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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー2:ゴブリンの群れ

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第16話 VSホブゴブリン

上位種であれ、あっという間です。

「ギャゥ!」

「ギャギャァッ!」

「ギャギャァッギャ!」


 ゴブリンが次から次へとやって来る。

 奇声を上げていて正直鬱陶しい。

 しかも連携ができていなくて、もう倒してくださいって言ってるようなものだった。


「もう、何匹来るのよ」

「そうだね。報告と全然違う」


 全然報告と違っていた。

 確か十~十五匹って話だった。

 だけど僕達の前には既に三十近いゴブリンが襲って来ていて、その全てを露払い程度で叩きのめした。


「これで最後よ!」


 エメラルは残った一匹を倒した。

 やっぱり四尺刀は抜かない。

 拳で叩きのめすと、ゴブリンは死んでしまう。


「ギャウギャウギャァァァァァ!」


 断末魔のように、ゴブリンは叫んだ。

 その声が譫言のようで、僕は嫌な予感がする。

 何かゾワッとする感覚が、微かに残った。


「今のって?」

「まさか、まだ仲間呼んだの? はぁ、面倒な事するわね」


 ゴブリンはまたしても叫んだ。

 多分だけどまた仲間を呼んだんだ。

 流石にもう止めて欲しい。僕はそう思うけど、どのみち全部倒さないとダメだ。


「仕方ないよ。それに向こうから来てくれたら楽でしょ?」

「それもそうね。とっとと倒すわよ」


 僕もエメラルも別に疲れてはいない。

 だけどゴブリンは数が多いから面倒臭い。

 頬を掻くと、遠くからドスンドスン! と地面を踏み鳴らす音がした。


「「ん?」」


 僕とエメラルは顔を上げた。

 ちょっとだけビックリはした。

 だけどそれ以上に、予想がズバリと的中したから、冒険者の勘が鋭くなっていることに嬉しくなる。


「今のって、ゴブリンだよね?」

「そうね。けどこの気配……少しだけ、強めね」

「そうだね。ってことは、上位種?」


 魔物の中には上位種が存在している。

 大抵は通常の魔物が進化した姿。

 見た目は大体同じだけど、進化前の魔物よりも強かったりするのが普通だ。


「ゴブリンの上位種、ってことは」


 もうここまで来たら想像できる。

 ゴブリンが仲間を呼んだんだ。つまり、ゴブリンの上位種が来る。

 草木を掻き分け、地面を踏み鳴らし、少しだけ強めの気配を放つと、薮を超えて僕達の前に姿を現わしてくれる。


「ゴブラァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 薮の中奈から見えたのは、大きな魔物の影。

 僕とエメラルが迎え撃つと、その魔物は堂々としている。

 そこまで知能は上がっていないのか、特に作戦もなく、目の前に立つ。


「ホブゴブリン?」

「変ね。ホブゴブリンがいるのに、住処を追われるなんて」


 僕もエメラルも慣れ切っていた。

 目の前に現れたのは、ゴブリンの上位種の一つ。ホブゴブリンだ。


 体色がまず緑色じゃない。少し赤みが掛かっている。

 手には棍棒を持っていて、かなり物騒だ。

 明らかに普通のゴブリンとは違うんだけど、何よりも大きさに目を奪われる。


「やっぱり大きいね。三メートルくらい?」

「そうね。私たちはチビだから、余計に大きく見えるわ」


 確かに僕達は背が低いから、当然見上げるしかない。

 そのせいで、本来の大きさとはまた違った迫力になる。

 普通の冒険者よりもずっと得体のしれない影の恐怖に怯えると、身が竦んでしまいそうに……はならなかった。


「まあ、関係無いわね」

「そうだね。倒せばいいんだから」


 ホブゴブリンなんて、C級が苦戦するような魔物じゃない。

 せめてD級が定石で、僕達の相手にはならない。

 まぁ、エメラルのランクは知らないんだけど。


「ちなみにエメラルって、何級だっけ?」

「今更訊くの?」

「うん。今更だよ」


 絶対に今じゃないタイミングだった。

 だけど如何しても気になったから、改めて訊ねておく。

 すると面倒そうにしつつも、エメラルは真面目。ちゃんと答えてくれた。


「Bよ。私のランクはB級」

「B級!? エメラルの実力で!?」


 僕は声を上げてしまった。

 しかしエメラルは唇を尖らせる。

 もしかして不満だったのかな? 謝ろうとする僕に、エメラルは違った答えを出す。


「私なんて、所詮B級なのよ。上にはもっと上がいる。だからこんな所で負けてられないわ」

「カッコいい……」

「また茶化さないでくれる? それより行くわよ、オボロ」


 冒険者としての格を見せつけられた。

 真面目でカッコいい冒険者。まさしくヒーロー。

 余計にそんな造形が形になる。


 けれどエメラルは反応が違った。別に茶化して無いけど、エメラルの顔が赤い。

 ただカッコいいだけなのに、恥ずかしいのかな?

