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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
2ー1:闇の円卓

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第49話 嫌なニオイがして

少年の実力とは一体?

「はぁ~、美味しかったわ」


 僕達はいいランチを取った。

 腹も満たされ、幸せな気持ちになる。

 今日はもうこれで解散だ。そう思うと、いつもの十字路に立った。


「それじゃあ私とクロンはギルドホームに戻るわね」

「……エメラル」

「どうしたのよ、クロン?」


 エメラルとクロンはギルドホームに戻るらしい。

 宿舎もあるので、後は暇に過ごす。

 かと思いきや、クロンがエメラルの袖を引っ張った。


「私、調合用の実験器具を買いに行きたい」

「買いに行くって、また怪しい薬品作り?」

「ううん。フラスコとか、ビーカーとか?」


 クロンは研究をしている。黒魔法の使い手としてだけではなく、研究者としても一流だ。

 如何やら素材はあるものの、実験用の器具が足りない。

 そんなに壊れることがあるのだろうか? 何だか怖くなった。


「しょうがないわね。それじゃあオボロ、また明日ね」

「うん。朝七時に冒険者ギルド?」

「そうよ。ちゃんと、モーニングは食べてきなさいよ」

「分かってるよ」


 まるで母親のような言い付けだった。

 言われなくても分かっている。朝食べることが一番大事だ。

 師匠達にもキツく言われているので、僕は首を縦に振る。


「それじゃあ行くわよ、クロン」

「うん。ありがとう」

「いいわよ、別に」


 クロンは申し訳ない気持ちがあった。

 けれどエメラルはまるで意に介していない。これも必要なことだと思っている。

 本当に仲が良く、凸凹に見えて息ピッタリだった。


「さてと、僕は修練かな」


 まだ体は動かせる。流石にこれで終わるのは勿体無い。

 そこで一人で修練に励むことにした。

 空腹感も満腹感で上書きされたんだから、これくらいはいい運動になる。


「今日はどうしようかな? とりあえず……ん?」


 空を見ながら考えていると、何やら歪な気配を感じた。

 何かあったようで、立ち止まって視線を前に向ける。

 女性が一人倒れていて、その周りをたくさんの人達が慌てた様子で見ていた。


「誰か、捕まえて、お願い!」


 女性は叫んだ。何を、誰を、何故? 捕まえる必要があるのだろうか。

 女性の視線の先を追い、丁度僕の進行方向、向かって来る形で男性が走っている。

 怪しい格好をしており、素性(かお)がバレないようにマスクで覆っている。


「ハッ、捕まってたまるかよ」


 男性の手には女性ものの鞄が握られていた。

 ピンク色で可愛らしい、小さな鞄で、男性の持ち物には見えない。

 ましてや態度から、一発で何をしたのか分かった。


「ひったくりかな?」


 白昼堂々ひったくりに遭遇するとは思わなかった。

 しかも僕の方に向かって来ていて、このままだとぶつかりそう。

 流石に捕まえないとマズいよね。エメラル達だけじゃなくて、師匠達の顔に泥を塗るのは嫌だ。


「こんな往来でやめてよね」

「どけっ、ガキがっ!」

「どかないよ。はっ!」


 僕はひったくり犯を捕まえることにした。

 どいてあげる気は無いから、前に立って拳を構える。

 出来るだけ怪我をさせたくないから、足払いで崩して押し倒すことにした。


「よっと」

「「なっ!?」えっ?」


 僕もひったくり犯も驚かされる。

 突然僕と同じ歳くらいの少年が現れ、ひったくり犯を捕まえる。

 足を引っ掛け転ばせる瞬間、ピンクの鞄を奪い取ると、ひったくり犯の背中を踏み潰した。


「(ドンッ!)ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」


 ひったくり犯は発狂した。

