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エピソード18:偽りの終焉


セントラルシティ国際空港での激戦から数日後、街はアンフェイスの活躍で活気を取り戻していた。


レギオンのマスターを捕らえたことで、市民の間には一時的な安堵が広がっていたが、百道葵の心には、依然として重い決断が横たわっていた。


美咲、クロウ、ゼータというかけがえのない仲間を得た喜びは大きかったが、同時に、これまでの偽りのヒーローとしての自分との決別を強く意識するようになっていたのだ。


 「クロウ、ゼータ、美咲……みんなに話があるの」


いつものセキュリティールームで、葵は三人に向き直った。


その瞳には、決意と、わずかな不安が入り混じっていた。


 「どうしたんだよ、葵? 何かまた、大変な事件でも起こったのかい?」


ゼータが心配そうな顔で尋ねた。


クロウも美咲も、真剣な眼差しで葵を見つめている。


葵は深く息を吸い込んだ。


 「私、アンフェイスの正体が私、百道葵であること、そして私が特別な能力を持たない人間であることを、世間に公表しようと思う」


その言葉に、部屋に沈黙が訪れた。


ゼータは目を見開き、美咲は息を呑み、クロウは静かに腕を組んだ。


最初に口を開いたのは美咲だった。


 「えっ……葵、本当に? でも、そうしたら……」


 「そうしたら、どうなるか、私にも分からない。もしかしたら、みんな失望するかもしれない。これまでの評価も、全て崩れ去るかもしれない」


葵は、美咲の言葉を遮るように続けた。


 「それでも、もうこれ以上、偽りの自分でいることはできない。空港での戦いで、私は確信したの。能力があるかどうかなんて関係ない。大切なのは、誰かを守りたいという、この気持ちだって」


ゼータが立ち上がった。


 「でも、それはあまりにも危険だよ、葵! 君の安全が保障されない。レギオンはまだ存在するんだ。そんな中で、自ら正体を明かすなんて……」


 「僕も同意見だ、葵。これまで築き上げてきたものを、全て失う可能性もある。それに、世間がそれをどう受け止めるか……予測できない要素が多すぎる」


クロウも、冷静な口調ながら、その瞳には心配の色が浮かんでいた。


 「分かってる。それでも、もう嘘はつきたくないの。みんなが、真実の私を知って、それでも私を信じてくれるなら、それが、私の真の力になるって信じてる」


葵の言葉には、確固たる決意が宿っていた。


これまで誰にも明かせなかった秘密を共有し、共に戦った仲間たちの存在が、彼女をここまで強くさせたのだ。


美咲が、ゆっくりと葵に歩み寄った。


 「葵……私、信じてるよ。葵が能力者じゃなくたって、葵は私にとって、最高のヒーローだよ。だから、どんな結果になっても、私は葵の味方だから」


美咲の温かい言葉に、葵の瞳が潤んだ。


ゼータも、ふっと笑みをこぼした。


 「まったく、君には敵わないな。分かったよ、葵。僕も、全力でサポートする。最高の情報と、最高の技術で、君の真実の告白を成功させてみせる!」


クロウは、静かに頷いた。


 「覚悟は決まったようだな。ならば、俺たちも腹を括ろう。お前の決断を、俺たちが最後まで支える。百道葵、お前の真実の力が、今、試される」


仲間たちの言葉に、葵の心は大きく揺さぶられた。


一人ではない。


この温かい絆こそが、彼女が求めていた「真実の力」なのだと。




翌日、セントラルシティの主要メディア各社に、アンフェイスからの声明文が送付された。


そこには、緊急記者会見の開催が予告されており、その内容は「アンフェイスの正体、そしてその能力に関する重大な発表」と記されていた。街中が騒然となった。


記者会見当日、会場となったセントラルシティホールは、国内外の記者たちで埋め尽くされていた。


テレビ中継も入り、その様子は全世界に発信される。


会場の熱気は尋常ではなく、誰もが、歴史的な瞬間に立ち会うことを予感していた。


緊張感に包まれたステージに、現れたのは、アンフェイスのスーツを着ていない、一人の少女だった。


百道葵。


会場がどよめいた。


 「皆さん、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。私、百道葵は、これまで『アンフェイス』として活動してきました」


