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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
1ー2:ゴブリンの群れ

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第12話 是非、お願いしたい依頼

オボロ、二日目にして気に入られる。

「まさかあの〈《眩き宝石》〉の副ギルドマスターに出会えるなんて、光栄だよ」

「な、なに、気持ち悪いんだけど」


 僕はつい記憶を辿っていた。

 シークランに教えて貰ったことは本当だった。

 実際に僕はこの目で〈《眩き宝石》〉のメンバーの一人に出会った。

 副ギルドマスターのエメラル。その実力は本物で、間違うことない冒険者だった。


「ごめんなさい。純粋な興味だよ」

「本当に気持ち悪いんだけど……」


 エメラルは僕の顔色や言動を訊いて、完全に拒絶反応を示していた。

 だけどそう思われても無理はない。

 僕もヤバい奴って自覚があったから、頑張って訂正する。


「ごめんなさい。ただ、王都には凄腕の冒険者集団(個人ギルド)があるって聞いて、目標にしていたんだよ」

「目標?」

「うん。特に僕の友達の受付嬢から聞いた話で、僅か十六歳で王都最強の一角、〈《眩き宝石》〉の副ギルドマスターがいるって話」


 僕にとっては、同業の冒険者であり、同い歳ってこともあった。

 だから身近な目標。一度会ってみたいし、話してみたい。戦ってもみたい。

 そんな風に思っていた相手と、まさかこんなにも早く出会えるなんて、幸運以外の何物もでもない。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。それって……」

「エメラルのことだったんだね。さっきブレットを楽々転ばしていたのを見て、確信したよ」


 エメラルは何かを察する。いや、エメラル程の実力者が察せられない訳がない。

 完全に自分のことを言っていると気が付き、頭から湯気が立ちそうな程、全身が熱くなる。


「いや、あれは、その……いつものことで」

「本当、カッコよかったよ。冒険者の鑑、まさに一般人のヒーローだよね」

「ちょっと、止めてよ。私、そんな想いで人助けしてる訳じゃなくて……」


 僕はとにかくエメラルのことを讃えまくった。

 間違いなく、エメラルのやっていることは、典型的な冒険者の根っこの部分。

 完全に一般人のヒーローで、正真正銘、冒険者の鑑。


 一体何を恥ずかしがるのか。エメラルはムキになる。

 おまけに顔が真っ赤になると、口元がたどたどしい。

 今にも舌を噛んでしまいそうで、エメラルは舌が回らない。


「私はただ、冒険者の前に一人の人間なの。自分が嫌だと思ったことは、真っ向から否定するだけ。それのなにが悪いのよ!」

「メッチャクチャ、カッコいじゃん……」

「はい!」

「「「うんうん」」」


 エメラルは人差し指を突き付けた。

 冒険者である前に一人の人間。それを忘れないようにするためか、自分が嫌だと思うことは、真っ向から否定する。そんなの、普通の人にはできっこない。

 エメラルだからこそ、間違えたくないからこそ、自分を突き通しているんだ。


 そんなの聞いたら、僕もネシアも周りの冒険者達も、全員含めて首を縦に振る。

 あまりにもカッコいいい。カッコいい以外の何物でもない。

 だけどエメラルは本当に恥ずかしいのか、顔が真っ赤だった。


「な、なによ。私の人格否定でもしたいの?」

「そんなことないよ。僕はただカッコいいと思っただけで……」

「はぁ。なんだか興味が薄れたわ」


 エメラルは僕に対する興味を失った。

 完全にではないかもしれないけど、ほとんど面倒な奴な認識を受けた。

 正直、ここまでな顔をされるとは思わなったけど、まぁ仕方が無い。


「ごめんなさい、エメラル。僕も悪気は無くて……」

「それは分かったわ。貴方の人間性もね」

「人間性?」


 僕は気を悪くしたと思った。

 エメラルに謝ると、別に怒ってはいないらしい。

 代わりに僕の人間性が分かったと豪語した。


「そうよ。オボロ、貴方は素直な人間ね。自分の道を探そうと足搔いて、苦しんでる。それでも見えた光を見失わないように、今を生きてるって感じがするわ」


 僕はポカンとしてしまった。

 とは言え、エメラルには僕がそんな風に見えたらしい。

 確かに僕は生きることが辛かった。それでも生きたいと願った。

 だから師匠達に出会って、今があって、必死に消えそうな光を追い掛けてるのかもしれない。その性かな、ふと笑ってしまう。


「うわぁ、なんだか当たってる気もする」

「当たってるのよ。ってことで、これくらいでいいかしら? ネシア、悪いけどオボロはうちのギルドには誘えないわ」

「そうですか……エメラルさんとの相性はよさそうに見えたのですが?」


 僕は当たってる気がした。だけど全部を肯定するのは恥ずかしいから、一応否定もしておく。

 エメラルにはそんな僕の嘘なんて一発で見破られちゃったけど、それはそれで面白い。

 そんな感想を言うまでもなく、エメラルはネシアと話していた。何の話かは分からないけど、如何やら僕はフラれてらしい。


「はっ。そんなの分からないでしょ?」

「私も冒険者の方々の相手をするだけの、受付嬢ではありませんよ?」

「それじゃあ私は行くわね。今日は依頼を受ける気分が乗らないわ」


 そう言うと、エメラルは受付カウンターを後にする。

 未だに床に突っ伏して放置されたブレットの横を通る。

 その脚で冒険者ギルドさえ後にしようとするが、エメラルが帰るのを妨げた。


「あ、あの……」


 突然ネシアが手を挙げた。

 もの凄く小さく、恐縮そうで、エメラルはすぐさま気が付くと声を掛ける。


「どうしたのよ、ネシア?」

「実はですね。エメラルさんにお願いしたい依頼がありまして」


 如何やら依頼の受注らしい。

 エメラルに引き受けて欲しいとなると、よほど信頼を寄せられているからだ。

 やっぱりエメラルは格が違うヒーローだなって、僕は思う中、エメラルはもちろん了承する。


「依頼? 別に構わないわよ」

「よかったです。あの、できればオボロさんも、依頼を引き受けてはいただけませんか?」

「別にいいよ。でも、エメラルと一括り(セット)ってこと?」

「はい。今回の依頼、少し数が多いので、多くの冒険者の方に手を貸して頂いているんですよ」


 エメラルだけかと思ったら、まさかの僕にも依頼を振られた。

 如何やら相当大きな事件でもあったみたいで、依頼が立て込んでいるらしい。

 たくさんの冒険者にも協力をして貰っている。だからこれだけの人が居るんだ。


「なるほどね。受付嬢の子達が忙しそうなのはそう言う……ふーん」

「あの、お願いできますか?」


 ネシアは不安そうだった。

 ここまで一悶着は無かったけれど、僕と一括りにまとめられている。

 もしかすると気を悪くしたかもしれない。エメラルの機嫌を損ねるのだけは避けたいみたいだ。


「別に構わないわよ。私は大抵の冒険者とは、パーティーを組めるから」

「ありがとうございます。ではオボロさんもいいですね?」

「うん。僕はほとんどソロだったけど、足手纏いにならないように頑張るよ」


 エメラルは腰に手を当て、にこやかな笑みを浮かべる。

 その様子にネシアは安心と安堵を得たのか、ホッと胸を撫でる。

 かくして僕もパーティー戦はほとんど経験がない。ソロだったせいだと痛感する。

 とりあえずまだパーティーを組む系とは決まってないから、依頼の内容に耳を傾けることにした。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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