第59話 コボル洞窟はヤバい
ヤバいって言われても分からないよぉぉぉぉぉ!!!
「コボル洞窟?」
そう言えば、ディスカベル近辺のダンジョンに付いて、頭の中に叩き込んだことがある。
その中の一つ、確かトロン森の奥にあるのが、コボル洞窟だ。
情報によると、Dランクでも最底辺のダンジョンらしい。
主にEランク冒険者(※新米から新人に掛けて)が、Dランクに昇格するための関門とされている。
僕は残念ながら行ったことが無い。
そのせいだけど、全然ピンと来なかった。
ポカンとした顔をすると、怯えている少女が震えながら答える。
「あ、あ、あのダンジョンはダメです。ネイルさん達は今頃……ひいっっ!」
少女は両腕で体を寄せていた。震える体を抑えようと必死だ。
一体何が起きたのか。想像することは出来るけれど、あくまでそれは想像の範疇を出ない。
大切な仲間であるネイル達がコボル洞窟に取り残されている恐怖に、不甲斐無さでも覚えたんだろう。
「大丈夫? そんなに怖かったの?」
「は、はい。あの、その、コボル洞窟はダメなんです!」
少女は僕に訴え掛けて来た。
一体どんな場所なのか、正直ゾクゾクする。
胸が疼き、心臓の鼓動が強まるのは、漂い出す死のニオイが原因に違いない。
(コボル洞窟……そんなに危険には見えなかったけど)
調べた限りでは、コボル洞窟はそこまで危険じゃない。
定期的に調査が入っていて、主にコボルトと呼ばれるイヌ系モンスターの縄張りらしい。
ゴブリンよりも体が大きく、筋肉質であり、獣臭さが漂う代わりに知能もそれなりにあり、仲間との連携も取れる。一見すると厄介そうに聞こえるけど、それだけ的が大きく、慣れていれば簡単に蹴散らすことが出来る。言わずと知れた比較的代表的なモンスターだった。
「そんなに危険なの?」
「は、はい。アレは、危険なんてものじゃないです!」
少女は身震いを起こすと、唇がプルプル震えていた。
足腰もガクブル状態で、完全に腰が抜ける寸前。
少なくとも冒険者ギルドに居る以上、戦う意思があるのは確かな筈だ。
「アレは、その、殺気を纏った悪魔です」
「ん?」
殺気を纏った悪魔とは何だろう。
そもそも天使や悪魔はモンスターとが違う。
だから比較対象にするのは間違っていて、何よりも烏滸がましい。
僕は表情には出さないけど、ちょっとだけイラっとした。
殺気が漂うと、少女は固まってしまう。
体がガチガチになると、顔から血の気が引いた。
「ちょっとオボロ。こんな子に殺気をぶつけてどうするのよ?」
「あっ、ごめんね。大丈夫?」
「えっ、あっ、あの、その……は、はい」
少女は床にペタンと座り込んでしまった。
やっぱりやり過ぎてしまったようで、僕は反省する。
腕を貸して立ち上がらせると、もう少し詳しい話を聞きたい。
「それで、そのコボル洞窟でなにかあったんだね」
「ええ。……エメラル、なに、この人? 見たこと無い顔だけど」
「最近この街にやって来た冒険者よ。トロン森でスカイプ達を襲ったトロールを倒したのは、コイツよ」
残念だけど、ネイルと言う冒険者達がコボル洞窟から戻って来ない。
それだけは分かるけれど、具体的に何があったのかは分かっていない。
話の流れ的にはコボルトが関わっていそうだが、それ以上はまだ何も。
そんな初歩的なやり取りをしていると、マフラーを巻いた女性が、エメラルに話し掛ける。
耳打ちをして僕へと視線を向けた。気が付いているし、聞こえてもいる。
エメラルの説明は簡潔で分かりやすかったけれど、女性の視線が痛い。完全に怪しまれていた。
「トロールを倒した冒険者……」
「そ、そんな風には、見えないですよね?」
「あはは、よく言われるよ」
本人を目の前にして否定されてしまった。
でも残念だけど、トロールを倒したのは僕だ。
僕で間違い無くて、こんな小柄な体型だと信じて貰えないらしい。
「それで、具体的にはなにがあったの?」
改めて僕は訊ねることにした。
すると女性はマフラーをギュッと握る。
鋭い魔力が嫌悪感として溢れ出すと、少女の前に立った。
「その話をするつもりは無いよ」
「えっと?」
「マフラーさん!?」
マフラーさんと呼ばれた女性。マフラーがトレードマークらしい。
ギュッとマフラーを握ったまま、僕の顔を詰めて来た。
近い、近いな。僕は表情を変えはしなかったが、困り顔を浮かべてしまった。
「貴方のランクは?」
「Cランクだよ」
「……」
急に黙られてしまった。怖いな、何かあるのかな?
するとマフラーはエメラルの顔をチラッと見る。
何か言いたそうだけど、もしかして、マフラーもCランクなのだろうか?
「そうなんだ。私と同じ」
「ええっ、マフラーさんと同じですか!?」
「そうみたいよ」
心外みたいな顔をされていた。
でも僕のランクだって、別に不正で得たものじゃない。
ちゃんと冒険者ギルドに認められたランクなのだから、話を伺う権利は充分ある。
「悪いけど、事実なんだ。ごめんなさい」
「あっ、そんなことないです!」
少女は動揺していた。その態度だと、明らかに疑っていたのは明白。
仕方が無いと割り切ると、マフラーは「はっ」と息を吐く。
「分かったわ。教えてあげるよ」
「ありがとう。それで、混ぜて貰えるんだよね?」
「うん。実は……」
マフラーが口を開こうとした。
その瞬間、冒険者ギルドの空気が変わる。
背後の扉が開き、光が差し込むと、ザワザワと空気が震える。
「ん?」
「ちょっとどうしたのよ、マフラー」
「なにかあった?」
マフラーは目が、僕達を見ていない。
隣で嫌悪する少女もそうで、何故か雰囲気が変わる。
視線は僕達よりも上。当然僕らの方が、平均身長は低いから仕方が無いけど、誰か来たのだろうか?
「ま、マジかよ」
「えっ、二回目? 早すぎるよな」
「マジなの? えっ、どうして」
「もしかして、アレがギルド……」
冒険者達の様子がおかしい。
動揺しているのか、突然空気が変わったことに震える。
口調がたどたどしくなり、僕は首を捻った。
「ギルド?」
ここはギルドだ。冒険者ギルドで間違いない。
そしてこの言葉から始まる単語。
数える程しかないが、振り返ると男性の声と杖を床に叩く音がした。
「やぁ、みなさん。調査の方は順調ですか?」
現れたのはギルドマスターだった。
何故か薄っすら笑っているライムの姿に、僕は悍ましさを感じ取る。
これは一体何なのか。タイミングがよすぎる……否、当然のことなのだろうが、態度と口調が合っていないので、僕は嫌な予感がした。
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