第28話 トロン森の調査ですか?
スカイプとかディスコードとはミートとか散々調べてた時かな?
僕達は冒険者ギルドに足を運んだ。
今日は待ち合わせをしていて、一緒に依頼を受けることにしていた。
「やっぱり朝早くに来ると、人の出入りも多いね」
冒険者にとって朝は大事。
何度も言うけれど、旨い依頼を受けられるか如何か。
もはや生命線で、冒険者ギルドは大変そうだ。
「やっぱり、朝は凄いわね。活気があるわ」
「エメラル。それにクロンも」
そこに現れたのはエメラルとクロン。
軽く挨拶を交わすと、賑わいを見せる王都の冒険者ギルドを見回す。
人混みは苦手なのか、クロンはムッとした顔をすると、エメラルの後ろに隠れた。
「受付嬢の人達大変そうだね」
「当り前よ。王都の冒険者ギルドは、この国トップ。他の街の比じゃないわ!」
エメラルの言い分は正しかった。
王都ディスカベルの冒険者ギルドは凄い。
この間とは、少し時間を変えてみたけれど、この有様だ。
「エメラル……」
「そうね。少し離れましょう」
エメラルはクロンを連れて一旦離れる。
僕もそれを受けて一度冒険者ギルドを出た。
人で溢れ返ったギルドの中は蒸し風呂で、活気と言うより地獄だったからだ。
「あれ? エメラルさん達はおられませんか?」
ふと聞き馴染みのある声。
受付嬢のネシアの声で、エメラルを呼んだ気がする。
もしかして指名依頼かな? と思ったけど、一旦聞き流した。
「困りましたね。引き受けて頂きたい依頼があったのですが……仕方が無いですね。他の冒険者の方に任せましょう。時間は惜しいですからね」
そんな会話が聞こえたような気がした。
けれど気のせいだと思って無視する。
僕はエメラルとクロンの後を追い、新鮮な空気を求めた。
「おっ、空いてるね」
少しだけ時間を空けた。
大体三十分くらいだった。
僕達は再び冒険者ギルドにやって来ると、今度は空いていた。
先程はもはや蒸し風呂。サウナと同じ状態。
足の踏み場もない……とかじゃないけれど、とにかく床面積が狭かった。
それからようやく解放されると、僕達は意気揚々とクエストボードに視線を預けた。
「まぁ、分かってたけど……」
「美味しい依頼は無い」
朝の内に、旨い依頼はほとんど狩り尽くされた後だった。
残っているのは、王都にしてみればしょぼい依頼ばかり。
僕達は残った依頼書を見ると、少しだけやる気が削がれた。
「なに落胆してるのよ。ここにある依頼は、誰かは必要としているものよ? 報酬は安いけど、信頼にはなるわ」
「そうは言ってもね」
「はいはい、黙ること。とりあえず、簡単な依頼にしましょ。今日はこれでいいわね?」
「どれでもいい」
もはやどれでも良かった。それだけ似たり寄ったりだった。
エメラルが手にしたのは、まだマシな依頼。
〔薬草の採取〕依頼だったので、世のため人のために直結する、気持ちのいい依頼だ。報酬は案の定だけど……まぁ、信頼になるなら、いずれ大きな依頼に繋がるかな。
「決まったわね。それじゃあ依頼書を提出して」
「おぅ、いたいた。エメラル!」
ふと背後から聞いたことのある声がした。
男性のもので、僕達は振り返る。
久しぶりに見た。呼び掛けたのはブレットだった。
「ブレット、久しぶり」
「よぉ、オボロ。元気そうだな」
「おかげさまでね。ブレットも調子はよさそうだけど……」
ブレットは相変らずだった。
冒険者ギルドで顔を合わせるのは久しぶり。
今日もネシアにナンパかな? その予感を、先にエメラルが確かめようとした。
「まさかブレット、またネシアにナンパを仕掛けたんじゃ」
「今日は違ぇよ。ネシアさんに頼まれたんだ」
「ネシアに? 一体なにをよ」
「お前達を探してたんだ。まぁ、一足遅かったみたいだけどな」
一体何が一歩遅かったのかな。
僕は気にしないけど、エメラルはブレットの発言に、少しだけイラッとした。
「なにが遅かったって言うのよ」
「それは俺達のことだな」
声を掛けて来たのはブレットとは違う男性。
こっちはパーティーを組んでいるらしい。
合計で五人。バランスの取れた構成で、男女共に揃っている。
声を掛けて来たのは、その中でもリーダー格の男性。
多分だけど二十歳くらい。少しパーマを当てた、青鼠色をした髪をしている。
盾役なのか、分厚い盾を装備していた。
「スカイプ」
如何やらエメラルの知り合いらしい。だからこそ、声を掛けたのだろうか?
