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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー4:食らう妖精、狂う少年

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第33話 VSトロール

強敵の名前はトロール。

 現れたのは巨大なトロール。

 その傍らには、人間の遺体。

 無残にもグチャグチャにされ、布切れが纏わり付いている程度で、もはや息絶えている。

 生き返る様な望みが無くて、一般人が見たら、吐き気を催すかもしれない。


「ナンダ、マタニンゲンカ。エサガキタナ」


 トロールの口元は血でベッタリと濡れていた。

 それを長い紫色の下で舐め取る。

 完全に食事の一環になっていて、僕達は眼前に構えた。


「貴方の仕業ね。ここ最近、ゴブリンやスライムが活発化している原因は」


 エメラルはトロール相手に冷静だった。

 間合いは絶対に間違えなくて、ましてや空気感も弁える。

 それでいて単刀直入な問いかけをしたのは、この魔物、このトロールの個体は人間の言葉が分かるからだ。


「ソンナモノハシラン。ココハオレノナワバリダ」


 トロールにとって、ここは自分の縄張り。

 それならば頂点である自分が傍若無人な態度を取ってもいい。

 それにより、どれだけの被害が出ているのか、人間の世間など、トロールにとっては空虚だ。


「それじゃあ、スカイプの仲間をやったのは……」

「カッコウノエサダッタナ。ヨワイニンゲンタチダッタ」

「弱い人間達……へぇ」


 スカイプの仲間達は全員余すことなく死んでいる。

 スカイプの言葉、目の前のトロールの言葉。

 それらが交差すると、嫌でも痛感した。同時に、それを聞いても何も思わない冒険者の心も。


「それで欲望のままに殺して食べたって訳?」


 僕は冷静だった。もちろんそんなの当り前の話だ。

 人間だって同じことをしている。

 生きるためには仕方が無いこと。まぁ、魔物は何も食べなくてもいいけれど、目の前のトロールにとっては、それが生命線というよりも生き甲斐なんだろう。腹立たしいというよりも、無情だった。


