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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー4:食らう妖精、狂う少年

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第27話 トロン森の支配者

今回は別Part。

 オボロ達が怪しんでいた森、トロン森。

 普段から数多くの魔物が生息しているこの森は、それなりにいい塩梅の魔物達の関係値により、平穏が築かれていた。


 けれどそんな平穏に、陰りが見えた。

 何処からともなく、その魔物は現れてしまった。

 否、生まれてしまったのだ。


「ギャッ!」

「「ギャギャッ!!」


 ゴブリン達は互いに独自言語を使い、コミュニケーションを取っていた。

 これもゴブリン達の間では普通のこと。

 少しだけ知能の高い個体が生まれたから、こうして言葉でのコミュニケーションが可能になっているのだろう。


「ギャーギャギャッ!」


 しかしいつもとは少し様子が違っていた。

 何やら慌ただしい様子で、言葉にメリハリがある。

 焦っているのか、何なのか、とても冷静ではいられなかった。


「ギャッギャ。ギャーギャッ!」

「ギャギャッ!?」

「ギャンギャ!」


 魔物の言葉は難しい。言語体系が違うからだ。

 けれど何かに怯えている節が見える。

 何となくそう感じると、ドスン! とけたたましい音が炸裂。

 ゴブリン達は身を寄せ合うと、恐怖で震えてしまった。一体何があるのだろうか、何が起きているのだろうか? それはトロン森に生息している魔物にしか伝わらない。



 ところ変わってスライム達の様子を見てみた。

 青色をしたゼリー質の物体が蠢いている。

 ごくごく一般的。この夜で最も有名(ポピュラー)な魔物、それがスライム。

 特にこの青色をした種が、一番知られているだろう。


「プキュッ?」


 もはや鳴き声なのかも怪しい。そんな音が、スライムの中から聞こえた。

 会話なのかは分からない。ただ唸っているだけかもしれない。

 それでもスライムが何かを感じ取った……かさえ、分からなかった。


「キュキュ」


 そこに赤色をしたスライムがやって来た。

 ちょっとだけ元気がいいのか、活発な個体だ。

 別に色が如何とかではない。スライム達にとっては、関係のない話だ。


「プキュ?」

「キキキュ!」

「プーキュ?」

「キュキュキュ!」


 皿を洗っているようなリズミカルな会話が繰り広げられていた。

 もちろん、ほとんどの存在にその会話様式(パターン)を解読することはできない。

 もはや音の共鳴。そのレベルのやり取りで、スライム達は危機を知らせ合った。


「キュンキュルプー!」


 そこに更に元気な個体が現れる。

 黄色のスライムが元気よく薮の中から飛び出す。

 ピカピカしていて一番目立つ。そんなスライムはポヨンと跳ねた。


「キュンキュルキュンキュル!」


 慌ただしい様子だ。それだけは伝わる。

 けれど何に慌てているのか、詳しくは分からない。

 仲間であるスライム達もポカンとし、無い筈の首を傾げると、目をパチパチさせた。


「キュンキュルキュキュンプ!」

「「プーキュ!?」キュンキュン!!」


 事態を察知したスライム達は混乱する。

 ジタバタと飛び跳ね続けると、薮の中へと逃げる。

 このままではいけないと悟ったのか。急いでトロン森を後にしようとし、その場から居なくなってしまった。



 ドスンドスンドスン!


 もの凄い轟音が響き渡った。

 一体何が起きているのか。

 それはトロン森の中心部での出来事だった。


 そこには木が密集している。

 全部丸々としていて、かなり分厚い。

 タダでは薙ぎ倒されないような木々が生い茂る中、そんな木々を次々丸太にする生物が居た。


「ハラガヘッタ」


 たどたどしい口調。しかも人間の言葉。

 慣れないせいか、上手く喋れてはいない。

 それでも人間の言葉を模倣すると、その生物は、人間ではなく魔物だと分かる。


「ハラガ……ヘッタ!」


 魔物は唸り声を上げた。

 そのままの勢いで木々を薙ぎ倒すと、暴れ回っている。

 完全に手が付けられない状態になっており、極めて危険だった。


「クッ……ゴブリンダト、タリナイ。モット、モットダ!」


 傍らにはゴブリンの死体が落ちていた。

 体がバラバラにされていて、噛み千切られた痕がある。

 酷い有様で、大型の魔物に食べられたのだ。

 シッカリと歯型が残り、赤い体液(血液)で汚れている。


「ギャッ!」

「(バキッ!) モット、ウマイ、ニクヲ」


 捕まっていたゴブリンは、頭から齧り付かれた。

 一瞬で絶命すると、魔物は悪態を付く。

 魔物が魔物を食う。これも魔物の世界だと常識だったが、一つだけ歪なことがあった。


 魔物は何も食べなくても生きていける。


 その絶対から逸脱していたのは、目の前の魔物が、食肉に飢えているから。

 もっと強くなるために、成長を促すために、他の弱い生物を食らう。

 魔物の成長進化と言う本能で、灰青色をした魔物は、それを理解しているのか、いないのか、分からないけれど、とにかく飢えていた。


「モットダ、モットモットモット!」


 魔物は唸り声を上げていた。

 生贄を差し出さなければ止まることは無いのだろうか?

 否、そんなものがいくらあっても足りることは無い。

 圧倒的な食欲と本能に、魔物は従っているだけだった。


「ギャギャッ!?」

「ウガッ!?」


 近くの藪が動いた。

 その音に……否、気配に勘付いた。

 グルンと振り返ると、殺気漂う視線を飛ばした。


「オレノテリトリーニハイルナ!」


 魔物は振り返った。

 その先には運悪く立ち入ってしまった憐れなゴブリン。

 圧倒的な筐体を前にして、身動きが取れなくなった。


「ギャムァッ!」


 ゴブリンは運が悪かった。

 魔物の拳によって頭蓋骨を粉砕させられた。

 一瞬で息絶えると、魔物は更に口に運ぶ。


「マズイ。マダダ、マダ、タリナイ!」


 魔物は苛立っていた。

 牙をガミガミさせると、地面を叩いた。

 もっと上質な肉が欲しい。そう思っているのか、魔物さえ分かっていない。


「オレハオレハ……アアアアアアアアアアアアアアア!」


 魔物は何故か一度発狂した。

 すると冷静な思考を持ち、心が落ち着く。

 サイコパスみが醸し出されると、魔物は動きを止めた。

 何故かピタリと止まると、近くに転がるゴブリンの死体を弄んだ。


「オレノジャマヲダレモサセルカ」


 魔物にだっていきり理由があった。

 そのためには生物を食うことさえある。

 けれどそんなもの、単なる過程でしかない。


 それもその筈、この魔物には意味が無い。

 自分の快楽を発散するためだけだった。

 方法も、あまりにも狂っていたのだ。


 ただこの魔物は自分に領域(テリトリー)に入って来た全てを食らう。

 その圧倒的な気配察知能力を武器にしている。

 相当強い個体なのか、一瞬にして、トロン森の生態系の頂点に位置していた。


 これが全ての元凶だった。

 全ての始まりだった。

 王都ディスカベル一体で起こる、魔物の異常行動。

 その事実に冒険者達はようやく気が付くと、後日調査に向かうのだった。

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