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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー3:スライムと黒魔導士

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第25話 スライムの調査は忘れてない

明らかな惨状。それでも調査は忘れない。

「ってことで、調査したいんだけど……」

「その前に、この惨状よ」


 クロンのおかげもあり、無事にボサボ草原に大量発生していたスライムの群れは、一掃することに成功した。

 だけど代わりにとんでもない落とし物をされてしまった。

 見ただけでも目を背けたくなる光景。もはやボサボ草原の跡形は無くなっていた。


「どうするのよ、クロン」

「ん?」

「んじゃないわよ。この光景、貴女が作ったのよ。ちゃんと理解しているのよね?」


 クロンに対して、エメラルは凄く怒っている。

 今にも手が出てしまいそうだけど、言葉で責め立てている。

 エメラル、さっきはちょっと殴ってたけど、反省したんだな。

 僕は横目で見ながらも、黒焦げになったボサボ草原の変わり果てた姿に絶句する。


「はぁ。どうしようかな?」


 正直、こうなった以上、こうなったとしか言えない。

 後でギルドに報告するとはいえ、しばらくボサボ草原には、誰も近付けない。

 もちろん、ダンジョンだって生きている。自然と時間が経てば、元通りに放ってくれる。

 けれどここまでの惨状を引き起こしたクロンの魔法。やっぱりとんでもなかった。


「クロン。どうやってこれだけの魔法を使えるようになったの?」

「気になる?」

「一応ね。僕も師匠に魔法については、一通り教えて貰ったけど。その才能が僕には無くて、活かしきれなかったから。ちょっと興味があるんだよ」


 僕は師匠に魔法の修行を付けて貰った。

 だけど僕自身には、あまり魔法の才能が無かった。

 風属性の魔法は得意だったけど、それ以外は“使える”ってだけで、実践には活かせないものばかりだった。


「それは……」

「はいはい、そんな話はまた今度でいいでしょ」


 エメラルがクロンの話に割って入った。

 せっかく会話の機会があったのに、それを平然と潰される。

 もちろん、エメラルにだって理由はある。ボサボ草原に散乱した、大量のスライムの体液を回収する必要があった。


「まずはスライムの体液を回収するわよ」

「うん。スライムの体液は、色々と使える」

「あっ、魔法の話……まあいっか」


 僕はエメラルに賛同した。

 クロンも空瓶を取り出すと、散らばっている、色とりどりのスライムの体液を集める。

 今日は昨日以上に、たくさんの空瓶を持って来たんだ。

 使わないのは勿体なくて、僕は魔法の鞄に手を突っ込んだ。


「回収頑張るぞ!」


 やる気を出すと、早速回収することにする。

 近くはクロンに任せることにして、僕は少し遠くへ。

 撒き散らされた大量のスライムの体液を、僕は空瓶に詰めた。

 正直品質が削れていて、売り物としては及第点だと思うけど、これだけ数があればそれなりにはなる筈だ。


「うわぁ、レッドスライム。カピカピに干上がってる」

「クロンの魔法の影響よ」

「クロンの?」


 僕は見つけたレッドスライムの体液を摘まんだ。

 カピカピに乾き切っていて、水分は抜けている。

 もはや干物も同然で、僕は空瓶に押し込んだ。


 そんな姿を見兼ねたエメラルがやって来る。

 こうなったのも、クロンの魔法が原因。

 親友であり相棒でもあるクロンの責任を、少なからずエメラルは背負っていた。


「そうよ。クロンは元々魔法使いの才能が有ったのよ。それを自己流で鍛えて鍛えて、今だと魔導書の執筆を依頼されるくらいになったのよ」

「元々あった才能を、更に際立たせて伸ばしたってこと?」

「そう言うことよ。それよりオボロ、どうしてこんなにスライムが大量発生したと思う?」


 クロンの魔法力の強さの原点。それは、元々才能があったから。

 それを自己流で鍛えていき、少しずつ強くした。

 つまりは努力を重ねていった結果で、クロンの底知れない魔法使いの才能を開花させたのだ。今では魔導書の執筆をするくらいなんて、僕とほとんど変わらない歳なのに、エグい。