 僕には分からなかったけど、エメラルには随分と響いたらしくて、すぐに話を変えた。


「任せてよ。僕はなにをしたらいい?」

「動きを止めてくれるかしら?」

「動きを止めればいいんだね……それじゃあ、トドメは任せたよ」


 パーティー戦において、それぞれの役割は大事だ。

 まず僕の役割とエメラルに訊ねると、動きを止める様に指示された。

 僕は任されると、頭の中でイメージを形にする。けれどトドメの一撃はエメラルに任せることになるが、余計な心配だったらしい。

 無駄口を叩いてしまうも、エメラルは不敵な笑みを浮かべた。


「ったく。任されたわよ!」


 僕より三歩遅れてエメラルは走り出す。

 地面を蹴り出すと、後ろを追い掛ける音がする。

 パンパンと地面を跳ぶと、僕はミスが許されなくなった。


「ミスはしないよ。だって、任されたんだからね!」


 だけど僕は自分自身が作り出した不安の影を切り取る。

 改めて短剣を握り直すと、ホブゴブリンに攻撃を仕掛けた。

 もちろん、ホブゴブリンも手にした棍棒を振り上げた。


「ゴブラァァァァァ!」


 倒された仲間のために、仇討ちを試みる。

 そんな背景が思い浮かぶけど、僕達にだって負けられない理由がある。

 冒険者は生きるか死ぬか。そんなの……面白いじゃんか。


「遅いよ!」


 僕は振り上げられた棍棒が、振り下ろされるよりも速く動く。

 地面を蹴り上げ高く跳び上がると、短剣を十字に組む。

 空気を叩き、刃を形成するようにイメージすると、鋭い赤と青の形無い刃が、ホブゴブリンの棍棒を襲った。バキッ! と鈍い音がどんよりと悲鳴を上げた。


 バッキーン!


「ゴブラッ!?」


 僕は棍棒をへし折った。

 上半分をスライスされ、生ハムの原木みたいになった棍棒が、音を立てて崩れる。

 地面に落ちると衝撃でバラバラに崩れ去り、せっかくの武器を、ホブゴブリンは失った。


「よし、後は動きを止めるだけ!」


 武器が無くなったら怖い物はない。

 僕はホブゴブリンの腕と足を短剣で切り付ける。

 スパスパスパスパと気持ちよく切り刻むと、ホブゴブリンの体液(血液)が噴き出た。


「ホブゴブラッ! ギャッァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 痛みに苦しむホブゴブリン。

 瞬く間に腕と脚をボロボロにされ、まともに動けなくなった。


 白い牙を剥き出しにし、ただでさえ赤み掛かった体が、余計に赤々となる。

 相当なダメージになったみたいで、ホブゴブリンは今にも倒れてしまいそう。

 のけ反る体がフラフラし始め、僕は頃合いと見た。


「今だよ、エメラル!」


 僕はエメラルに叫んだ。

 重力に身を任せて地面に着地すると、背後から蹴り込んだエメラルの姿がある。


「って、私の出番要らないじゃないの!」


 エメラルは不満を零しながら、ホブゴブリンの顔に渾身の蹴りを入れた。

 靴の裏がホブゴブリンの顔面を捉える。

 バキッ! と白い牙を破壊し、体重移動を利用して地面に押し倒すと、そのまま顔面を陥没させた。


「ゴ、ブラッ……」


 ホブゴブリンはピクリともしなくなった。

 完全に絶命してしまったのか、目を閉じている。

 魔物だって生き物だ。顔面が陥没したら、流石に死んじゃう。

 自分じゃなくてよかったと思い、身が竦む思いになる。


「無事に倒せたね」

「そうね。多分これで終わりよね?」

「うーん、魔物の気配はしないかな?」


 僕達は無事にゴブリンの群れを倒した。

 多分ボス格のホブゴブリンも撃破できた。

 これで依頼は達成の筈。周囲から、魔物の気配はしなかった。


「そう。それじゃあ安心して帰れるわね」

「その前に、素材を取ろうよ」

「……ゴブリンの素材って、美味しくないのよね」

「確かに。ゴブリンの素材は、あんまり売れないもんね」


 ゴブリンの素材は安い。何せ役に立たないから。

 それでもせっかく倒したんだ。美味しくなくても、ゴブリンの素材を剥ぎ取る。

 単純作業の中、ふと僕はここまでずっとモヤモヤしていたことを、改めて口に出す。


「それにしても、どうしてゴブリン達はここにいたのかな?」

「知らないわよ」

「知らないけどさ……どうする、もう少し調べてみる?」


 ここまで来たんだ。もしかすると、ゴブリンの残党が残っているかもしれない。

 恨みを買うと厄介だから、できれば全滅させたい。

 僕は一応エメラルに提案してみると、もちろん乗ってくれた。


「そうね。ナパナパ森に用はないから、周囲を調べてもよさそうね」

「ありがと。それじゃあ早速行こっか」

「分かってるわよ。にしても、ゴブリン達はどうして……」

「こんな所にいたのかな?」


 結局の所、それだけは分からなかった。

 だけど僕達は何か手がかりがあるかもしれない。

 冒険者として、一応周囲を見回ることにし、もう少しだけ探索を続けた。

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