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第5話 自意識過剰って怖い

勘違いって怖い。

 ブレットに睨まれた僕。

 一体全体何でこうなるんだろう。

 もしかして僕、人間運が無いのかな?

 そう思ってしまうと、ブレットは僕の胸ぐらを掴み掛かる


「おい、オボロ。やっぱりお前も狙ってやがったな!」

「なんの話?」

「とぼけんじゃねぇぞ。ネシアさんと楽し気に話しやがって!」


 もの凄い勘違いをしている。

 ブレットはよっぽどネシアのことが好きなんだろう。

 だからだろうか。自分以外の異性が、楽し気に会話を弾ませている光景が許せないんだ。


「待ってください、ブレットさん。オボロさんは……」

「ネシアさん、俺、本気でネシアさんのことが好きなんです」

「えーっと……そう言うお誘いはお断りしていて」


 ネシアさんは営業トークを流用する。

 上手い具合にブレットをあしらって、恋愛対象外だと教えようとする。

 けれどブレットがそんなことで止まる訳がない。だから面倒な客になるんだ。


「ネシアさん、俺と飯に行きませんか」

「いえ、行きませんけど」

「だったら、服でも買いに来ませんか? 俺が全部持つんで」

「いえ、自分で買いますので大丈夫ですよ?」


 悉く失敗が続いていた。

 もはやネシアにとって、ブレットは恋愛の“れの字”にも入れて貰えない。

 完全に空回りしている憐れなピエロで、僕は同情した。


「ブレット、そろそろ放して貰えるかな?」

「はっ? オボロ、俺のことを虚仮にする気か」

「そうじゃないよ。勘違いは止めて欲しいんだ」


 この状況、僕は全く関係がない。

 だって僕は、ただネシアに対応して貰っただけ。

 ブレットに言いがかりを付けられる必要は何処にも無かった。

 空気を読まない、否、完全にぶち壊す発言を放った。


「お前な! いい加減に」

「よっと」


 僕は殴られそうになったので、早々に退散する。

 流石に穏便解決とは行かなくなりそう。

 そんな予感がしたので、着ていたローブを脱ぐ。


「なっ、ちょこまかとしやがって!?」


 僕はローブを脱ぎ捨て、ブレットの拘束から抜け出した。

 ブレットは僕の胸ぐらを掴んでいた筈が、一瞬で居なくなられた。

 手にしているのは僕が脱ぎ捨てたローブだけで、すり抜けたように見えてしまったらしい。


「ブレット、怒らない方がいいよ。それよりネシア、報酬って今貰える?」

「は、はい!」

「依頼は達成でいいんだよね? 報酬って貰えるかな?」


 僕はネシアに頼んで、早めに報酬を出して貰う。

 それもその筈、ブレットは怒りに燃えているので、早く冒険者ギルドから立ち去りたい。

 この後は色々と予定もあるので、余計な手間を取られたくないんだ。


「はい、こちらにご用意させていただいております」

「ありがとう……うん、確かに」


 カウンターの上に置かれた袋を確認。

 中身を見てみると、銅色、銀色の硬貨、おまけに金貨が何枚も入っている。

 相当楽な依頼だったけど、報酬が旨くて笑みを浮かべる。


「よし。……ブレット、これ上げる」

「はぁ?」


 僕は袋の中から一枚取り出す。

 それは金色の硬貨で、ブレットに手渡した。


「金貨だと?」

「これで手打ちね。じゃあ僕は行くよ。後は二人でお願いします」


 僕は大人な対応を見せた。

 師匠から教えて貰った技の一つで、世渡りでは大事なこと。

 お金を払って諫める。これで争いは生まない筈だと、後のことは当事者達だけに任せた。


「ま、待ってください、オボロさん!」

「オボロ、待ちやがれ! お前、俺がネシアさんに信用されてないってのに、一人だけカッコつけやがって」


 ネシアとブレットは僕のことを呼び止める。

 ネシアは僕に助けを求めていて、ブレットは怒りに燃えている。

 如何して初日でこんな目に遭うのか。溜息を付きたくなると、ブレットは僕の首根っこを摑まえる。


「うわっ!?」

「待てって言ってるだろ。オボロ、俺のことを本気で出汁に使って自分の株を上げやがったな」

「……そんなことないんだけど」

「うるせぇ! 少なくとも俺にはそう見えるんだよ」


 完全に独りよがりで、自意識過剰。

 僕は頭を抱えたいけど、それすら億劫。

 本気で嫌になってしまうと、僕はギロッと視線を飛ばして睨んでしまう。


「ブレット、少し横暴だよ?」

「はぁ? この俺が横暴……ぶへっ!」


 僕はブレットに掴まれていた首根っこを、自力で振り払う。

 一瞬の間過ぎて気が付かなかったのかもしれない。

 突然手の中から感触が消えると、戸惑った顔をする。


 その隙を狙わない訳がない。

 僕は踵を返して拳を繰り出す。

 鋭いパンチが炸裂し、ブレットの頬を貫いた。


「キャッ!」

「ぐへっ……な、なんで、こんな」


 ブレットを一発でKOしてしまった。

 ちょっと回転を掛け乍ら頬に拳を叩き込んだだけ。

 指の骨が頬の筋肉を抉り刺すと、全身の神経を痛覚が支配する。


「あれ? 今僕、手加減した筈なんだけどな」


 師匠達に繰り出すパンチに比べたら、魔物相手に叩き込むパンチに比べたら、全然弱々しい。一般の人相手にはヤバいかもしれないが、同業のしかも王都の冒険者ならこれくらい余裕で耐えると思っていた。


 もしかすると不意打ちだったから、上手く威力を殺せなかったのかも。

 受け身をシッカリと取っていれば、一発でKOされることも無かった。

 僕はブレットのことを立てると、頬を掻き、申し訳なくなる。


「ごめんなさい、ブレット。不意打ちだったもんね」

「不意打ちでこの威力なんですか……」


 ネシアはポカンとしていた。

 他の受付嬢や、やり取りを見ていた冒険者達の視線が痛い。

 師匠達ならもっとアグレッシブなんだけど、如何やらやり過ぎたらしい。

 これは反省だと、僕は自分自身を咎めた。


「あの、ネシア。このことは内緒でお願いできないかな?」

「そ、そうですね。オボロさんはあくまでも、正当防衛ですからね」

「それも怪しいけど。頼めるかな?」


 初日してこの有様。何とか誤魔化さないと評判に関わる。

 僕はネシアにお願いすると、見なかったことにして貰う。

 あくまでも正当防衛? と認めて貰えたので、反応はよさ気だ。


「分かりました。見なかったことにしますね」

「助かります。それじゃあ僕は行くので、また」

「はい、またのお越しをお待ちしておりますね、オボロさん」


 ネシアはニコッと笑みを浮かべてくれた。

 僕のことを見送ってくれると、倒れたブレットを放置する。

 冒険者ギルドから退散すると、眩しい陽射しを浴び、僕は表情を顰めた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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