エピソード95 ザスキア女史との間に感じる共通点
『希望のお爺さんからちゃん付けで呼ばれて、花が珍しく驚いた表情を見せていたよね♪』
貴族街にあります、ナディーネさんの御父君であらせられます男爵閣下の上屋敷にて、湯浴みを済ませましてから夕餉を頂き、根元魔法の帰還を使い帝都魔法学園の学生寮まで帰って来ましたが。
『そこまで露骨に表情に出ていましたか?。准将閣下に対して御無礼を働いたかも知れません』
帝都魔法学園の談話室に場所を移して、同い年の学友同士のみで私達は話していますけれど。周囲を観察されて細やかな気遣いを行えるとはいえ、十四歳の恵さんに私の内心の動揺を見抜かれたという事は。人生経験豊富な准将閣下には、小娘に過ぎない私の考えなど手に取るように見通されていられたはずです。
『フロリアーヌの欠点を敢えて指摘するなら、物事の真剣に考え過ぎる点だな。数多の軍場で死線を潜り抜けて来た爺さんが、孫娘のアタシと同い年のフロリアーヌの反応を、一々気にする訳が無ぇだろ』
ナディーネさんによる気風の良い断言に対して、真実さんも銀白色の髪の毛を揺らして頷きながら同意を示されまして。
『この点に関しては、ナディーネさんの仰られる通りだと私も感じますわフロリアーヌさん。帝国の君主であらせられます皇帝陛下の軍隊である帝国軍にて、三十年間勤め上げられまして、軍人恩給を受給されていられる退役軍人のお爺様に、厳しく躾られた家庭環境にて育たれたそうですから。無理も無いかとは思いますけれど』
ふむ?。確かにナディーネさんやヴェレーナさんの仰られる通りかも知れません。
『ザスキア女史はどう思われますか?』
学生食堂で食事を共に摂るようになったザスキア女史は、私達が男爵閣下の上屋敷から学生寮に帰って来た後は、談話室にて会話に加わっていますので、意見を求めますと。
「え、ええと。私も令嬢ナディーネ女史と、ヴェレーナ女史の仰られる通りではないかと愚考する次第であります。フロリアーヌ女史…」
私達全員の様子を窺うような眼差しにて、周囲を眺めながら小声にて話されたザスキア女史に対して。ナディーネさんが灰白色の髪の毛を揺らされながら、軽く肩を竦められまして。
『令嬢は止めてくれよザスキア。アンリみたいに子爵閣下の御令息として生まれ育つと、幼い頃から一緒に狩猟をしていても、令嬢の呼び方を外せなくなっているが。アタシ達は全員同学年の女子学生なんだぜ』
「は、はい。申し訳御座いません令嬢ナディーネ女史。あっ、もとい。ナディーネ女史…」
ザスキア女史は、外務省勤務の帝国騎士様を御父君とされていますが。私と同様の躾を受けて成長されたように感じます。