「ダッタラナンダ。オマエタチニンゲンモシテイルコトダ。モンクハ……」

「無いよ。だけど、裏を返せば僕達が殺してもいいってことだよね?」


 僕は堂々と宣言した。

 するとトロールはケタケタと笑い出す。


「チイサイニンゲンガフゼイニナニガデキル!」


 トロールは完全に僕達のことを舐めていた。舐め腐っていた。

 ケタケタと嫌な笑いを浮かべ続けている。

 それを聞く度に、僕達の怒りが沸々と沸き上がった。


「小さなか……」

「ムカつくわね。本当のことだけど」

「魔物に言われたくない」


 僕達はムカッとした。苛立ってしまうと、各々武器を取る。

 だけど心だけは冷静だ。

 殺す覚悟があるのなら、殺される覚悟もあるってこと。

 それなら僕達が手を抜く必要は無かった。


「敵討ちって訳じゃないけど……」

「やるわよ。全力でね」

「うん。黒よ撃て、ブラックショット!」


 僕とエメラルが覚悟を決めた。

 地面を蹴ってトロール相手に迫る。

 それを皮切りに、クロンは魔法を放った。

 黒い球が渦巻き上がると、バラバラに拡散して、トロールに撃ち込まれる。


「ナァッ!?」


 トロールは少しだけ驚いた。いや、かなり驚いている。

 並の冒険者ではないと痛感すると、腕を×で組んだ。

 クロンの弱めの魔法? に苦戦している。


「ナンダ、コノイリョクハ」


 トロールは恐怖を感じている。ほんの少しの恐怖だ。

 大量の黒い弾丸が撃ち込まれると、全てを受け止めることはできない。

 全身に少しだけ切り傷ができると、体液が溢れ出た。


「油断してる暇ないよ」

「そうねっ!」


 僕とエメラルも強襲した。

 短剣を振り抜き、トロールの体を傷付ける。

 エメラルも拳を繰り出し、パンチを叩き込んだ。


「グハッ!」


 僕とエメラルの攻撃を受けたトロール。

 一回目で懲りた筈なのに、二回目も受けた。

 もしかしてM? そう思ったけど、違う。僕達の動きに対応できていないんだ。


「まだ。ブラックショット!」

「ゲホッ。ナ、ナンダ、コノイリョクハ……」


 クロンは無詠唱で魔法をお見舞いする。

 続けた二発目のブラックショット。

 威力は敢えて弱め(・・・・・)に設定しているみたいだけど、それはクロンなりの周りへの配慮だ。

 それでもダメージにはなっていて、トロールは余裕が感じられなかった。


「まだだよ。それっ!」

「ウガッ! オマエタチ、コノアイダノヤツラトハケタチガイニ……」


 そんなの当り前だ。って言うと、失礼だと思う。

 だけど僕達はスカイプの仲間よりも強い。

 そう思い込むと、トロールに冒険者の恐ろしさを思い知らせる。


「クゥー、オラァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 トロールは怒りに身を任せた。

 渾身の威嚇(ハウリング)を放ったけれど、僕達は誰も怯まない。

 おまけに開いた胸も誘い出すための罠。全部見破ると、距離を取って応戦した。


「チョコマカト、ニゲルナ!」


 僕とエメラルの俊敏な動きに対応できていない。

 大振りの攻撃は、当たったら相当だろうけど、当たらなければ意味が無い。

 容易く避け、攻撃を軽く浴びせていく。

 深追いはせず、徹底的に追い詰めた。それだけの余裕が、僕達には有った。


「逃げるに決まっているよ。はっ!」

「そうよね。クロン、私達に魔法当てないでよね!」


 僕とエメラルが撹乱する中、クロンには魔法の用意をして貰う。

 できれば一発で仕留めたい。

 だから時間を掛けて貰ったけれど、集められた黒い魔力に背筋が凍る。

「……えっ?」

「えっ、じゃないわよ!」


 クロンはお構いなしだった。

 何やら魔法を放つ用意をしている。

 しかもかなり強力なものなのか、エメラルは心配して視線を預けた。


「スキヲミセタナ!」

「はっ?」


 エメラルの視線が逸れた。

 トロールはそれを見逃がさずに、片足と片腕に体重を乗せる。

 空気を切り裂く渾身のストレートを放ち、エメラルを襲う。


「エメラル!? くっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 僕は何とかカバーに入った。

 地面を蹴り上げ高く飛び、短剣を十字に組んで、トロールの拳を受け止めようとした。


 けれどダメだった。足りなかった。何がって言えば、体重だ。

 僕は圧倒的な体重の差を思い知らされると、不安定な体勢だったこともあり、後ろに吹き飛ばされる。


 もちろん受け身は取った。けれど背後には大きな木が立っていた。

 軽過ぎる体重が仇になって、僕は背中から思いっきり、木の幹に叩き付けられた。


「うっ……」

「「オボロ!?」」


 僕の体がグッタリなった。くの字に折れると、想定内だけど、ダメージを貰った。

 少しだけど、体が痙攣している。

 おまけに視界が歪んでいて、何だか頭がボーッとなる。


「よかった。エメラルは無事みたいで……」

「なんでわざわざカバーに入るのよ。私が気が付かない訳ないでしょ!」


 僕はエメラルに悪態を付かれた。

 有難迷惑だったみたいで、少しだけ凹む。

 せっかくやったことが無駄。それ以上に軽くあしらわれた。


「ドウダ。マズハヒトリダ!」


 トロールは威勢を取り戻した。僕、まだ死んでないのに。

 油断している所悪いけど、まだ立ち上がれる。

 筈なのに、視界が悪い。なんだかベットリトしていて、片目が赤に支配された。


「あれ?」


 それはまさしく鮮血の赤。

 如何やら少しだけ拳が掠ったみたいで、僕は額を怪我したらしい。

 そのせいで血がトクントクンと流れると、僕の視界を覆う。


「あっ、ああっ、あっ……あはは」


 心臓の鼓動が脈を上げる。

 唸り上げるような昂る感情。

 沸々と忘れていたものを思い出すと、体の痺れが取れるまで、僕は気の幹に背中を預けた。エメラルやクロンのことなんて、この一瞬には無い。僕は僕だけの世界に居た。

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