エピソード89 疑われた理由
『ジャリッ』
『完全に焼け落ちていますね』
翌日。帝国の君主であらせられます皇帝陛下の直臣の臣下の帝国女騎士身分の老女教授に引率をされまして、以前に訪れた事のある帝都の裏通りへと赴きましたが。
『花女史が尾行をして、人攫いの拠点だと突き止めた建物は、この焼跡の残骸で間違いはありませんね?』
帝国女騎士身分であらせられます老女教授による御下問に対して、平民身分の私は恭しく深々と御辞儀を行いましてから。
『はい。帝国女騎士様。私が尾行したのは新月の夜でしたが。当時は今私が立っている場所に、見張りらしい男性達が立たれていられました』
帝都魔法学園にて、根元魔法を学ぶ女子学生でもある私による奉答を聞かれた老女教授は、焼け跡を調べていられます衛兵隊に視線を向けられまして。
『見張り達の焼死体も、焼け落ちた建物の残骸の中で発見されたのでしたね?。衛兵長』
退役軍人でもある老女教授による威厳のある声にて質問をされた衛兵長様は、私と同様に恭しく深々と御辞儀を行われまして。
『はい。帝国女騎士様。検死結果によりますと、根元魔法の麻痺魔法により身動きが取れなくされてから、生きたまま焼き殺された可能性が高いとの事です』
成る程。
『フロリアーヌ女史。貴女でしたらこの建物を拠点とする不逞の輩を殲滅するとしましたら、どのような手段を用いますか?』
退役軍人の祖父とは戦友の関係でもある、実戦経験豊富な帝国女騎士身分であらせられます老女教授による御下問に対して。
『裏通りに入る前に根元魔法の姿隠之魔法を発動しまして、周囲から見えないように不可視の状態で建物に近付きましてから。見張りの男性達に不意打ちで麻痺魔法を撃ち込み、身動きを取れなくしてから重力制御で建物の中に放り込みましてから、火矢で内部に火を放ち、中の住民が逃げ出せないように、魔法障壁で建物の出入口と窓を塞ぎまして、姿隠之魔法と魔法障壁の二種類の根元魔法を発動したまま、三種類目の根元魔法となる飛翔を発動しまして浮かび上がり、建物全体を見下ろせる上空から、建物内の住民が一人残らず全員焼け死ぬのを確認します。帝国女騎士様』
地下に脱出用の抜け道がある可能性もありますが、最初に一階に根元魔法の火矢で火を放てば、地下の抜け道を使う余裕は殆ど無いはずです。
『三十年間帝国軍にて勤め上げられました、退役軍人の御爺様からの薫陶を、本当に良く受けていられますねフロリアーヌ女史』
『身に余る勿体ない御言葉で御座います。帝国女騎士様』
{我が主に嫌疑を掛けられた理由が解りましたな}
その通りですね髪飾り。私が老女教授の立場でも、同様の疑いを抱きます。