葵の声は、緊張でわずかに震えていたが、その瞳には確固たる意志が宿っていた。


 「そして、今、皆さんに、一つの真実をお伝えしなければなりません。私は、皆さんが期待するような、超人的な能力を一切持っていません」


その瞬間、会場のどよめきは、ざわめき、そして困惑へと変わった。


一部の記者は、信じられないという表情でペンを止めた。


 「私の力は、日々の訓練で培った身体能力、危機察知能力、情報収集と分析、そして交渉術、さらに最新の装備に支えられてきました。私は、決して能力者ではありません」


会場は、怒号にも似た声で埋め尽くされた。


 「嘘だ!」「騙していたのか!」「偽物だ!」様々な非難の声が葵に投げかけられる。


フラッシュの嵐が、葵の顔を白く染め上げた。


葵は、その非難の声を全て受け止めるかのように、じっと前を見据えた。


彼女の脳裏には、これまでアンフェイスとして戦ってきた日々、そして、人々からの感謝の言葉が蘇る。


偽りだったとしても、彼女は、確かに人々を救ってきたのだ。


 「皆さんが、私を『偽物』と呼ぶのなら、それでも構いません。ですが、私は、誰かを守りたいという気持ち、そして、目の前の命を救いたいという思いに、一切の嘘偽りはありませんでした」


葵の言葉に、会場のざわめきが、わずかに静まる。


 「確かに、私は皆さんの期待を裏切ったのかもしれない。ですが、能力がないからこそ、私は、誰よりも努力し、誰よりも慎重に行動し、誰よりも多くの情報を集めてきました。この街を守るために、私は、私の全てを捧げてきました」


彼女の言葉は、まるで、会場の空気を震わせるかのように、人々の心に響いていった。


 「私は、偽りの仮面を被ってきましたが、それでも、私は、人々に希望を与える存在でありたかった。そして、これからも、私は、能力に頼らない、私なりの方法で、この街を守り続けます」


