エピソード99 帝国における小領主と自作農
『令嬢希望女史の御父君であらせられる男爵閣下の御家族とは、領内の領民や家畜を襲い危害を加える恐れのある危険な野生の獣である、狼の群れや熊や猪への狩猟を共同で行うなどして、信頼関係を構築して来ましたが。中にはそうした信頼関係を築くのが難しい、貴族諸侯であらせられます皆様方の家門もあります』
アンリ・フォン・レバークーゼン卿による説明に対して、男爵閣下の御息女であらせられます令嬢のナディーネさんも、灰白色の髪の毛を揺らしながら頷かれまして。
『アンリのレバークーゼン家は、女には家督や財産の相続権を認めていない、今となっては帝国内で少数派となっている男尊女卑の文化圏に属しているからな。爺さんや親父は、他家の家風には口を挟まない考え方だから気にして無ぇが。多数派の男女平等の文化圏に属する貴族諸侯であらせられる皆様方の家門とは、反りが合わ無ぇ関係にあるな』
帝国では二世代前の祖父母の世代から、女性でも皇帝陛下の直臣の臣下であらせられます帝国女騎士様の身分となれるようになりましたが。退役軍人でもある祖父の若い頃は、アンリ卿の御父君であらせられるレバークーゼン家の子爵閣下のような、男尊女卑の考え方に基づいた家風の家門が多数派だったのだと思われます。
{物質界における、人間社会での時の流れは無常ですな我が主。祖父母の世代では当たり前とされていた男尊女卑の考え方が、二世代後の孫や孫娘の世代になりますと、少数派に転落をしているのですから}
『そうした考え方や家風の合わない、貴族諸侯であらせられます皆様方の家門の御領地との間には、直接領界を接しないように、緩衝地帯となる小領主の治める領地を挟んでいたのですが。そうした小領主の御一方が急逝されまして、緩衝地帯を維持したい当家としましてはどのように干渉するべきかと、貴族街にあります父上の上屋敷にて連日一族で集まり、協議を行っています』
小領主という事は、帝国の君主であらせられます皇帝陛下から爵位を叙爵された、貴族諸侯であらせられる皆様方よりは、身分が下位の御方だと思われます。
『ザスキアのお父さんのような帝国騎士様かな?。それとも真実のお父さんのような免状貴族身分の小領主なのかな?』
私と同じ平民身分な恵さんの問いに、アンリ卿は頷かれまして。
『はい。ハンナ女史。ヴェレーナ女史のご父君と同じく、免状貴族身分の小領主となります』
{首飾りの主の御父君は、帝都にて手広く商売をされていられるやり手の豪商ですが。小領主をされている免状貴族身分の人物もいるのですな。我が主}
私の祖父も平民身分の退役軍人ですけれど、自作農の農家ですから。貴族諸侯であらせられます皆様方による支配を受けていない、小領主や自作農も帝国には存在します。髪飾り。




