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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー3:スライムと黒魔導士

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第23話 黒い魔法使いの少女

今思えば、あの人気映画のスピンオフ二作目は、どれくらいの評価なのかな?

「エメラル、少し遅くなるって言ってたよね?」


 僕は冒険者ギルドにやって来た。

 エメラルがクロンを連れて来てくれるらしい。

 凄腕の黒魔導士。所謂魔法使い。

 どんな子なのか気になるけど、朝早くに着過ぎたせいか、同業の冒険者の姿さえなかった。


「冒険者にとって、朝は一番大事なんだけどね」


 冒険者にとって、旨い依頼を取れるか取れないかは大きい。

 そのためにも、絶対に朝だけは大事なんだ。

 できるだけ早く冒険者ギルドに行き、旨い依頼をいち早く奪取(だっしゅ)する。

 それが新人冒険者の鉄則だった。まぁ、僕はCランクだから、そんなに急がなくてもいいんだけどね。


「とは言え……ん?」


 そんな中、僕は冒険者ギルドで気になる人影を見つけた。

 広間で立ち尽くしている冒険者の数が少ないから、絶対に目を惹く。

 立っていたのは少女。しかも小さい。多分僕やエメラルよりもさらに小さい。

黒い髪に、若干紫の入った黒い瞳。徹夜明けなのか、目の下には隈がある。

更に黒いローブに、黒いブーツ、黒い杖……全身黒尽くめの魔法使いだった。


「あれ、どう見ても魔法使いだよね?」


 百%魔法使い。誰が何と言っても魔法使い。

 もしかすると、錬金術師の可能性もあるけど、多分あの杖は魔法使い。

 僕は色々気になってしまうと、もしかして? と首を捻り、声を掛けることにした。


「ねぇ、ちょっといいかな?」


 僕は声を掛けてみた。少女は「ん?」と喉を鳴らす。

 僕のことを視界に収めると、ジト目を浮かべていた。

 別に不満があるとかじゃないみたいで、元々ジト目っぽい。


「貴方、誰?」

「ああ、そうだよね。突然話し掛けてごめんなさい」


 突然話し掛けたのは僕。

 警戒されるのは無理なくて、自然な流れで魔力が集まっていた。

 いつでも失神程度の魔法を放てるように隠れて準備すると、僕は警戒心を解くことに全力を注ぐ。


「僕はオボロ。最近王都の冒険者ギルドに来たんだよ」

「……オボロ?」

「そう、オボロ。君は?」


 僕は黒髪魔法使いに訊ねた。

 すると黒髪魔法使いは杖を床にトンと突く。

 音を立てると魔力が散り、如何やら警戒は解けたらしい。


「私はクロン。エメラルのパーティーメンバーで、〈《眩き宝石》〉に所属してる」

「えっ?」

「オボロの名前、エメラルから聞いてる。凄い盗賊らしいって、頼りにする。よろしく」


 何だろう。簡潔かつ雑な自己紹介が展開していた。

 まるで簡単な履歴書の様なやり取りだった。

 僕は呆気に取られると、瞬きをするしかなくなる。

 エメラル、マジで凄い冒険者何だなって、手早い行動に驚かされた。


「よろしくね。って、それだけ? エメラルは?」

「……エメラルは……あっ!」

「怒られるよ、それ。エメラル、真面目だから」


 エメラルは真面目だ。

 確か昨日、エメラルはクロンを迎えに行くって言っていた。

 だけど今僕の目の前にクロンが居る。つまり、エメラルを置いて来たってことだ。


「どうしよう?」

「うーん、結果で示すしかないかな?」

「結果。確か、スライム大量発生の調査?」

「そうだよ。よかった。クロンはエメラルみたいに戦闘(バトル)思考じゃなくて……」


 僕はホッと一息を付く。

 エメラルは真面目だけど、それが別方向に行くことがある。

 スライム大量発生の原因を調査する筈が、討伐する思考に汚染されていた。

 だからクロンにもその思考が伝染していないか心配だったけど、そんなバカなことは無いみたいで安心する。


「それじゃあ、スライムを倒せばいい?」

「なんでそうなるのかな? 調査にならないよね、それ?」

「ん?」


 全然分かっていなかった。

 同じ穴の貉って言うべきなのかな?


