表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー3:スライムと黒魔導士

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/39

第26話 調査したけど分からないまま

結局分かんないのかよ!

 ドン! ドドッ!! ドンゴトン!!!


 僕達は受付カウンターに、持ち帰った大量の瓶を置いた。

 流石に二百本以上の瓶を置くと、とんでもない量になるし、音になる。

 中に入っているのは全てスライムの体液で、僕達が、せっせと集めて回ったものだった。


「す、凄い数ですね……」


 ネシアは唾を飲んだ。

 ドン引きしてしまっていて、言葉が上手く出てこない。

 けれど何か言わなければと、絞り出した言葉を口にする。


「これでも、取り切れなかったのよ?」

「そんなにですか!?」

「ええ。想定外でしょ?」


 エメラルが言う通りだった。

 正直、ボサボ草原には、まだ大量のスライムの死骸が転がっている。

 全部取り切りたかったけど、正直惜しい。想定外の事態に、僕達でさえ言葉を飲んだ。


「は、はい……まさか、こんなにたくさんのスライムが発生していたなんて」

「一体なにがあったのかしらね?」


 ネシアは言葉を失ってしまった。

 大量に運び込まれたスライムの体液入りの瓶に、目を奪われてしまう。

 一体どれだけのスライムが大量発生していたのか、ネシアは僕達に訊ねた。

 だけどそれは僕達だって知りたいくらいだ。


「えっ? それを調べて来てくださった訳では、ないのですか?」


 ネシアは最もなことを言った。そう言う依頼だった。

 だけど結局僕達も分からないままだ。

 痛い所を突かれると、何も言い返せない。


「そうよね。同意見よ」


 エメラルはもはや呆れる程開き直っていた。

 だけどそれしか言いようがない。

 ネシアもエメラルの顔色を窺うと、マジマジと見つめ、状況の重さを理解する。


「なるほど。エメラルさんがそこまで苦戦するなんて……」

「ちょっと、ネシア。私を指標にしないでくれる?」


 エメラルは完全に顔役になっていた。

 しかも、自分の意思とは関係無しだ。

 もはやエメラルが意図していない段階(レベル)にまで発展すると、ネシアは冒険者ギルドの職員としての顔を出す。


「エメラルさん、ありがとうございました」

「なにがありがとうなのよ?」

「いえ。無事に調査をして来てくださりありがとうございました」


 何故か頭を下げるネシア。

 冒険者ギルドで働く受付嬢として、僕達に丁寧にお礼を言った。

 だけど僕達がそれを受け取るのはちょっと違う。

 だって、何もしていないんだから。


「ちょっ、はっ? なに言ってるのよ、ネシア。私達は……ねぇ?」

「調査してないんだけど」

「いえ。調査は無事に終了しています。おかげで、方針が定まったと思いますので、エメラルさん、皆さん。ありがとうございました」


 僕達はお互いに目と目で会話をした。

 誰一人として、満足の行く調査が出来たとは思っていない。


 だけどネシアは決して譲らない。

 何を以って、無事に調査が終了したのか、何が起因して、方針が決まったのか。

 正直頭の中が混乱すると、顔色が歪んでしまった。


「ええっ、ちょっと待ってよ。はぁ?」

「それでは皆さん。こちらが報酬になります」


 ネシアは予め用意していたのか、ちょっと良い袋を差し出した。

 中には金貨に銀貨。結構な額が入っている。

 きっとエメラルが依頼を受理したから、ほんの少しだけ+して貰ったんだ。


「こんなに貰っていいの? スライムなのに?」

「はい」

「調査も中途半端なのに?」

「寧ろ、できてないんだけどね」


 自分で言っておいて虚しくなる。おまけに悲しくなる。

 結局何も出来ていない。何も果たせてない。

 それなのに報酬だけ貰うなんて……エメラルは苦い顔をする。


「流石に貰え……」

「「貰っておく」おこうよ」


 僕とクロンは同タイミングで手を出した。

 エメラルは報酬の入った袋を返そうとする。

 そんなバカなことしちゃダメ。寧ろラッキーだって思ったくらいはお互いのためだ。


「ちょっとなにするのよ」

「なにするのよじゃないよ、エメラル。ここは受け取っておこう」

「はぁ?」


 エメラルが何処までも真面目だった。だけどそれが行き過ぎている。

 正直説明が面倒になるけど、色々と守った方がいい。

 僕は一言だけ、エメラルに詰めた。


「エメラル、みんなのために受け取ること。いいね」

「うっ……分かったわよ」

「キッチリ、三等分ね」

「な、なんでそんなに詰めるのよ。分からないんだけど」


 僕はエメラルを全力で詰め切った。

 流石に僕の目が爛々としていて怖かったみたい。

 言葉を詰まらせると、エメラルは仕方が無さそうに首を振った。


「ふぅ。よかった」

「助かった」


 ここで報酬を受け取らなかったら、僕達の取り分も無かった。

 それは、エメラルはたくさんの金を持っていると思う。

 だけど僕もクロンも、エメラルじゃないんだから、一緒にしないで欲しい。


 もちろん、それだけじゃないのは確かだ。

 エメラルは〈《眩き宝石》〉の副ギルドマスター。

 ここでのエメラルの行動は、所属しているギルド全体に影響を与える。

 何よりも、冒険者ギルド自体の待遇や対応に傷を付ける可能性があった。

 だから僕達は前以って行動して、エメラルの軽率な判断を阻んだんだ。

 

「それじゃあ受け取っておくわね」

「はい。よろしくお願いします」

「なにがお願いしますかは分からないんだけど……」


 エメラルは眉根をピクピクさせた。

 受取るのが忍びないらしい。

 だけど僕達はエメラルが袋を受け取ると、何とか右手を後ろに下げさせた。

 これで返せない。返さないと印象付ける。


「それじゃあ私達は行くわね。調査、中途半端でごめんなさい」


 エメラルは踵を返した。

 僕達は冒険者ギルドを後にする。

 大量のスライムの体液入りの瓶は置いて行き、幾つかはクロンが回収。

 買取金額は後日ってことにして貰う。


「あの、皆さん!」

「「「ん?」」」


 突然ネシアは立ち上がった。

 ドン! と焦ったような態度で音を立てる。

 僕達の背中に手を伸ばすと、何故か帰っちゃいけない感じだ。


「どうしたのよ、ネシア」

「なにかあったの?」


 突然ネシアは僕達を呼び留めた。

 だけど言葉が上手く出ないのか、下を見て俯いてしまう。

 僕とエメラルが声を掛けると、何とか言葉を絞り出す。


「もし、なにかあれば、お願いできますか?」

「「「はっ?」」」


 僕達はネシアの真剣そのものの言葉にポカンとする。

 クスッと笑ってしまうそうになると、面を喰らう。


「状況次第ね」

「そうだね。どんな状況かにもよるけど」

「まあ、そんなことにならない方がいいけど……」


 そんなの状況次第に決まっている。

 僕達だって、身の安全は確保しないといけない。

 無茶と無謀を履き違えたら、命なんて簡単に失うんだ。


 だけどここで大事なのは、それを実行できるか。

 エメラルは言葉を止め、唇に指を当て、空気を抜いた。

 神妙な雰囲気が立ち込める中、にこやかな笑みを浮かべる。

 ネシアの不安を、簡単に吹き飛ばした。


「できることならね」

「あ、ありがとうございます」


 何故か大袈裟な態度を取るネシア。

 経験則からして嫌な予感がする。

 だけどここでは何も分からない。きっと後で教えてくれるに違いないけど、面倒事はできれば避けたいと思いつつ、無理そうだと肌感で分かった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