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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー3:スライムと黒魔導士

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第24話 クロンの魔法は最強?

超攻撃的高火力魔法使い。

 僕達はクロンを連れて、改めてボサボ草原に向かった。

 昨日はスライムのあまりの多さに絶句した。

 それでも何とか数は減らした筈で、体液もかなり集めた。


「今日こそ終わらせないとね」

「当然よ。後、倒すなら素材も集めるわよ」

「いいお小遣いになるもんね」


 昨日の反省を活かし、空瓶をたくさん持ってきた。

 もう、十や二十じゃない。普通に百個は魔法の鞄に詰めて来た。


「お小遣い……研究費に使いたい」

「研究費?」

「クロンの趣味よ。それより、見えて来るわよ」


 相変わらずの山なりな地面。

 絶対に高原なんだけど、草原なんだよね?

 地名の名付けに諦めた僕は、鋭い風に吹かれながらも、ボサボ草原に辿り着いた。


「着いたわよ、さぁ、今日こそ」


 景気付けにエメラルが声を上げた。

 頭を押さえ、髪が乱れないように整える。

 クロンも魔女帽子をシッカリと押さえ込み、ボサボ草原の様子を見る。

 僕も二人の後に続くと、ボサボ草原の様子に唾を飲む。


「うわぁ……」

「なんか、増えてない?」


 僕とエメラルは絶句した。

 お互いに同じ事を思った。

 

 そう、“スライムが増えていた”。


 一体一夜にして何が起きたんだろう。

 信じられないけど、昨日僕とエメラルが倒した分のスライムは、既に復活してる。

 ボサボ草原の草が見えないくらいで、青に赤、黄色に緑。色とりどりのスライムがひしめき合っていた。


「信じられない……まさか、こんなことになるなんて」

「異常事態だね」

「……スライムだらけ」


 僕とエメラルは苦い表情を浮かべる。

 だけどクロンは少し違っていた。

 これだけの異常事態を目の当たりにして、真顔で対応する。

 ジト目は変わらず、基本無表情のダウナーボイスが響いた。


「随分と余裕そうね、クロン」

「余裕だから」

「余裕なんだ。その自信は、信用してもいいんだよね?」


 僕はまだ、クロンの実力を知らない。

 エメラルが相棒として据えていて、〈《眩き宝石》〉のメンバーでもある。

 相当の実力は保証されていて、ランクは訊いてないけど、きっとやってくれる筈だ。


「大丈夫。パーティー戦として、役割は果たす」


 エメラルとは違うカッコ良さがあった。

 凄いクールで、スマート。僕は手のひらを合わせると、早速クロンに任せることにした。


「それじゃあ任せてもいいかな?」

「分かった」


 クロンは呼び掛けに答えると、早速杖を掲げる。

 師匠に魔法を教え込まれたけど、クロンはどんな魔法を使うのかな?

 僕はあんまり才能が無かったけれど、人の魔法を見るのは楽しみでワクワクした。


「クロン、消し炭にしないでよね」

「……ダメ?」

「ダメに決まってるでしょ。分かったわね」

「……分かった」


 クロンは不満そうだった。エメラルに注意されて不服だったのかな?

