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第3話 意外と普通な冒険者ギルド

主人公は小さい。

157センチの16歳。

小さいからこそ、小回りが効くのだ。

 王都の冒険者ギルドは、意外に静かだった。

 期待していたのは、たくさんの冒険者でごった返しになっている空間。

 しかしそれはそれで喧騒が広がるだけ。巻き込まれるのは流石にごめんで、僕はフードを被り直す。顔をシッカリと隠し、まずは受付カウンターに向かう。


「すみません」


 受付カウンターに並んだ。

 幸いなことに他に誰も並んで居ないので、すぐに受付嬢が対応してくれる。

 美しい金髪を頭の上で結い、翠色の瞳が覗き込んだ。


「ようこそ、王都ディスカベル冒険者ギルドへ」


 マニュアル通りの対応をしてくれた。

 何処の冒険者ギルドでも変わらない光景。

 特別な変化も無いので安心すると、僕は早速依頼の報告をする。


「本日はどのような御用件でしょうか?」

「遠方からの護衛依頼の報告と、アモルタ冒険者ギルドからの荷物をお届けに来たんですけど、構いませんか?」


 服の内側から取り出したのは二枚の紙と小さな袋が一つ。

 鞄の中から取り出して忍ばせていたもので、一つは先程サインをして貰ったもの。

 もう一つに関しては小さな袋とまとめておく。紐でキツく結ばれると、下手に紐を解こうとすれば大変なことになる仕掛けが施されている。


「畏まりました。確認のため、冒険者カードの提示をお願いします」

「はい」


 冒険者ギルドからの荷物を運んで来たんだ。普通に怪しまれて当然。

 そこで身分を確認するため、冒険者カードの提示を求められる。

 冒険者カードは冒険者であることを確認するための身分証のようなもの。

 不正登録をすれば特別な魔道具を使って一発でバレて、瞬時に検挙される。

 それくらい冒険者とは臆病で、慎重派。そうじゃないと、命がいくらあっても足りないんだ。


「Cランク……」

「はい、Cランクです」


 僕の今のランクはC。これは高くも無ければ低くもない。

 ちょうど中間くらいのランクなのだが、何かおかしな所でもあったのだろうか?

 受付嬢の反応が鈍くなり、僕の顔色を窺おうとするので、フードをギュッと被り直す。


「なにか問題でもありますか?」

「いえ、その様なことはございませんよ。では、少々お時間を頂けますか?」


 受付嬢は僕が顔を隠し、かつ言葉を詰めてしまったので、怪しく感じたらしい。

 けれど事情があるのだろうと速やかに自己完結。

 何事も無かったかのようにトレイに依頼書と袋を乗せ、冒険者カードを僕に返した。


「はい。よろしくお願いします」

「では、失礼致します。確認が済み次第お呼びしたいのですが、どちらか向かわれますか?」


 丁寧な対応をしてくれて助かった。

 正直、不審に思われたら如何しようかと思ってた。

 第一印象最悪だと、これからが辛い。僕の王都での冒険者活動が上手く行かなくなるかもしれないと思い、ビビりまくっていた。

 けれどそんな心配は杞憂だったみたいで安心すると、確認が終わるまで如何するか訊ねられる。


「いいえ、ここにいます。王都の冒険者ギルドは初めてなので、クエストボードでも眺めて待っていようと思います」


 冒険者は自由気まま。大抵の人が話を聞かないし、自分勝手だ。

 だから冒険者ギルドで働いている職員の人達は毎日ストレスが溜まる。

 特に依頼の報告と確認。その最中に居なくなられるとメチャクチャ大変らしいので、僕はできるだけ配慮した。


「そうですか。ではあちらにクエストボードが掲載されていますので、どうぞご自由に閲覧ください」

「ありがとうございます」


 僕の判断は正しかった。おかげで少しだけ好感度が上がる。

 ホッと胸を撫で下ろされると、僕もペコリとお辞儀をした。

 その瞬間フードが浮き上がると、また深く被り直す。


「……」

「あの、なにか変な所でもありますか?」


 何故か受付嬢の女性は僕のことをジッと見つめている。

 しかも見下ろされて(・・・・・・)いる。

 空気が重くなるのを感じると、たまらず声を出してしまった。


「あっ、いえ。王都で活動を希望される冒険者の方ですよね?」

「はい」

「ちなみにお一人でしょうか?」

「ソロですね。お一人で間違いないです」


 冒険者の多くは大抵ソロorパーティーを組む。

 僕は一時的なパーティーには加入したことがあるけれど、基本的にはソロだった。

 王都に来たのだってソロで、これからの冒険者活動も、できればパーティーを組んで楽しみたいけど、性格的にソロじゃないと無理そうだと分かっていた。


「そうですか……」

「あの、どうかしたんですか?」


 僕がソロであることを明かすと、何故か受付嬢は目線を逸らす。

 心配そうな顔を浮かべると、真剣な表情で僕にこう言った。


「いえ、王都では数多くの冒険者がひしめき合っています。ですので、くれぐれも問題は起こさないようにお気を付けくださいね」


 何処にでもある常套句。僕はそう受け取る。

 冒険者同士でのいざこざなんて日常茶飯事。

 それに巻き込まれて痛い目を見るのは、冒険者同士か、冒険者ギルド、その周りに居る無関係の人達。その時々で様々で、その事後処理をする冒険者ギルドにとって、目の上のたんこぶでしかなく、悩みの種であるのは間違いない。


「分かりました。できるだけ問題は起こさないように、速やかに解決(・・・・・・)します(・・・)ね」

「? そうですね。できれば、問題は起こされない方がいいです。というよりも……」

「ん?」


 そんな下手な真似をして、冒険者ギルドに目の敵にされても困る。

 評価は落としたくないので忠告を必死に聞き取る。

 僕はできるだけ穏便かつ速やかな解決を目指すことを決めると、受付嬢に善処すると誓った。


「巻き込まれないように注意してくださいね」


 受付嬢は腰を低くした。

 カウンターから上半身を出すと、僕の目線まで合わせる。

 完全に子供扱いされていて、正直いつものことだった。


「はい、そうなればいいんですけどね……」


 今までの冒険者活動で、上手く行った試しがない。

 何せ僕は平均身長に達していない。

 それよりずっと低くて、今年で十七歳になるのに未だ百五十八センチ。

 正直“チビ”って揶揄われるのは日常茶飯事で、ここでもそんな扱いを受けることになるとは、思いもよらなかった。

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