 あまりの痛みに悶絶すると、骨が砕ける音がする。

 やり過ぎな気はするけれど、僕が言える口じゃない。


「ほいっ、大丈夫?」

「あ、ありがとうございます。あの、なんとお礼を言ったら」

「いいよ、俺はたまたま通り掛っただけだからさ」


 少年はピンクの鞄を女性に返した。

 お礼を言われ感謝されるものの、謙虚にあしらっていた。

 女性の頬が赤らむと、少年の気さくな態度にウットリする。


「んじゃ、もう盗まれないようにしような」


 少年は颯爽と立ち去ってしまう。

 あまりにも見事なまでの一幕に、観衆の目が惹き付けられる。

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」と拍手喝采が起こる中、僕はジッと少年を睨んだ。


「あの人……ごめんなさい、ちょっと通して貰っていい?」


 僕は少年が消えてしまわないように目を凝らした。

 睨み付けて追い掛けると、人込みを抜けて行く。

 見失う寸前だったけど、僕は少年に声を掛けた。


「ちょっと待ってよ!」

「ん?」


 少年は立ち止まった。

 鬱陶しそうな表情を一瞬見せたけれど、立ち止まってくれた時点で、話を聞いてくれる態度を見せ、街中に溶け込もうとしていた。


「なんだよ、お前。俺になにか用?」

「さっきは凄かったね。一瞬だった」

「さっき? あー、見てたんだね。別に大したことはしてないよ」


 トコトン謙虚に務める辺り、少年は大した実力の持ち主だった。

 自分の力をひけらかさず、豪語しないのが、まさにそれ。

 僕は感銘を受けると、「凄いね」と漠然としたことしか言えない。

 

「止めてくれよ。俺は別に大したことはしてないからさ」

「そんなことないよ。上手く抜き取っていたよね(・・・・・・・・・)

「……」


 僕はニヤリと少年が一瞬の間でしたことを言い当てた。

 まさかあれだけ綺麗に“抜き取る”とは思わなかった。

 きっと相当目がよくないと見えない。見逃がすのが当たり前の早業に気が付いた僕へ、少年の態度が変わった。


「へぇ、分かっていたんだな」

「うん、早業だね」


 少年も自分のしたことを認めたらしい。

 あまりの早業だったのは凄いことだけど、それを見過ごす訳にはいかない。


「それで、抜き取ったもの、出してよ」

「コレのこと?」


 少年が見せたのは硬貨だった。

 鞄の中から財布を取り出し、瞬時に中身を抜き取った。

 五千リルは堅く、手の中に納まっているのはあくまでも一部だろう。


「それ、返して貰える?」

「どうしてだよ?」

「盗んだものだよね。窃盗はよくないよ?」


 僕は完全にスリだったから見過ごせない。

 返して貰おうとするが、少年は拒む。

 ニヤッと笑うと、「だったら……」呟いた。


「ほらっ、取ってみろよ!」

「えっ、なんてこと!? ……あれ?」


 少年は手に持っていた硬貨を投げる。

 多分だけどブラフだと思う。でも、視線を向けてしまうと、確かに硬貨だった。

 マズいと思い回収しようとするが、指が触れた瞬間燃えカスになって消えた。


「いなくなってる」


 少年の姿が無くなっていた。

 忽然と姿を消すと、人の波に溶け込んでいる、

 キョロキョロ視線を右往左往させるが、もう見つかる様子は無い。


「気配も追えない……参ったな、逃げられるなんて」


 気配を追うのも考えたけれど、何故か追えなかった。

 魔導具でも持っているのか、認識阻害されてしまう。

 完全に見失い、逃げられてしまった。参ったな、頭を掻き毟る。


「あのニオイ、血の臭いだったけど、なにかあったかな?」


 少年を追った理由。それはスリだけが原因じゃない。

 異様なニオイ、あれは明らかに血だ。血の臭いだ。

 一体何をしたのか、何処か怪我でもしたのか? その真実は、流石に僕にも分からない。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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