エピソード82 仲の良いお友達
『花さんは、お料理を食べる際の作法も美しい令嬢ですわね♪』
『身に余る勿体ない御言葉で御座います。男爵夫人様』
帝都の貴族街にあります、希望さんの御父君であらせられる男爵閣下の上屋敷にて、湯浴みを済ませました後に、夕餉を頂いています。
『フロリアーヌは帝都魔法学園に入学した時点で、お料理を食べる際の礼儀作法の基本は出来ていたよね?』
私と同じ平民身分で、周囲の人達への細やかな観察と気配りを欠かさない恵さんの言葉に、夕餉を摂る手を一度止めましてから頷きまして。
『退役軍人の祖父の代わりに、女魔法使いとして御代官様の御手伝いをさせて頂いた後に、食事を御馳走になる事もありましたから。祖父からは最低限の礼儀作法を習いました』
私の話を聞かれた元軍人の男爵夫人様は、笑顔にて御頷きになられまして。
『皇帝陛下の軍隊である帝国軍では、下士官まででしたら特に食事の際に礼儀作法は求められませんけれど。尉官の准尉からは、食事を摂る際の最低限の礼儀作法を求められるようになりますわね♪』
皇帝陛下の軍隊である帝国軍では、下士官や兵士は平民身分ですが、軍場にて武功を挙げれば昇進しますから。中には本人が望まなくとも、尉官の准尉の軍階級となる平民身分出身の人物もいるそうです。
『基本は祖父から習いましたが、帝都魔法学園に入学して以降は、真実さんに様々な知識や礼儀作法を教えて頂いていますので。地方部出身の平民身分の村娘として、心底より感謝しております。男爵夫人様』
私が感謝の言葉を述べますと、ヴェレーナさんは満面の笑みを御浮かべになられまして。
『フロリアーヌさんのお役に立てたのでしたら、望外の幸いですわね♪』
学生寮の女子寮で、偶然ヴェレーナさんと隣の部屋となれたのは非常に幸運でしたので、心底より天に感謝をしています。
『ナディーネのお友達は、みんな仲良しで安心をしたわ♪』
御母堂であらせられる男爵夫人様による笑顔での御言葉を聞かれたナディーネさんは、軽く首を振りながら苦笑を見せられまして。
『まあ、そうなんだが。アタシはもう十四歳なんだぜ。お袋』
男爵夫人様は御夫君であらせられる男爵閣下との間に、三男一女を儲けられていますが。唯一の女児でもあるナディーネさんの事は、格別に可愛がられていられるようです。