 僕はエメラルとクロンの関係値が良好なのは分かる。

 だけど馴れ初めとかは知らないから、下手に介入できない。

 モヤモヤとしつつも受け入れると、クロンは魔力を搔き集めた。


「どんな魔法を使うのかな?」

「クロンは攻撃魔法が得意な、黒魔導士系よ。相当な威力になるわ」

「それは楽しみだね。……って、うあぁ!」


 急にエメラルが僕の腕を引っ張った。

 体勢を崩しそうになるけど、体幹で何とか耐える。

 軸を整え、転ばないようにすると、僕はエメラルに訊ねた。


「なんで腕を引っ張るの?」

「なんでもなにもないわ。クロンの魔法は威力が高いから、こんな近くにいると、衝撃で巻き込まれるわよ」

「……えっ?」


 エメラルの目が冗談じゃなかった。

 つまり本当ってことで、僕は息を飲む。

 言葉なんて、唾なんて生易しい。完全に殺気の目だった。


「それ本当? 配慮とかはないの?」

「してくれてるけど、二次的災害は無理でしょ」

「二次災害有り? ソレってどんな魔法で……」


 エメラルの説明で怖くなる。

 僕は全身に得体のしれない痺れが走った。

 師匠達との修行で身に付けた、僕への警告だった。


「ヤバッ、来るわよ!」


 エメラルに引っ張られ、僕達はボサボ草原を駆け降りる。

 もはや走ってない。傾斜を転がる。

 クロンの背中が見え、羽織ったローブが揺らめくと、杖の先端の魔法石に魔力が集まり、クロンの実力に付いて行けず、今にも割れてしまいそうだった。


()き尽くせ。ブラックバースト!」


 クロンは魔法を放った。

 掲げた杖に仕込まれた魔法石から、赤と黒の魔力が放出される。

 圧倒的な魔力量に僕の体が痙攣すると、ボサボ草原の、スライム達に向けて撃ち込まれた。


 真っ赤な炎が雄たけびを上げ、全てを飲み込む黒がバチバチと揺れる。

 気持ちの悪い悪魔の叫びを上げると、スライム達の体を覆い尽くした。


 もちろん見えてない。だけど想像できる。

 最悪の世界が一瞬だけ降臨すると、大量のスライム達が爆散する音が聞こえた。


 バァ―――――――――――――――ン!!!


 破壊音が地面を揺らした。巨大な煙をモクモクと上げ、柱の様に立つ。

 赤と黒の映える色彩(カラー)の煙で、鋭い風を起こす。

ボサボ草原の草が風と共に巻き上げられると、体液が頬に触れた。

触らなくても分かる。多分だけど、蒸発し損ねたスライムの体液が、体に付着したんだ。


「ううっ、最悪……」

「あはは、まさかこんな目に遭うなんて」


 僕もエメラルも苦悶の表情を浮かべた。

 別にスライムの体液が掛かったことに対して、苦悶の表情を浮かべた訳じゃない……なんて、丸いことは言わない。

 正直嫌だけど、それ以前の問題に僕達は立ち会う必要があった。


「うん、スッキリ」

「なにがスッキリよ!」


 コツン!


 クロンは一人清々しい顔をしていた。

 けれど草原を駆け上がり、急いで背後に立ったエメラルにコツンと頭を殴られた。

 痛そうにはしていないけど、クロンは不服そうだ。


「どうして殴るの?」

「どうしてもこうしてもないわよ。流石にやり過ぎ」

「やり過ぎ?」


 エメラルの言うことは正直分かる。

 クロンはハッキリ言って、やり過ぎている。

 僕もゆっくりボサボ草原の大地を靴の裏で確かめると、クロンの腕前って言うか、有り余る実力に堪えた。


「そうよ、やり過ぎ。オボロも分かるわよね?」

「うん。凄い威力だね、クロン」

「ありがとう」


 僕はまず初めに、クロンに褒めた。

 普通に嬉しかったのか、無表情だけど喜んでくれる。

 少しだけ口角が上がったのがその証拠だ。


「でもさ……」

「ん?」


 僕はボサボ草原へと視線を移す。

 言葉に迷ってしまうけど、やっぱり上手く出てこない。

 何を言ったら正解なのか、正直分からない。


「うわぁ……」

「これは、激しくやったわね……」

「ん?」


 僕もエメラルも同じ感想だった。

 あまりにも酷い、悲惨な光景。

 クロン本人は分かっていないみたいだけど、僕達は絶句して言葉を上手く出せない。


「まぁ、分かり切ってたけどね」


 もはやエメラルは達観していた。

 その境地に辿り着けるなんて、僕はそうも行かない。

 まさか師匠みたいな破壊力を誇る魔法を使える魔法使いが居たなんて。

 僕は眼下に浮かび上がる、黒煙に飲まれ、完全に消し飛んだ草原を見つめて笑えなかった。

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