第35話 サイコパス冒険者
さぁ、タイトル回収の時間だ!
僕はエメラルに任せて貰った。
手にした短剣は血でベッタリ濡れている。
今にも滑ってしまいそうだけど、僕は血を固めて握り直した。
「ナンダ、オマエハ。オレトヤルキカ?」
「もちろん。もう油断しないから」
「フン。オレニマケタオマエガ、オレニカテルワケガナイダロ」
確かに僕は、一度トロールに負けた。
別に負けたとは思ってない。
でも、木の幹に叩きつけられたせいか、相当なダメージを負っている。
その点を踏まえたら、“負けた”って言ってもいい。
「さぁ、それはどうかな?」
僕はもう、負ける気がしなかった。
一回負けたってことは、もう負けることが無いんだ。
後は勝てばいい。勝てば解決する。僕は短剣を強く握る。
「なんだか、オボロ。様子が変よ?」
「うん」
「嫌な予感がするわ。一応忠告……」
エメラルとクロンが何か言ってる。
今この瞬間は、僕の耳は聞き分けられた。
大丈夫。そんな心配、要らないから。
「あはは、はは。勝つよ、今度は僕が」
「ナンダ、コノサッキハ。オマエ、ナニヲシタ」
爆破感情を爆発させた。
すると殺気が漏れてしまい、トロールは警戒する。
それはそれでいい。右腕を下げると、いつでも殴れるように、用意をする。
「カエリウチニシテヤル。コンドハソクシダ。アノヨヘ……ン?」
僕はトロールが拳を振りかざしたのに合わせて、短剣を払った。
するとトロールの右腕が消える。
一瞬にしてトロールの体から切断されると、大量の体液を撒き散らして、地面にコトンと落ちた。
「ハッ!? ナ、ナンダ。ナニヲシタ!?」
トロールはパニックに陥っていた。
簡単に右腕を失ってしまうと、慄いてしまう。
体を揺すり、足踏みをしてジタバタすると、威厳のようなものは無くなる。
「う、嘘でしょ?」
「真実。私もこの目で見た」
エメラルとクロンも口に手を当てていた。
だけど二人なら、僕の早業も見逃す筈がない。
赤い剣身の短剣を振ると、トロールの肩から先を切断した。
もちろん力何て入れてない。ちょっとだけ、本当に少しだけ、まるで刺身を作るみたいに、簡単に吹き飛ばしただけだ。
「クッ、コノ!」
「はっ、あはははは!」
トロールは左腕に切り替えた。
怒りを力に変えて、全身を使って渾身の一発を繰り出す。
だけど僕には見え見えで、止まって見えた。
「遅い遅い、もっと速く動かないとねっ!」
僕はそれよりも速く、懐に潜り込む。
一瞬にして距離を詰めると、パンチの射程圏内から外れる。
有効範囲を逸れ、代わりの僕が攻撃を仕掛ける。
トロールの体の軸を見つけると、まずは足から削ぎ落す。
「それっ!」
「ンガッァァァァァァァァァァァァァァァ!」
トロールの右足首を切断した。
足を失うと、悶絶ししてしまったのか、トロールは泣き叫ぶ。
体の重心が安定しなくなると、僕はフラフラとした左足を痛め付けた。
「まだまだまだまだまだ!」
太腿に幾つもの傷を付けると、骨を粉々に粉砕。
短剣の軽さを活かした圧倒的な手数だ。
流石のトロールもチビな僕を弱った体で捉えるのは難しいみたいで、次々傷口を増やされる。
「コノ、ニンゲンガ!」
「あはは、いいねいいね。もっと泣き叫ぼう!」
トロールの悲鳴が心地よかった。
全身がスッとなって、心に沁み渡る。
気持ちがいい。気分がいい。トロールの絶叫が、僕に快楽を与えてくれる。
「そーれっ!」
僕は崩した左足の膝を使って、トロールの胸辺りまで飛んだ。
そのまま短剣の柄と僕の体を使って、トロールを押し倒す。
バランス感覚が崩壊した体だ。余計な力何て加えなくても、トロールは後ろに倒れ、仰向けになった。
