第33話 VSトロール
強敵の名前はトロール。
現れたのは巨大なトロール。
その傍らには、人間の遺体。
無残にもグチャグチャにされ、布切れが纏わり付いている程度で、もはや息絶えている。
生き返る様な望みが無くて、一般人が見たら、吐き気を催すかもしれない。
「ナンダ、マタニンゲンカ。エサガキタナ」
トロールの口元は血でベッタリと濡れていた。
それを長い紫色の下で舐め取る。
完全に食事の一環になっていて、僕達は眼前に構えた。
「貴方の仕業ね。ここ最近、ゴブリンやスライムが活発化している原因は」
エメラルはトロール相手に冷静だった。
間合いは絶対に間違えなくて、ましてや空気感も弁える。
それでいて単刀直入な問いかけをしたのは、この魔物、このトロールの個体は人間の言葉が分かるからだ。
「ソンナモノハシラン。ココハオレノナワバリダ」
トロールにとって、ここは自分の縄張り。
それならば頂点である自分が傍若無人な態度を取ってもいい。
それにより、どれだけの被害が出ているのか、人間の世間など、トロールにとっては空虚だ。
「それじゃあ、スカイプの仲間をやったのは……」
「カッコウノエサダッタナ。ヨワイニンゲンタチダッタ」
「弱い人間達……へぇ」
スカイプの仲間達は全員余すことなく死んでいる。
スカイプの言葉、目の前のトロールの言葉。
それらが交差すると、嫌でも痛感した。同時に、それを聞いても何も思わない冒険者の心も。
「それで欲望のままに殺して食べたって訳?」
僕は冷静だった。もちろんそんなの当り前の話だ。
人間だって同じことをしている。
生きるためには仕方が無いこと。まぁ、魔物は何も食べなくてもいいけれど、目の前のトロールにとっては、それが生命線というよりも生き甲斐なんだろう。腹立たしいというよりも、無情だった。
「ダッタラナンダ。オマエタチニンゲンモシテイルコトダ。モンクハ……」
「無いよ。だけど、裏を返せば僕達が殺してもいいってことだよね?」
僕は堂々と宣言した。
するとトロールはケタケタと笑い出す。
「チイサイニンゲンガフゼイニナニガデキル!」
トロールは完全に僕達のことを舐めていた。舐め腐っていた。
ケタケタと嫌な笑いを浮かべ続けている。
それを聞く度に、僕達の怒りが沸々と沸き上がった。
「小さなか……」
「ムカつくわね。本当のことだけど」
「魔物に言われたくない」
僕達はムカッとした。苛立ってしまうと、各々武器を取る。
だけど心だけは冷静だ。
殺す覚悟があるのなら、殺される覚悟もあるってこと。
それなら僕達が手を抜く必要は無かった。
「敵討ちって訳じゃないけど……」
「やるわよ。全力でね」
「うん。黒よ撃て、ブラックショット!」
僕とエメラルが覚悟を決めた。
地面を蹴ってトロール相手に迫る。
それを皮切りに、クロンは魔法を放った。
黒い球が渦巻き上がると、バラバラに拡散して、トロールに撃ち込まれる。
「ナァッ!?」
トロールは少しだけ驚いた。いや、かなり驚いている。
並の冒険者ではないと痛感すると、腕を×で組んだ。
クロンの弱めの魔法? に苦戦している。
「ナンダ、コノイリョクハ」
トロールは恐怖を感じている。ほんの少しの恐怖だ。
大量の黒い弾丸が撃ち込まれると、全てを受け止めることはできない。
全身に少しだけ切り傷ができると、体液が溢れ出た。
「油断してる暇ないよ」
「そうねっ!」
僕とエメラルも強襲した。
短剣を振り抜き、トロールの体を傷付ける。
エメラルも拳を繰り出し、パンチを叩き込んだ。
「グハッ!」
僕とエメラルの攻撃を受けたトロール。
一回目で懲りた筈なのに、二回目も受けた。
もしかしてM? そう思ったけど、違う。僕達の動きに対応できていないんだ。
「まだ。ブラックショット!」
「ゲホッ。ナ、ナンダ、コノイリョクハ……」
