エピソード88 どのような疑いかの推測
『一応念の為に確認しとくが、心当たりは無ぇんだな。花?』
『ちょっ、ちょっと希望っ!』
老女教授と入れ替わりに、ナディーネさんと恵さんの二人が談話室に入って来られましたが。私の目を真っ直ぐに見ながら、ナディーネさんが単刀直入に質問されましたので。
『はい。心当たりはありません。ナディーネさん』
ナディーネさんは私の目を真っ直ぐに見詰めたまま、約三十秒ほど瞬きもせずに、御自身の藍色の瞳にて、私の瑠璃之青の目を射抜くような眼差しにて凝視されましてから。
『悪かったフロリアーヌ。老女教授が妙に確信を持った様子で、何か重大な事をやらかしたという前提で調べていやがったからな』
ナディーネさんの話に、ハンナさんも頷いて同意をされまして。
『激しく扉を叩いてから、マスターキーで開けた女子寮の部屋にフロリアーヌが居なかったから、逃げられたと思い込んでいたよね。その後で私とナディーネから話を聞いて、放課後の間はずっと私達といたと聞いても、かなり疑っていたよね』
ふむ?。
{腕輪の主の言われる通り、かなり強い確信を持って我が主を疑っていたようですな}
そのようですね。髪飾り。
『私をそこまで疑われるという事は、三種類の異なる根元魔法を同時に使用した、何らかの犯罪が行われた可能性があります』
私の推測に対して、真実さんも同意をされまして。
『はい。フロリアーヌさんの仰られる通りだと思いますわね。帝都魔法学園にて根元魔法を学ばれている学生の中でも、三種類の異なる根元魔法を同時に発動可能な魔法使いと女魔法使いは数える程しかいませんから。帝国女騎士様があそこまで確信を持たれてフロリアーヌさんを疑う理由となりますわね』
コクッコクッコクッ。
私達の話を黙って聞かれているザスキア女史も、首を上下に動かして振りながら、同意の意を示されていられます。
『そうなると今夜はフロリアーヌを連れて、貴族街にある親父の上屋敷に行って正解だったな。アタシ達だけで無く、男爵夫人のお袋も夕飯は一緒に食べたからな』
私達十四歳の女子学生だけでしたら、口裏を合わせたのではないかと疑われる可能性が大ですが。元軍人の男爵夫人様に、私が上屋敷にて夕餉一緒に摂っていたと証言して頂ければ、信憑性は確保が出来ます。
『ナディーネさんの御母堂であらせられます男爵夫人様には、御迷惑を御掛けする事になるかも知れません』
私の懸念に対してナディーネさんは、灰白色の髪の毛を揺らしながら軽く肩を竦められまして。
『気にすんな。困った時はお互い様だからな。フロリアーヌ』
ナディーネさんは気風の良い話し方をされますが、非常に気高い精神の持ち主であると改めて強く感じます。
『気にはしませんが、必ず御恩返しはさせて頂きます』
ナディーネさんに対する私の返答を聞かれたハンナさんが笑われながら。
『それってかなり気にしているよ。フロリアーヌ♪』