「ニンゲンガ、コノオレヲ……」
「そうだよ。そんな人間に虐殺される気分がどう? 気持ちいいよね、気分がいいよね、最高だよね? ねぇー!」
僕はニヤニヤとした笑みを浮かべた。
狂気に憑りつかれた笑顔は、魔物である筈のトロールを委縮させるには充分立ったみたいで、言葉を失う。
子供の様な泣き顔を浮かべると、僕は容赦なんて一つもしない。寧ろここからが本番だ。
「トットト、コロセ」
「ううん。ダメだよ」
僕は短剣をトロールの胸に打ち付けた。
もちろんただ刺すだけじゃない。
魔力を通すことは無く、発光もしていないせいか、はたまた剣身自体に僕が施錠を掛けたせいか、刃はただの硬い金属の棒で、トロールの体の奥に突き刺さらない。
「ナ,ナンダ。ナニヲスルキダ!?」
「なにって、こうするんだよ? えいっ!」
僕は切れないナイフをトロールの動けない体に突き刺した。
ドクンドクンと赤い体液が噴き出る。
まるで噴水のようで、僕は愉悦の表情を浮かべるが、トロールは苦悶の表情になった。
「グハッ!」
「あはは、いいねいいね、いい泣き顔だね!」
僕は笑みを浮かべた。
トロールは辛い顔をすると、牙を剥き出しにした。
あまりの激痛にもだえ苦しむ中、僕はまだまだ止めない。
「あははあははあははあはは、あははははは! もっともっともっともっともっと!」
グサリグサリグサリグサリ!
トロールの体を抉った。
体の中を抉り続けると、トロールは体を揺すった。
ジタバタし始め、左腕を振り抜こうとすると、僕は青い短剣で左腕を吹っ飛ばした。
「グァァァァァァァァァァァァァァァ! ヤ、メテ、クレェェェェェェェェェェェェェェェ!!」
トロールは喉が潰れるような声を出した。
左腕も失い、大量の体液が漏れ出る。
声を出し続け、喉を完全に潰してしまうと、僕はケタケタと笑った。
「あははははははははははははははははははははははははははは!!!」
さんざめくような笑いを浮かべた。
全身を突き刺すような快楽と快感。
自分が自分でなくなるような、不思議な感覚に陥る中、トロールにも異変が起きた。
何故か生命の息吹を感じられなくなる。ピタッと止まっていた。
「あれ? もっと声上げようよ」
「アッ……アアッ」
トロールは小さな声を出した。
だけど声とも言い難い。
完全に死体から発せられる、譫言でしかない。
「アアじゃ分からないよ。ほら、ちゃんと起きてよねっ!」
僕はトロールの顔面に短剣を突き立てた。
グルグルグルグル、短剣を回した。
鼻を潰し、目玉を抜き取り、耳を削ぎ落す。
圧倒的な狂気ぶりを発揮すると、トロールの体は動かなくなった。
「あれ? おーい、おーい、おーい!」
僕はトロールの体に短剣を突き刺す。
今度はちゃんと切れる短剣だ。
ズタズタに引き裂いてはみたけれど、トロールは全然動かなかった。
「チッ、つまんないな」
僕は舌打ちを打った。
しかしトロールは動いてくれない。
溜息をついて、トロールの腹の上に座った。
「ちょっとエメラル、これマズくない?」
「うん。オボロって……」
「サイコパス側だったのね」
エメラルとクロンは顔色を悪くする。
だけど僕には見えていないから、頭の中で想像する。
僕のことを心配するが、全然大丈夫。だって、凄く楽しいから。
「あー、楽しい。やっぱり、僕は好きなのかな、モンスターを狩るの」
僕はトロールをとにかく痛め続けた。
まだ生きているかもしれない。起き上がるかもしれない。
だけどそんなの如何でもよくて、僕は既に絶命しているトロールの死体蹴りを続けていた。
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