クロンは無詠唱で魔法をお見舞いする。
続けた二発目のブラックショット。
威力は敢えて弱めに設定しているみたいだけど、それはクロンなりの周りへの配慮だ。
それでもダメージにはなっていて、トロールは余裕が感じられなかった。
「まだだよ。それっ!」
「ウガッ! オマエタチ、コノアイダノヤツラトハケタチガイニ……」
そんなの当り前だ。って言うと、失礼だと思う。
だけど僕達はスカイプの仲間よりも強い。
そう思い込むと、トロールに冒険者の恐ろしさを思い知らせる。
「クゥー、オラァァァァァァァァァァァァァァァ!」
トロールは怒りに身を任せた。
渾身の威嚇を放ったけれど、僕達は誰も怯まない。
おまけに開いた胸も誘い出すための罠。全部見破ると、距離を取って応戦した。
「チョコマカト、ニゲルナ!」
僕とエメラルの俊敏な動きに対応できていない。
大振りの攻撃は、当たったら相当だろうけど、当たらなければ意味が無い。
容易く避け、攻撃を軽く浴びせていく。
深追いはせず、徹底的に追い詰めた。それだけの余裕が、僕達には有った。
「逃げるに決まっているよ。はっ!」
「そうよね。クロン、私達に魔法当てないでよね!」
僕とエメラルが撹乱する中、クロンには魔法の用意をして貰う。
できれば一発で仕留めたい。
だから時間を掛けて貰ったけれど、集められた黒い魔力に背筋が凍る。
「……えっ?」
「えっ、じゃないわよ!」
クロンはお構いなしだった。
何やら魔法を放つ用意をしている。
しかもかなり強力なものなのか、エメラルは心配して視線を預けた。
「スキヲミセタナ!」
「はっ?」
エメラルの視線が逸れた。
トロールはそれを見逃がさずに、片足と片腕に体重を乗せる。
空気を切り裂く渾身のストレートを放ち、エメラルを襲う。
「エメラル!? くっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕は何とかカバーに入った。
地面を蹴り上げ高く飛び、短剣を十字に組んで、トロールの拳を受け止めようとした。
けれどダメだった。足りなかった。何がって言えば、体重だ。
僕は圧倒的な体重の差を思い知らされると、不安定な体勢だったこともあり、後ろに吹き飛ばされる。
もちろん受け身は取った。けれど背後には大きな木が立っていた。
軽過ぎる体重が仇になって、僕は背中から思いっきり、木の幹に叩き付けられた。
「うっ……」
「「オボロ!?」」
僕の体がグッタリなった。くの字に折れると、想定内だけど、ダメージを貰った。
少しだけど、体が痙攣している。
おまけに視界が歪んでいて、何だか頭がボーッとなる。
「よかった。エメラルは無事みたいで……」
「なんでわざわざカバーに入るのよ。私が気が付かない訳ないでしょ!」
僕はエメラルに悪態を付かれた。
有難迷惑だったみたいで、少しだけ凹む。
せっかくやったことが無駄。それ以上に軽くあしらわれた。
「ドウダ。マズハヒトリダ!」
トロールは威勢を取り戻した。僕、まだ死んでないのに。
油断している所悪いけど、まだ立ち上がれる。
筈なのに、視界が悪い。なんだかベットリトしていて、片目が赤に支配された。
「あれ?」
それはまさしく鮮血の赤。
如何やら少しだけ拳が掠ったみたいで、僕は額を怪我したらしい。
そのせいで血がトクントクンと流れると、僕の視界を覆う。
「あっ、ああっ、あっ……あはは」
心臓の鼓動が脈を上げる。
唸り上げるような昂る感情。
沸々と忘れていたものを思い出すと、体の痺れが取れるまで、僕は気の幹に背中を預けた。エメラルやクロンのことなんて、この一瞬には無い。僕は僕だけの世界に居た。
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