他のパーティーメンバーも、エメラルとは顔見知りらしい。
丁寧にお辞儀をし、僕達も会釈するが、もちろん僕は知らない。
コッソリ、クロンに耳打ちすると、スカイプが何者か訊ねた。
「スカイプって?」
「王都で活躍している冒険者」
「強いの?」
「Bランク」
僕よりも上のランクの冒険者だった。
それは確かに強そうだ。
全身から放たれる気配から察すると、実力も揃えている。
「クロンと……君は?」
「僕はオボロ。エメラルとクロンに混ぜて貰ってるんだ」
「パーティーメンバーか。つまりオボロも〈《眩き宝石》〉のメンバー……」
「じゃないわよ。ただの野良冒険者。ちょっとヤバそうだから、私達がパーティーを組んでるの」
よく勘違いされるけど、僕はエメラルとクロン組んでいるだけ。
別に同じギルドに所属していない。だからこそ、変に思われるのだ。
当然スカイプもその内の一人で、違和感に思う。
けれどエメラルの物騒で含みの有ることを受け、何かを悟る。
何故かスカイプは警戒し、エメラルの顔色を窺う。
するとエメラルの表情からスカイプは納得すると、フッと息を整える。
「どっちの意味かは訊かないことにするぞ。それより、エメラル達の代わりに依頼は受けたからな」
「依頼ってなによ?」
「トロン森の調査依頼だ。エメラル達がいなかったから、代わりに俺達に白羽の矢が立ったんだ」
トロン森の調査。確かこの間、スライム大量発生の調査の際、一応後でネシアに伝えていた場所だ。
あの場所がやっぱり怪しいのだろうか? 調査ってことは、まだ分からないんだろうけど、まさか本当に調査依頼が組まれるなんて。
僕は些か不審に思う中、それをエメラルの代わりに引き受けたスカイプ達の腹の深さを見た。
「そうなのね。スカイプ達が……」
「不服か?」
「いいえ、スカイプ達なら大丈夫でしょ。気を付けなさいよ」
エメラルはポツポツ呟く。
スカイプ達に依頼を取られたことを不服に想っているのかな?
そんな風に思うけど、エメラルの器は小さくなかった。
エメラルは自分への依頼をスカイプ達に任せた。
それは相当実力があることを示している。信頼の証拠だ。
僕はクロンの言葉を真に受けると、スカイプ達の実力を推し量った。
「分かってる。じゃあね、ヒーローさん」
「ちょっと、その呼び方止めてくれる?」
「あはは、悪かったよ」
そう言うと、スカイプ達は冒険者ギルドを後にする。
何だか愉快な人達だ。僕はそう思うと、少しだけ嫌な予感がした。
油断はしていない。けれど、妙な胸騒ぎがする。
「クソッ。スカイプ達ばかり良い思いしやがって」
「そんなこと言ってる前に、手柄を上げればいいじゃない、ブレット」
「言われなくても俺も冒険に行くぞ。じゃあな、エメラル」
「はいはい、心配しないけど、気を付けてね」
ブレットはそんなスカイプ達を羨ましそうに見ていた。
それに対して辛辣な言葉を浴びせるエメラルだが、完全に激励だ。
ブレットも挑発だとは思っていないのか、早速冒険に出かけた。
エメラルもキツく当たるけど、冒険者とのコミュニケーションが上手い。
僕はそう思うと、受付カウンターに向かった。
「それじゃあ僕達も依頼を受けよっか」
「そうね。ネシアにも色々訊きたいわ」
そう言うと、僕達は受付カウンターに向かう。
丁度ネシアの姿があり、手が空いていた。
「ネシア!」
エメラルは真っ先に声を掛けた。
ネシアはパッと気が付き、顔を向ける。
「あっ、エメラルさん。皆さん。おはようございます」
「おはよう。エメラル、少しいいかしら?」
軽く挨拶を交わすと、早速本題に入る。
エメラルは気になっていたことがあった。
もちろん、スカイプ達への依頼のことだ。
「さっきスカイプ達から訊いたんだけど、トロン森の調査依頼を任せたみたいね」
単刀直入に訊ねた。
もちろんネシアは秘密にすることだってできる。
守秘義務って奴だけど、当の本人達から聞かされた以上、それでもできないし無駄だ。
「はい。本当はエメラルさん達に任せたかったのですが、その時間帯、冒険者ギルドには不在だったみたいでしたので、代わりに」
本当は“エメラル”にではなく、“エメラル達”に頼む予定だったらしい。
つまり僕やクロンも巻き込まれている。
けれどその時間帯。多分、さっき冒険者ギルドを後にしたタイミングだ。
その時間帯に居なかったので、スカイプ達に任せたらしい。
「少し待ってくれればよかったのに」
「いえ、エメラルさん達にも事情があると思いましたので。冒険者ギルドが束縛してもいけません。それに、スカイプさん達でしたら、きっと無事に果たしてきてくださる筈ですから」
エメラル曰く、少し待ってくれればよかった。
けれど冒険者ギルドも立て込んでいる。
時間も無ければ早急な調査だ。エメラル達(僕含む)を束縛し過ぎても人権問題になると思い、色々と配慮してくれたらしい。何よりも、調査依頼は痛い目を見ている。
「そうね。少なくとも私達よりはよくやるわ」
痛いくらいに分かった。ましてや理解させられた。
僕達は一回調査依頼を適当に投げ出している。
それを鑑みれば、スカイプ達を当てがったのは適切かもしれない。
「そんなことありませんよ。これもエメラルさん達の調査の賜物です」
「煽てなくてもいいわ。そう、スカイプ達に……」
ネシアは必死に弁解するけど、逆に心苦しい。
しかしスカイプ達に任せたのは、少しだけ心苦しいのか、エメラルはトボトボ呟く。
「エメラルはやっぱり心配?」
「いいえ、心配はしないわ。私達は私達のできることをするわよ」
エメラルは感情を押し殺した。
本当は少しだけ思っている筈が、自分を律する。
冒険者にとって、目の前のことを全うする。それが最善だと信じる。
「ってことでネシア、私達も依頼を受けるわね」
「はい。受理させていただきますね」
僕達は調査依頼ではなく、普通の薬草採取の依頼を受けることにした。
ネシアも笑顔で受理してくれると、冒険者ギルドを後にする。
スカイプ達に負けてられない。そんな思いがあるのか、少しだけ足早だった。
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