葵は、深く頭を下げた。


その姿は、これまで人々が知っていた「完璧なヒーロー」アンフェイスとは、全く異なるものだった。


しかし、そこには、偽りのない、百道葵という一人の少女の、等身大の姿があった。


記者会見は、混乱の中、幕を閉じた。ニュース速報は、瞬く間に世界を駆け巡る。


 「アンフェイス、正体を告白」「偽りのヒーローの真実」。


世論は二分された。


失望と怒りをあらわにする声がある一方で、「真実を告白した勇気ある行動だ」「能力がなくてもヒーローになれることを証明した」と、葵の決断を評価する声も上がった。


葵の自宅には、連日、メディアからの取材依頼が殺到した。


社会現象となった「アンフェイスの真実」は、人々の間で熱く議論された。




数日後、葵は、テレビのニュース番組を見ていた。


街頭インタビューでは、様々な意見が飛び交っていた。


 「まさか、アンフェイスがただの人だったなんてね。がっかりですよ」


 「それでも、あの人は私たちを救ってくれた。能力があろうとなかろうと、私にとってはヒーローです」


 「真実を話してくれたことには感謝します。むしろ、もっと尊敬しますね」


様々な声を聞きながら、葵は静かに頷いた。


美咲が、紅茶を淹れてくれた。


 「すごいね、葵。色んな意見があるけど、きっと、葵の気持ちはみんなに伝わってるよ」


 「そうだといいけど……」


葵は、ふと、窓の外に目をやった。


セントラルシティの街並みが、夕日に照らされている。


その時、携帯電話が鳴った。


クロウからだった。


 「葵、緊急事態だ。レギオンの残党が、大規模な攻撃を仕掛けてくる。しかも、今回は、セントラルシティ全域が標的になっている」


クロウの声は、かつてないほど緊迫していた。


 「まさか……私が正体を明かしたから?」


 「おそらく、それが引き金になったのだろう。お前が『偽物』であると証明し、人々の信頼を失墜させることで、彼らの支配体制を確立しようとしている」


葵は、ぐっと拳を握りしめた。


自分の告白が、事態を悪化させてしまったのかもしれない。


 「私は、どうすればいいの?」


 「これまで通り、街を守るんだ。お前が『偽物』ではないことを、その行動で証明するしかない。だが……」


クロウは言葉を切った。


 「今回の敵は、これまでとは比べ物にならない。レギオンの残党とはいえ、最後の悪あがきで総力を挙げている。おそらく、お前一人では、どうにもならないだろう」


その言葉に、葵は絶望を感じた。


自分が真実を告白したことで、街が危険に晒される。


しかし、その時、隣にいた美咲が、葵の手を強く握った。


 「大丈夫だよ、葵。一人じゃない」


美咲の言葉に、葵は顔を上げた。


そこにいたのは、美咲の、そして、画面越しのクロウとゼータの、揺るぎない信頼の眼差しだった。


 「私たちがいる。私たちみんなで、この街を守ろう」


その言葉が、葵の心に温かい光を灯した。


そうだ、もう一人ではない。


彼女は、偽りの仮面を剥がしたことで、真の仲間を得たのだ。


 「ありがとう、みんな。行くわ」


葵は、セキュリティールームへと急いだ。


もう、アンフェイスのスーツは着ない。


これからは、百道葵として、戦うのだ。


セントラルシティの夜空に、レギオンの残党が操る巨大な飛行艇が姿を現した。


街中にサイレンが鳴り響き、人々は恐怖に震える。


飛行艇からは、無数の小型機が飛び立ち、街のあちこちに爆弾を投下していく。


 「葵! 北東エリアに大規模な爆発! ゼータ、被害状況を!」


クロウの声が、葵の通信機に響く。


 「分かった! 葵、あそこにいる人たちを優先して! 僕が爆弾の軌道を解析して、最小限の被害で済むルートを探す!」


ゼータの指示が飛ぶ。


 「任せて!」


葵は、生身の体で、爆炎の中へと飛び込んでいく。


彼女は、これまで培ってきた身体能力と危機察知能力を最大限に発揮し、爆弾を避けながら、


人々を安全な場所へと誘導していく。


その動きは、アンフェイスの時と何ら変わらない、いや、それ以上に力強く、しなやかだった。


 「葵! 南西エリアにレギオンの部隊が展開! 彼らは、『筋力抑制装置』を持っている! 警戒しろ!」


クロウが警告を発する。


レギオンの部隊は、人々に装置を向け、その筋力を奪っていく。


混乱に乗じて、レギオンの残党は街を支配しようとしていた。


葵は、筋力抑制装置を持つレギオンの部隊に接近する。


彼らは、葵が能力を持たないことを知っているはずだ。