 僕は感心すると、エメラルは話を切り替えた。

 スライムが大量発生した原因。調査することを、忘れていなかったらしい。


「忘れてなかったんだね」

「当り前よ。一応私の見解だけど、クロンと話してみたの」

「クロンと?」

「そうよ。ボサボ草原は、元々魔力の濃度が濃いから、大気中の魔素に影響を及ぼしちゃった。そのせいで、スライムが大量発生したって、考えているんだけど……どう思う?」


 エメラルの考えはベタだけど、全然悪くなかった。

 寧ろそれが一番可能性がありそうで、僕は首を縦に振る。

 同意見だと言いたいけれど、少しだけ引っ掛かる。

 それが原因だとすれば、普段からスライムが大量に発生している筈だ。


「僕も同じ事を思ったよ。でもね……」

「違うんでしょ?」

「そうだね。この間のゴブリンの一件と言い、今回のスライムの大量発生。なんだか繋がっている気がするんだ」


 同時期に、しかも数日おきに、これだけ魔物の動きが活発になるなんて普通じゃない。

 魔物相手に、人間の普通を問いただしても、伝わらないのは分かっている。

 だけど、あまりにも状況が似ている。どちらにも共通して言えるのは、魔物が突然(・・・・・)大量に現れた(・・・・・・)ことだろう。


「なにか原因がある筈だよ。ナパナパ森もボサボ草原も、この近くの筈だから」

「そうね。確かに一本の線で繋げるわ」


 ここボサボ草原と、ナパナパ森は、場所は離れている。

 だけどそれぞれにAとBの点を付けて、一本の直線の線で結ぶことができる。

 それくらいの関係で、僕は偶然とは思えなかった。


「ってことは尚更……ねぇ、エメラル。あの森はなに? ナパナパ森じゃないよね?」


 僕は作業の片手間、顔を上げた。

 視線の先に留まったのは森だが、ナパナパ森とは少し違う。

 だけどナパナパ森とボサボ草原。二つのダンジョンから、一本戦で結んだ間にあった。


「あの森? 確かトロン森じゃなかったかしら?」

「トロン森?」


 何だろう、そのやる気の感じられない名前。

 もはや適当に付けられたとしか思えないけれど、そんなことは如何でもいい。

 僕はあの森から嫌な感じがした。エメラルが気が付いていない筈ないけど、何かあるのかな?


「トロン森ね。最近、いい噂を聞かないのよ」

「いい噂を聞かないって?」

「トロン森の名前の由来は、トロールの棲む森なの。実際に、トロールが棲んでいる訳じゃないんだけどね」


 普通だった。メチャクチャ普通の名前だった。

 トロールと言う魔物の名前を単に短くしただけ。

 手抜き感は否めないけど、分かりやすさに全振りだった。


「トロールが生息しているの?」

「昔はそうだったらしいわ。でも、最近は聞かないわね」

「だけど、いい噂を聞かない?」


 色々と言葉が矛盾している。

 状況がサッパリ分からないけれど、エメラルも腕を組んだ。


「最近になって、森が騒がしいみたい。冒険者ギルドも、冒険者を派遣するか迷っているみたいなのよ。本当、なにが起きているんだか?」

「エメラルは知らないの?」

「知らないわよ。別に私は、王都で活動する冒険者の顔役って訳じゃないわ」


 そこは謙遜しなくてもいいのにと、僕は素直に思った。

 けれどエメラルが不介入ってことは、よっぽどなんだろう。

 冒険者ギルドも慎重に調査しているに違いなくて、僕みたいな新参者が、首を突っ込んでいい訳なかった。


「それより、スライムの体液は回収した?」

「うん。空瓶が全部なくなっちゃうくらいは」


 用意して来た空瓶は全部使い切っちゃった。

 だからもう体液の回収はできない。

 これ以上の収穫は得られそうになかった。


「そうなの。私の方も回収しきったわ」

「そっか。それじゃあ今日は帰るの?」

「それしか無いわね。クロン、貴女もいいわよね?」

「……うん」


 エメラルはクロンに呼び掛けた。

 たくさんのスライムの体液を集めている。

 エグい量で、僕は言葉を失うも、エメラルはリーダーシップを執った。


「それじゃあ帰るわよ」

「結局、スライムが大量発生した理由は分からなかったね」

「そうね。気掛かり以外は」

「だね」


 僕もエメラルもトロン森が怪しく思えて仕方が無い。

 だけどまだ根拠は何処にも落ちていない。

 確信が持てないのに、下手にいじっても状況を悪化させるだけ。

 ここは押し黙ることにし、僕達は王都に再び戻った。

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