意見に従うよ?」


 中には会議の暑苦しい雰囲気に溶け込めない冒険者も居た。

 もはや会議室の中で、二分・三分されてしまっている。

 意見がまとまる気配が無く、僕は無表情で困っていた。


「これ、どうしたらいいのかな?」


 正直僕みたいなポッと出の意見は通らないのは明確。

 かと言って、何も口にしないのは違う。

 僕は僕の判断で動くことにしている。だからどっちの判断が正しいとかは言えなくて、エメラルとクロンの姿を見た。二人は何を思うのか、チラリ視線を飛ばすと、目が点になっていた。


(あー、ダメだ)


 まず初めに分かったのは、クロンのこと。

 考えることを放棄している。

 徹夜したこともあってか、目が点になったまま。


 これは会議の状況に呆れている訳では無い。

 そもそも何も考えていないのだ。


 完全に半分脳が休んでいる状態。

 目を吊り上げたまま、瞼を開き眠っている。

 エメラルもそれが分かっているせいか、クロンを起こそうとしない。


(後はエメラルだけ……頼んだよ、エメラル!)


 こうなった以上、この状況をまとめられるのはエメラルだけだ。

 僕は全てエメラルに丸投げした。余計な言葉を口にしない。

 矢面になってくれるのはエメラルだけで充分。僕は黙っておくことにすると、口を噤んだまま会議の決着を待った。

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