彼らにとって、葵はもはや脅威ではない。


そう考えているに違いない。


 「これで終わりだ、偽物のヒーロー!」


レギオンの指揮官が、葵に向かって筋力抑制装置を構える。


しかし、葵は怯まない。


彼女は、ゼータの新たなガジェット『音波発生器』を取り出した。


 「ゼータ! これで彼らの装置の周波数を乱せる?」


 「やってみるよ、葵! でも、一瞬しか持たない!」


 「それで十分よ!」


葵は、音波発生器を起動させる。


高周波の音が、レギオンの部隊を襲い、筋力抑制装置が誤作動を起こす。


その一瞬の隙を突き、葵は猛然と彼らに突進した。


 「馬鹿な!? なぜ効かない!?」


指揮官は驚愕するが、葵はすでに彼の懐に入り込んでいた。


彼女は、鍛え抜かれた体術で、指揮官の腕をねじ上げ、筋力抑制装置を叩き落とした。


 「私が能力者ではないと、侮ったのが間違いだったわ!」


葵は、次々とレギオンの兵士たちを無力化していく。


その戦い方は、かつてのアンフェイスのように派手な特殊ガジェット能力に頼るものではない。


だが、その一挙手一投足には、経験と知恵、そして何よりも強い意志が宿っていた。


 「葵! 空港の時にいた能力者が現れた! 彼らはレギオンに完全に操られている! 危険だ!」


クロウの声が、焦りを帯びて響く。


空港で葵が捕らえたはずの能力者たちが、再び現れたのだ。


レギオン残党が彼らを再び目覚めさせたのか、あるいは、同種の新たな能力者が投入されたのか。


彼らは、より強力な能力を使い、街を破壊していく。


 「葵! 『熱線使い』が街を焼き払おうとしている! 『物質透過使い』は建物を崩壊させている!」


美咲の声が、切迫感を増して葵に届く。

葵は、激しい熱線が放たれる方へと走った。


熱線使いは、完全に理性を失い、ただひたすらに街を破壊しようとしている。


 「待って、葵! 熱線使いの能力は、電磁波の乱れに弱いことが判明した! ゼータ、君の『電磁ネットガン』を最大出力で!」


クロウの指示に、ゼータが応える。


 「了解! でも、リスクが高いよ、クロウ!」


 「構うな! 葵の安全が最優先だ!」


葵は、熱線使いの攻撃を紙一重でかわしながら、その懐に飛び込む。


そして、ゼータが最大出力で発射した電磁ネットガンを、熱線使いの体に直接叩きつけた。


 「ぐあああああ!」


熱線使いの体が、高圧電流に悶える。


その隙を突いて、葵は熱線使いの意識を奪った。


続いて、物質透過使いへと向かう。


彼は、周囲の建物を透過させ、崩壊させていた。


 「美咲! 物質透過使いの弱点は!?」


 「葵! 彼の能力は、安定した物理的な接触に弱いみたい! 周囲の地面が不安定な場所だと、能力の制御が難しくなる!」


美咲の正確な情報に、葵は閃いた。


彼女は、ゼータの『振動発生装置』を取り出し、物質透過使いの足元の地面に叩きつけた。


 「くそっ!」


振動発生装置から放たれる振動が、物質透過使いの足元の地面を揺らす。


能力の制御を失った物質透過使いは、その姿を現した。


葵は、その隙を逃さず、渾身の蹴りを叩き込み、彼を無力化した。


次々と、レギオンによって操られた能力者たちを無力化していく葵の姿に、街の人々は呆然と立ち尽くしていた。


彼女は、特別な能力を持たない「ただの人間」だと言った。


だが、その行動は、誰よりも「ヒーロー」だった。


その時、セントラルシティ上空に、レギオン残党の新たな指揮官が搭乗した、以前より小型ながらも強力な飛行艇が姿を現した。


 「馬鹿な……なぜだ! なぜ貴様は、能力を持たないにもかかわらず、私をここまで追い詰めることができたのだ!」


新たな指揮官の声が、街全体に響き渡る。


 「これで終わりだ。我々の『最終兵器』を見せてやる!」


飛行艇の砲門が開かれ、そこから、街の全てを飲み込むかのようなエネルギーが凝縮されていく。


それは、これまでアンフェイスが経験したことのない、圧倒的な破壊力を持った攻撃だった。


 「葵! 逃げろ!」


クロウが叫ぶ。


ゼータも、美咲も、恐怖に顔を歪める。


 「駄目だ! あれを撃たれたら、街は全て終わる!」


葵は、恐怖に震える足を叱咤し、飛行艇へと向かって走り出した。


 「馬鹿な……自殺行為だ!」


指揮官は嘲笑する。


能力を持たない人間が、この攻撃を止められるはずがない。


だが、葵は止まらない。


彼女の瞳には、この街の人々を、仲間たちを、守りたいという、純粋な願いが宿っていた。


 「一人じゃないんだから!」


