第7話「地中脱出ルート」
「よし……今日は、いける……!」
深夜。俺は庭の片隅で、スコップを握りしめていた。
先ほど何気なく聞いたあの言葉が、今の俺に勇気をくれた。
『明日はピラー様専用の畑を整えようと思います!』
つまりリリは、明日の朝までここには来ない、
俺は静かに穴を掘り始めた。
「この下に……ポータル装置が埋まっている。俺の直感がそう言ってる。
ふはは、見てろリリ……今度こそ、俺は帰還ルートを――」
「……まさか、ピラー様。この場所を選ばれるとは」
「いるんかい!!?」
振り向くと、スコップを手にしたリリがいた。完璧な笑顔とともに。
「昨日、私が“明日、畑にしましょう”と申し上げたのを……覚えていてくださったんですね……!」
「いや違うって!! 完全に逆!!」
「汲み取ってくださったんですね! “リリが作ると言っていたなら、先に掘っておこう”と……! ピラー様の深謀……恐れ入りました……!」
「違うの! 帰りたいだけなの俺は!!」
「これはきっと“地中脱出ルート”ですね……!」
どうして毎回こうなんだ。だが、もう止まらない。
「任せてください。畑作業は得意です! 今日の私は違いますよ! 覚悟のスコップです!」
そう言ってリリは、勢いよく掘り始めた。その手際は異常なほど慣れている。
たちまち、俺の倍の速度で穴が深くなっていく。
「……ピラー様。もし、この先に本当に帰還の手段があるのなら……帰られますか?」
「……ああ。帰るさ。絶対にな」
「そうですか」
少しだけ、さみしそうに笑ったように見えた
――そのとき、スコップが何かに当たる音がした。
「……金属音?」
土をかき分けると、そこには円形の金属板。中心にボタンのようなものがついている。
「うお、マジで何かあるじゃん!? これ……本当にポータルだったり――」
バチッ!
突如、火花が走り、金属板が振動を始めた。
「ヤバい、これやばいってやつじゃ――」
ボンッ!!!
次の瞬間、爆風が吹き荒れ、俺とリリは庭の池に吹き飛ばされた。
「うぅ……いたた……」
「……どうやら、古代式肥料撹拌装置だったようですね……」
「爆発オチなんて最低だよ……」