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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー3:スライムと黒魔導士

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第20話 ボサボ草原

ボサボサヘアーの草原。

 僕とエメラルは一般道を歩いていた。

 目指しているボサボ草原は、と帆でも行ける距離。

 王都からだと、大体十キロくらいだと思う。


「ボサボ草原か。行ったことないかも」


 ボサボ草原。行ったことがないダンジョンだった。

 草原ってことは、そこまで危険度は低い筈。

 僕は勝手に思い込むと、エメラルが相槌を打つ。


「そうなの? まぁ、ボサボ草原はF~E級の新米冒険者が行くような、簡単なダンジョンだものね」

「そうなんだ。だったら僕達は行かないかな」

「あんまりね。そうは言っても、定期的に誰かが行かないと、ダンジョンの魔力で魔物が生まれるんだけど」


 ボサボ草原はF~E級の冒険者御用達のダンジョン。つまり僕やエメラルには縁がない。

 新米の低級冒険者が行くようなダンジョンだと、そこまで稼げない。

 だから王都で活動している冒険者のほとんどは、ボサボ草原には行かないみたいだ。


 だけど、誰かが行かないと魔物が増える。

 定期的に生まれた魔物を狩らないと、そのせいで被害が出る。

 最初は小さなことでも、それが連鎖的に増えて、大きくなることがあるらしい。

 それもその筈、ダンジョンは単に土地の魔力が濃いから、大気中の魔素と化合しやすい。そのせいで、魔物がたくさん増えてしまうんだ。


「ダンジョンは生きてるもんね」

「そうよ。土地って言う生き物の上にいるもの。仕方が無いわ」


 ダンジョンが生きているのはそんな理由がある。

 土地自体が生き物なんだから、当たり前のこと。

 エメラルはそれに対して詩的なことを言うと、メチャクチャ心に刺さった。

 もう諦めるしかないんだから、割り切って生きていく。狂った世界なんだから仕方が無い。


「とは言っても、ボサボ草原でスライムの大量発生ね」

「エメラル?」

「おかしいのよ。ボサボ草原なんて、なんにもないんだから」


 エメラルにとって、ボサボ草原でスライムが大量発生するのは普通ではないことらしい。

 実際、スライムが大量発生することはある。だけど、危険はほとんどの場合でない。

 だからわざわざ調査依頼が出るようなことが異例だと、今更ながらに思う中、エメラルの意味不明な発言に、僕は口を挟む。


「なんにもない?」

「そうよ。ボサボ草原は、スライムすら生まれないような、安全なダンジョンなんだから」


 エメラルはとんでもない情報を口にした。

 ボサボ草原はスライムさえ生まれないような、超安全なダンジョンらしい。

 つまり、低級冒険者も行かない。だって危険がないから。……僕は遠い目をする。

 それははたしてダンジョンなのかな? 僕はつい口にしていた。


「それ、ダンジョンって言うのかな?」


 僕はボソッと呟いた。

 するとエメラルは肘を入れて来る。

 ズン! と脇腹に突き刺さると、僕は「うっ」と声を漏らした。


「オボロ、口には気を付けなさい」

「でも事実で」

「ふん!」


 もう一回肘が飛んで来る。

 流石に今度のは分かっていたから僕でも避け切れた。


「なにするの、エメラル?」

「いい、オボロ。この世界はね、みんななんとなーくで回ってることも結構あるの。だからなにも無くても、魔力が多くて魔素の純度が濃ければそこはダンジョンなの。分かったわね?」

「う、うん。知ってるよ、今更言われなくても」


 今更言われなくてもそんなこと、冒険者の間では常識だ。

 みんなおかしいなっておもうことを、適当になぁなぁな感じで受け止めている。

 それで上手く行くことだって多い。だから僕もこれ以上は言わないけど、一応のお約束だ。


「なによ。分かってるなら、私にツッコませないでよ!」

「いや、エメラルはツッコミでしょ?」

「一体いつからそんな役回りになったのよ。もう!」


 いやいやいやいや、エメラルは根っからのツッコミだ。

 真面目な性格で、困っている人を放っておけない。

 純粋な正義の味方がボケ何てまずあり得ない……とか言ったら怒られそうだけど、エメラルに限った話だと、絶対にツッコミ。それだけは譲れなかった。


「はぁ。まぁいいわよ、私ボケるの嫌いだから」

「やっぱりだったー!」


 何だか嬉しくなる。僕の読みは当たっていた。

 エメラルは自分がツッコミ担当だと受け入れた。

 その拍子、ふと正面を見たエメラルが背筋を伸ばす。


「見えて来たわよ」

「ん?」

「アレがボサボ草原よ」


 エメラルが指をさす。指先を追い掛けると、緑色の丸い大地があった。

 そこまで長くはさそうな草が生えていて、他に高い木も綺麗な花も咲いていない。

 遠目から見たら、ダンジョンかさえ怪しい。


「えっと、高原じゃないかな?」

「失礼ね。アレは立派な草原よ。私達の目的地、ボサボ草原」


 僕は高原だと思った。だって小高いから。

 だけどエメラルは僕を叱咤した。

 如何やらこの小高い高原こそ、目的地、ボサボ草原らしい。……何処がって話だ。


「どう見てもアフロヘアにしか見えないんだけど?」


 目の前に現れた大地。少しだけ一般道に角度が付き、斜面ができ上がっている。

 それはこの大地の性で、何故か大きく盛り上がっている。

 形状が完全にアフロヘアで、僕は眉間に皺を寄せる。

 だって如何考えても、如何思い直しても、ボサボサヘアじゃなくてアフロヘアだから。


「あー、初見さんはそう言うこと言うのよね」

「つまり違うってこと?」

「だからそう言ってるじゃない。それに、アフロ高原ってダンジョンが他にあるんだから、間違えちゃダメよ」


 エメラルは僕のミスを指摘した。もしかしなくても、みんな間違えるミスだった。

 いや、逆にどう見てもアフロヘアにしか見えない。

 それだけこんもりしている大地が目の前に現れるけど、エメラルは否定した。


 ボサボ草原をアフロって間違えたらダメ。

 それを聞いて、僕も流石に思い出した。

 アフロ高原って名前のダンジョンがあることを。


「そう言えば、昔教えて貰った気が……」

「ってことで、着いたわよ。ここがボサボ草原、問題のダンジョンよ」


 昔師匠達に教えて貰った気がする。

 この世界には面白い名前の地名がたくさんあるって。

 中でも髪型が由来の地名は多くて、ダンジョンじゃないけど、例えばリーゼン島やパンチパーマ牧草地、ボウズ海、思い出しただけで頭がおかしくなる。


 そんなこんなで僕とエメラルはやって来た。

 如何見てもアフロヘアな草原、ボサボ草原に。

 何処がボサボサしているのか、全然分からないけれど、とりあえずやって来た。

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