その時、美咲が、街の人々に呼びかける。


 「皆さん! 葵を信じて! 彼女は、私たちを必ず守ってくれます!」


美咲の声に、最初は呆然としていた人々が、葵の姿に目を向ける。


そこには、絶望的な状況の中、たった一人で巨大な敵に向かっていく、一人の少女の姿があった。


 「アンフェイス!」


 「葵ちゃん!」


 「頑張れー!」


街の人々から、歓声が上がる。


それは、能力者ではない彼女への、偽りのない信頼と、希望の声だった。


その声が、葵の体に、かつてないほどの力を与えた。


 「クロウ! ゼータ! 何か方法はある!?」


 「葵! 飛行艇の動力源に直接攻撃を加えれば、攻撃を中断させられるはずだ! だが、内部には強固なシールドが張られている!」


クロウが叫ぶ。


 「僕の分析だと、シールドにはごくわずかな時間だけ、エネルギーが弱まるポイントがある! でも、そこに到達するには、並外れた身体能力が必要だ!」


ゼータの声が続く。


葵は、迷わず飛行艇へと跳躍した。


彼女は、ビルからビルへと飛び移り、高層ビルを駆け上がっていく。


その動きは、まるで、空を舞う鳥のようだった。


 「くそっ! やらせるか!」


指揮官は、飛行艇からレギオンの兵士たちを放つ。


彼らは、葵を阻止しようと必死に攻撃を仕掛ける。


しかし、葵は、彼らの攻撃を全てかわし、シールドの弱まるポイントへと肉薄していく。


そして、シールドがわずかに弱まった瞬間、葵は、その一点に、渾身のパンチを叩き込んだ。


 「うおおおおお!」


彼女の拳が、シールドを打ち破り、飛行艇の動力源へと直撃する。


 「まさか……!?」


指揮官の驚愕の声が響く中、飛行艇から放たれようとしていたエネルギーは、霧散し、巨大な飛行艇は、バランスを崩して墜落を始めた。


 「観念しなさい!」


葵は、墜落していく飛行艇から間一髪で脱出し、地上へと降り立った。


彼女は、疲労困憊の体で、新たな指揮官を拘束した。


指揮官は、悔しそうに顔を歪めた。


 「馬鹿な……なぜだ! なぜ貴様は、能力を持たないにもかかわらず、私をここまで追い詰めることができたのだ!」


葵は、指揮官を見据え、静かに言った。


 「私には、あなたにはないものがある。それは、仲間、そして、人々との絆よ。それが、私の真の力だから」


指揮官は、その言葉に絶句した。


セントラルシティに、再び平和が訪れた。


人々は、葵の真実の姿を知り、それでも彼女を信じ、応援し続けた。




数ヶ月後。

百道葵は、セントラルシティの高校に通いながら、放課後には、クロウとゼータが立ち上げたNPO法人「シティ・セーフティ・ネットワーク」の活動に携わっていた。


そこでは、能力を持たない人々が、葵のように、自身の特技や知識を活かして、街を守るための訓練を受け、情報収集や災害支援を行うボランティア活動を行っていた。


 「葵! 今日の巡回、一緒に行こうよ!」


美咲が、明るい声で葵を誘う。


彼女は、NPOの広報担当として、精力的に活動していた。


 「うん、行く! 今日は、公園の清掃活動もあるし、手伝ってあげよう」


葵は、笑顔で応えた。


彼女は、もうアンフェイスのスーツを着ていない。


しかし、その瞳には、かつてないほど強い輝きが宿っていた。


クロウは、NPOの代表として、運営と情報分析を担当していた。


ゼータは、技術開発部門を率いて、活動をサポートする新たなシステムを構築していた。


ある日の夕方、葵は美咲と共に、NPOのオフィスが入っているビルの屋上にいた。


セントラルシティの街並みが、夕日に染まっている。


 「まさか、私たちがこんな活動をすることになるなんてね」


美咲が、感慨深そうに言った。


 「うん。でも、これが、私たちが選んだ道だから」


葵は、静かに笑った。


 「偽りからの解放。それは、私にとって、最高の翼となったわ」


葵の言葉に、美咲は静かに頷いた。


遠くから、クロウの声が聞こえてくる。


 「おい、お前たち! いつまでそこにいるんだ! 夕食の準備ができているぞ!」


 「今行くー!」


葵と美咲は、声を揃えて応え、屋上を後にした。


彼女は、もう「偽りのヒーロー」ではない。


彼女は、百道葵として、真のヒーローの道を歩み始めたのだ。


これからも、彼女の物語は続く。




能力がなくても、人々との絆を信じ、未来へと羽ばたいていく、一人の少女の物語が。


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