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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー2:ゴブリンの群れ

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第15話 ゴブリン討伐戦

展開がやけに早い。

「それじゃあまずは僕が行くね」

「どうぞ。オボロの腕前、見せて貰うわね」


 エメラルに期待されていた。

 僕は上手く期待に応えられるかは分からないけど、できるだけのことをして観る。

 息を殺し、空気を読み、鋭い殺意の眼光を向ける。


「先手必勝」


 僕は木の裏から飛び出した。

 腰のベルトに差していた短剣を取り出す。

 赤の短剣。青の短剣。魔力を込めると、赤と青に発光する。


「ギャァッ!」

「ギャギャァッ?」


 ゴブリン二匹は驚いている。

 突然の襲撃に対応できる訳もなく、僕は短剣を振った。

 スパッと首を吹っ飛ばすと、魔物の体液(血液)が噴き出た。


「まずは二匹。エメラル、とりあえず二匹倒したよ」


 僕はゴブリンを二匹撃破。横たわった死体が地面に転がる。

 頭だけが吹き飛んでいて、もの凄く残酷。

 だけどこれくらいしないと、魔物は倒せない……ことも無いけど、抵抗されたら面倒だった。


「やってるわね、オボロ」

「殺すなら、一撃で仕留めないとね」

「まあそうだけど……あまりにも速いわね」


 エメラルは僕の早業を褒めてくれた。

 実際、僕はかなりのスピードタイプ。

 師匠達にも体力と敏捷性・跳躍力は特に褒めて貰えた。

 だからかなり自信があるけど、初見のエメラルも同じ感想らしい。


「って言っても……」

「そうだね。今の鳴き声、もしかしなくても」

「仲間への合図だったのね。敵が来たぞって」


 叫ばせるのはマズかった。

 まさかもまさか、ゴブリン同士は独特の発声器官を持っている。

 それを使うことで、仲間同士でのみ会話ができるようにしている。

 まぁ、人間の中には魔物の声を聞き取れる人も居るけど、僕にもエメラルにも無理だった。


「どうしようか?」

「どうするもこうするもないわよ」


 こうなった以上、やることは決まっていた。

 如何することもこうすることも選べない。

 ガサガサと藪中から音が立つと、魔物が姿を現わす。


「そうだね。集まって来るなら」

「全部倒すわよ」


 気が付くと周囲に緑色の小鬼達が集まって来ていた。

 数はそこまで多くはない。

 全員武器は持っていなくて、目が血走っている。


「ギャッ!」

「「ギャギャッ!?」」

「「「ギャウゥギャァ!」」」


 何言ってるのか、全然分からなかった。

 だけど僕達に敵意を示している。

 集まったゴブリン達に取り囲まれると、僕は短剣を握り直す。


「僕が半分倒すから、エメラルはもう半分お願い」

「私に指示出さなくても、自分の役目くらい分かっているわ」

「流石はエメラルだね。それじゃあお互い怪我はしないように」

「油断もね」


 僕達はお互いを叱咤激励し合う。

 連携が取れるように互いに背中合わせになった。

 これで万が一でも、手さえ空いていれば、いつでも助けに入れる筈だ。


「それじゃあ。行くよ!」


 僕は地面を蹴った。まずは先制の一撃を放つ。

 右手に持った赤い短剣が振り上がると、目の前のゴブリンを凝視。

 瞬き一つせず、殺意を持って切り裂いた。


「ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 ゴブリンの断末魔が上がった。

 だけど僕の耳には入って来ない。

 「まずは一匹目」と次のゴブリンの姿に視線を移すと、青い短剣で喉元を抉り出す。


「グギャァ!?」

「二匹目。それから……」


 二匹目を倒すと、ゴブリン達も冷静ではいられない。

 僕の背後を上手く取ると、二匹まとめて攻撃を繰り出す。

 同時に跳び上がり、背中を引き裂こうと爪を立てるが、僕の方が何歩も早い。


「遅いよ。そんなんじゃ、師匠達の足元にも及ばない!」


 僕は短剣を引き戻した。

