エピソード96 物腰の柔らかい御令息様
『噂をすれば影がさすですわね』
真実さんが緑青色の瞳を向けた談話室の出入口から、少し疲れた様子のアンリ卿が室内に入って来られました。
『どうしたアンリ。浮かない顔をしてるじゃねぇか』
子爵閣下の御令息様であらせられるアンリ卿と、男爵閣下の令嬢であらせられる希望さんは、帝都魔法学園に入学する以前から御領地にて共に狩猟をされる仲ですので。気安い風を装われつつも、心配して声を掛けられました。
『貴族街にあります父上の上屋敷にて、今宵も話をして来て戻って来た所です。令嬢ナディーネ女史』
御領地と領民を御治めになられていられます、貴族諸侯であらせられます子爵閣下を御父君とされますアンリ卿は。ナディーネさんに対して令嬢と付けで呼び慣わされるのが、完全に習慣化されていられます。
『アタシ達も貴族街にある親父の上屋敷から帰って来たばかりだ。良ければ話を聞くぜ?』
ナディーネさんによる提案に対してアンリ卿は、ヴェレーナさんとザスキア女史と私と恵さんの表情を窺いまして、会話に加わってもよいかとの許可を視線にて求めて来られましたので。
『地方部出身の平民身分の村娘に過ぎない私からしますと、アンリ卿の御話は非常に勉強になります』
私の言葉を聞きヴェレーナさんも、笑顔にて御頷きになられまして。
『帝国の君主であらせられます皇帝陛下の直臣の臣下であります、帝国女騎士身分を目指す上でアンリ卿による御話は、花さんの仰られる通り非常に勉強になりますわ♪』
コクッコクッコクッ。
私とヴェレーナさんの話を聞かれたザスキア女史も、無言にて首を縦に複数回振られて同意を示されていられます。
『そういう訳だから、遠慮をする必要は無いよ♪』
最後にハンナさんが笑顔で勧めますと、アンリ卿は頭を下げられまして。
『ありがとうございます。感謝をします』
{物腰の柔らかい、貴族諸侯であらせられる子爵閣下の御令息様ですな。我が主}
アンリ卿は子爵閣下が、所有物である奴隷身分の女性奴隷労働者に手を付けて産ませた後に、天から根元魔法の素質を授かりし魔法使いだと解り認知なされた御令息様ですから。奴隷腹の庶子として、貴族諸侯の家門にて様々な苦労をされて来られたのだと思われます。髪飾り。