 多分だけど、エメラルの思考がクロンに移ったんじゃない。

 クロンの思考がエメラルに移ったんだ。

 僕は経験則で判断すると、肩を落としてしまった。


「オボロ?」

「うん、大丈夫。クロンはエメラルが認めるくらいの強者。それになにかあっても、エメラルなら踏み止まれる。そうだ、きっとその筈だ」


 僕は自問自答して、自分の中で落とし込んだ。

 クロンの性格はまだハッキリとはしていないけど、エメラルは真面目だ。

 例えスライムを討伐したとしても、結果オーライになる未来が見えた。

 どのみち数を減らさないことには、いつか被害も出る。きっとこれは、エメラルなりの未来への対策ってことにした。


「とりあえずできることはやる。怒られたくない」


 クロンはやる気を出してくれた。

 だけど顔色からは全く分からない。

 それでも僕は澄んだ顔を浮かべると、クロンを信じることにした。

 だって信じないと、冒険者のパーティーなんて、やっていられない。


「そっか。それじゃあよろしくね」

「よろしく」


 エメラルが来る前に僕とクロンは初対面を果たした。

 空気としては悪くない。本当にエメラルの言う通りだった。

 冒険者としては感情の起伏が少ない方がいい。まさしくそれを体現していて、僕とクロンの関係値も、エメラルのおかげもあり、上々かつ円滑に進んだ。


「それじゃあ後はエメラルが来るのを……」

「待つだけ。でも、怖い」

「怖い、どうして?」


 後はエメラルが来るのを待つだけだ。

 とは言えクロンは何故か怖がっている。

 表所が少しだけ震えると、何かあるのかと気になった。


 その時、急にバン! と冒険者ギルドの扉が開く。

 眩しい朝の陽射しが入ると、自然と視線を奪われた。

 立っている少女。背中の四尺刀が目印になる。


「えーっと、あっ、いたわね!」


 そこにやって来たのはエメラルだった。

 ここまで走って来たのか、汗を掻いている。

 もしかしなくても、クロンを捜していたに違いない。


「あっ、エメラル」

「おはよう、エメラル」

「おはようじゃないわよ、全くもう」


 ちょっと怒っていた。僕達が挨拶をしても返してくれない。

 ムッとした表情を浮かべると、クロンにガンを飛ばした。


「エメラル、走ったの? 汗、凄い」

「当り前よ。一体どれだけ貴女の家の前で待ってたと思ってるの?」

「……ごめん」


 クロンは肩を落として落ち込んだ。

 表情には出ないけど、態度には出る様子。

 僕は「まぁまぁ」と落ち着かせようとするけど。そんな空気じゃない。


「だいだいクロン、研究はいいのよね?」

「うん、それは終わってる」

「だったらもっと早く復帰しなさいよ」

「ごめん。今回はシッカリやる」

「今回だけじゃなくて、毎回シッカリチャントやってよね!」


 クロンの言葉を上手い具合に丸め込む。

 流石はエメラル。僕は圧巻だった。

 すると今度は僕に視線を飛ばしたエメラルは、「はっ」と息を吐く。


「とりあえず自己紹介は済んだみたいね」

「うん。エメラルが来るまでに済ませたよ」

「そっ。それじゃあ改めなくていいわね。クロン、こっちがオボロ。うちのギルドじゃないけど、なかなかやるわ。後、ちょっとヤバい殺気(・・・・・)を持ってる(・・・・・)。いざとなったら、魔法をぶっ放しなさい」


 とりあえずは簡単に自己紹介は済ませておいた。

 エメラルもそこまで読んでいたのか、改めて自己紹介はしない。

 時間を効率化させると、クロンに変なことを言い出す。僕のことを“ヤバい奴”認定すると、いざとなったら魔法を放てとか言ってた。止めて欲しいんだけど、冗談に聞こえない。


「怖いんだけど、止めてくれるかな?」

「分かった。ぶっ放す」

「その意気があればいいわ。それじゃあ行くわよ、二人共。今日こそ終わらせるんだから」


 クロンも了承しないで欲しかった。

 だけど僕なんかの話は耳に入ってない。

 むしろスルーされると、エメラルは景気付けた。それはいいんだけど、号令を合図に僕達は一応拳を突き上げた。


「全然その意気は要らないんだけどな……あはは」


 僕は笑うしかなかった。だけどエメラルの対応は正しい。

 改めて気を引き締め直すと、僕達は再度ボサボ草原に向かう。

 今日こそスライム大量発生の謎を暴くと決め、三人で冒険者ギルドを後にした。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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