 左右に広げていた短剣を内側に戻すと、×印を組むような動きになる。

 その拍子にゴブリン二匹の頭を巻き込むと、首から上が弾け飛んだ。

 これで四匹。ここまでものの三十秒も掛かってない。


「僕の方はこれでいいとして、エメラルは」


 エメラルの戦いが気になった。

 速攻でゴブリンを仕留め、エメラルに視線を飛ばす。

 王都最強ギルドの一角。その副ギルドマスターの太刀捌き。これは見ものだと思った。


「ふん」

「あれ?」


 けれど現実は違っていた。別にエメラルが弱いとかじゃない。寧ろ強かった。

 だけど背中に背負った四尺刀は抜いてすらいない。

 もちろん、戦闘の邪魔になるのかならないのか、鞘ごと外して地面に突き立てていた。

 だけどその動きが妙で、僕は目を奪われる。


「ギャギャァッ!」

「ギャーギャー言われても、私には分からないよ!」


 エメラルは襲い掛かって来るゴブリン相手に拳を繰り出す。

 高速の正拳突きを腹に喰らうと、ゴブリンは嗚咽を漏らして倒れる。

 それから左右から襲い掛かるゴブリンも、地面に突き立てた四尺刀を上手い具合に利用。クルンと四尺刀を軸にして回転すると、最小限の力で回し蹴りを放つ。

 四尺刀に体を預け、遠心力を使った攻撃は、まさに舞い踊っていた。


「エメラル、四尺刀を使ってない?」


 ここまでのフリ、一切四尺刀を抜く気配がない。

 ゴブリン相手には抜く必要さえないのか、完全に舐めていた。

 それだけの余裕があるのか、僕は息を飲むと、エメラルの強さに呆れた。


「ふぅ。こんな所かしら?」


 自分に襲い掛かる火の粉を返り討ちにした。

 地面にはゴブリンの死体が転がる。

 エメラルは地面に突き立てた四尺刀を背負い直すと、僕は頃合いを見て声を掛けた。


「エメラル、お疲れ様」

「オボロもね。にしても、好戦的だったわね」

「うん。それはそうとエメラル、四尺刀は使わないの?」

「はっ?」


 ゴブリン達は住処を追われたとしか思えないくらい、警戒心が強くて連携も取れていた。おまけに好戦的で、僕達は退所を速やかに行った。

 それでもそこまで苦戦はせず、ゴブリン討伐の話から、僕は筋をすり替えた。四尺刀を抜かなかった理由が、如何しても気になるから。


「ああ、そうね。私が四尺刀を抜くのは、相当追い詰められた時くらいよ」

「そうなの? それじゃあパンチとかキックを繰り出してたのって?」

「ふん、これが私の戦闘手段(バトルスタイル)よ」


 四尺刀を抜くのは相当追い詰められた時だけ。

 確かに今回は追い詰められてはいなかった。

 それにしては体術が多かった気がする。アレは何か意味があるのかな?


 そう思って訊ねてみると、エメラルは随分と誇らしげ。

 腰にて当てると胸を張り、鼻を高くする。


「戦闘手段?」

「そうよ。私は小さいから、まともに四尺刀を振り回すなんて真似出来っこない。だから私は決めたのよ。体の小ささを利用する方法、前にも言ったでしょ? これが私の利点だって」


 ここに来るまでにエメラルは言っていた。

 背が低いことを欠点にはしない。利点にするための戦い方。

 それを模索した結果がコレなら、ブレットを倒したのも伺える。


「それで体術?」

「そうよ。これが私のやり方よ、文句ある?」

「いや、ないよ。寧ろカッコいい!」

「なっ!?」


 僕は純粋にカッコいいと思った。

 四尺刀を抜くのは奥の手の時点でカッコいいけど、体術に落ち着いたのはメチャクチャ理に適ってる。例え武器が無くても、自分の体が資本であることは変わらない。

 僕も師匠達に叩き込まれた体術で、体がボロボロにされたことを思い出す。


「苦労したんだね、エメラルも」

「“も”ってなによ、“も”って!」

「うん、エメラル”も”ね」


 僕もエメラルも体術で培ったものは同じ。

 資本となる体と絶対に譲らない強い精神力。

 何だか感慨深くなると、ますますエメラルがカッコよく見えて仕方なかった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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