第11話 王都最強の一角
少しだけ過去になります。
大体一年くらい前。
あれは今から一ヶ月近く前のこと。
僕が護衛の依頼で王都に来る少し前。
王都から離れた小さな町、リッカーで冒険者活動をしていた頃の話だ。
「こんにちはー」
リッカーは花の町と呼ばれる美しい町。
小さいが観光地として栄えていた。
そのおかげでとても住みやすく、町のあちこちに花が植えられている。
とても綺麗で、春夏秋冬、四季折々の花々が彩りを見せていた。
そんな町にも当然冒険者ギルドがあった。
近くには幾つもダンジョンがあり、そのほとんどが花園や森。
危険な魔物は比較的少ないけれど、観光客の安全のためにも、冒険者の活動は必須だった。
「あっ、オボロ君」
「シークラン、ただいま」
冒険者ギルドに戻って来た僕は、受付嬢の女性に声を掛けられた。
その人の名前はシークラン。淡い紫色をした髪が特徴的で、この町流で言い表すなら、シクラメンの様な人だった。
「おかえりなさい、オボロ君」
「シークランさん、依頼を達成して来たんですけど」
「はいはい。依頼の報告ね。ちょっと待ってね」
シークランはすぐさま依頼の報告に移った。
僕も持ち帰った魔物討伐の証拠品を提出。
おまけに鞄の中から、一際大きな肉塊を取り出した。
「それと換金ってできるかな?」
「できるけど……また凄いの採って来たわね」
僕は魔物の肉を持ち帰った。
魔物は生き物、普通に動物と同じ。
中には一般的な牛や豚、鳥よりも美味しいものもある。
魔物を好んで食べる冒険者や美食家、貴族も居るくらいで、かなり重宝されていた。
「近くの森で見つけた、フローラボアの肉です。二キロはあると思うよ」
「二キロ?」
「大体だけどね。それで、換金ってできるかな? できるだけ早く頼みたいんだけど」
「早く? ……ああ、王都に行くための資金ね」
僕が持ち帰った肉の正体。フローラボアと呼ばれる、イノシシ型魔物の肉。
臭みが少なく、花の様な香りが特徴的。
脂身部分には甘みが強く、口の中でジンワリ溶ける。リッカーの辺りではよく見かける魔物で、比較的温厚なため、肉を手に入れるのは簡単だった。
そんな肉の換金を僕は早くしたかった。
何故かって理由はもちろんシークランは知っている。
僕は王都に行きたい。そのために資金を集めている。
「王都と言えば、冒険者のレベルも高いって聞くけど」
「らしいですね」
「その中でも、特に優れた実力のあるギルドが四つあるらしいわよ」
「な、なんです、それ?」
王都には優れた冒険者たちの集まり、ギルドがある。
冒険者教会・組合、それとは別の集団。
それが冒険者達が独自に築き上げた、ギルドなんだ。
「確かその筈。冒険者でありながら、国を守る騎士団にも加入しているギルド〈《霊楯の聖騎団》〉。暗殺や諜報が専門の影なるギルド、〈《黒牙の影》〉。エルフの魔法使いに妖精の巫女を有する、女性中心のギルド〈《麗しの妖精》〉。この三つが順当ね」
今の三つが特に優れた冒険者達の作り上げたギルドだ。
シークラン曰く、他にも有数のギルドが王都にはひしめき合っている。
互いに手を取り合い、同時に互いを敵対視している。
だからこそ、王都の冒険者の多くがレベルが高いらしい。
「それに加えてでも、新進気鋭のギルド。〈《眩き宝石》〉を忘れちゃダメね」
「……ん?」
シークランは人差し指を立てた。
如何やらかなり注目しているみたいだ。
だけど僕は真顔になると、首を横にする。
時代に乗り遅れていて、情報不足が否めない。
「〈《眩き宝石》〉?」
「そうよ。もしかして、知らなかったの、オボロ君」
「いや、まあ……」
知らなかった。全然知らなかった。そんなギルドがあったなんて。
正直、師匠達と過ごしていた頃は、ほとんど外に出ることが無かった。
出ても月に一回程度。そこで買い出しをするくらいで、情報何てまともに得られなかった。
「もう、オボロ君は後れてるね」
「後れてるのかな?」
「そうだよ、絶対に後れている。王都の冒険者に憧れている同業者が、絶対に知っておかないといけない名前よ」
「へぇー、そうだったんだ」
全然知らなかった。本当にそんなに痛めつけられるとは思ってなかった。
僕はグサリグサリと突き刺さる、シークランの言葉に胸を打たれた。
まさかこんなに怒られるなんて、僕は胸を押さえる。
「シークラン、〈《眩き宝石》〉って?」
「王都ディスカベルで活動している、冒険者の集まりなの。とっても強いって噂なんだから」
「そんなに強いの?」
「リッカーにも伝わってくらいよ? 当然でしょ」
シークランは流石に受付嬢の知識だった。
披露してくれた知識に僕は感心してしまう。
同時に自分の無知さ加減が明るみになると、より一層シークランに訊ねた。
「ちなみにどんなギルドなの?」
「どんなって……そうね。僅か一年半で、圧倒的な記録を叩き出して、王都最強の一角にのし上がったって話かな?」
「凄っ」
普通に考えて、そんなの異例だった。
僕の師匠達はそれこそ別格かもしれないけど、普通の冒険者がそんなことできるなんて。
あまりにもあり得ない記録で、僕は言葉を失う。
「しかも、ギルドマスターは十八歳。副ギルドマスターは、オボロ君と同い歳らしいよ」
「僕と同じ!?」
そんなに若いなんて思わなかった。
もっとベテランの冒険者で、既存のパーティーやギルドから脱退して、一から作り上げたのかと思ってたけど、そんなこと無かった。
一体どれだけの実力を持っているのか。単純に王都最強の一角になるには、実力だけじゃなくて、信頼も大事。一年半でそれを築き上げたとは到底思えないけど、烏滸がましいが、間違いなく素質があった。
「それは興味あるな」
「でしょ。それで、いつ王都に行くの?」
冒険者として、当然の興味を抱く。
師匠達には劣るかもしれないけど、それでも僕より強いのが確実。
ニヤリと笑みを浮かべると、シークランは旅の出発を訊ねる。
「今度護衛の依頼で王都に行くことになっているから、その時かな」
「そうなんだ。それじゃあ、〈《眩き宝石》〉の人達に会ったら、どんな人だったか教えてくれる? 受付嬢として、他のギルドで活動している冒険者のことも知っておきたいから」
今度一ヶ月近い護衛の依頼が入っている。
この期に、僕はリッカーから王都ディスカベルに活動の拠点を移すことにしていた。
今から楽しみだけど、シークランは少し寂しそう。せっかく仲良く慣れたからか、残念に思っているみたいだけど、ついでも兼ねてか一つお願いされた。
友達としてシークランのお願いに、僕はコクリと首を縦に振った。
「分かったよ。それじゃあ、換金してくれるかな?」
「はいはい。ちょっと待っててね」
シークランは僕が狩って来たモンスターの素材を、受付カウンターの奥に運んだ。
どのくらいの金額になるかな? 少しだけ楽しみになる。
これも僕の旅の資金になるからだ。
「〈《眩き宝石》〉か。僕と同い歳……僕も負けてられないな」
とりあえず、王都に行ったら一度は会ってみたい。
当面の目標は、〈《眩き宝石》〉の人達だ。
僕は勝手に意識すると、目標に掲げた。
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