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本好きの女魔法使い  作者: クリストファー


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エピソード75 ダモクレスの剣

『パラッ』


『今の所は、帝都を含む皇帝陛下の直轄領内で指名手配中の咎人とがびとの人相書きの中には、私をさらおうとしていた三人の中では一番格上の男性は見付かりません』


衛兵隊の皆様の御厚意により、詰所内にて皇帝陛下の直轄領内で指名手配中の咎人とがびとの人相書きを見せて頂いていますが。昨夜に私をさらおうとした三人組の中では、一番格上の男性は見付からないでいます。


『やはり前科持ちの方か?』


帝国の貴族諸侯であらせられる男爵バローン閣下の御息女でもある令嬢フロイライン希望ナディーネさんの言葉に対して、帝都にて手広く商売をされています免状貴族エードラー身分の豪商を御父君とされる真実ヴェレーナさんが。


『他の可能性としましては、貴族諸侯であらせられる皆様方が御治めになられていられます御領地にて、何らかの罪を犯して帝都に逃れて来た咎人とがびとの可能性もありますわね』


私が確認を終えた人相書きを、ナディーネさんとヴェレーナさんは何か役立つ情報はないかと再確認しながら見られていますが。ハンナさんは余り関心が無いようでして、新聞のクロスワード-パズルで遊ばれています。


『ハンナさんは学生寮シュトゥデンテン・ヴォーンハイムでも、談話室に置かれている新聞のクロスワード-パズルで遊ばれていられますね?』


私の指摘にハンナさんは、赤茶色ロート・ブラオンの短いツインテールを驚いたように揺らされまして。


『えっ、見てたのフロリアーヌ?』


私は人相書きを一枚一枚確認しながら頷きまして。


『私が生まれ育った故郷でもある地方部では、御代官様の屋敷を訪れた際にしか新聞は読めませんでしたから。帝都では毎日新しい新聞を読めるのは、非常に贅沢だと感じています』


地方部で暮らす平民身分や奴隷身分の多くは、文字が読めない文盲もんもうですので、御代官様の屋敷でしか新聞を読む機会がありませんでした。


『ハンナはクロスワード-パズルが好きだからな。新聞の他の記事は読んでぇだろ♪』


ナディーネさんが笑いながら揶揄からかいますと、幼馴染みのハンナさんはほおを膨らませまして。


『そんな事は無いわよナディーネ。面白い風刺画も好きだからっ!』


…新聞の記事を読んでいないというナディーネさんの指摘を、ハンナさんは否定はされませんでした。


『私は経済に関する記事に特に関心がありますわね。ケーニヒスベルク家の辺境伯マルク・グラーフ閣下が指揮なされる東方拡大戦争により、敵国であるザクセン公国から獲得した戦利品である奴隷の供給により、帝都では奴隷市場の相場が下落傾向にありますわね』


免状貴族エードラー身分の豪商を御父君とされるヴェレーナさんの話に、令嬢フロイラインのナディーネさんも頷かれまして。


辺境伯マルク・グラーフ閣下は、大将の軍階級にて東方拡大戦争を指揮なされていられるが、戦費はザクセン公国から獲得した戦利品である奴隷の売却で自力調達なされていられるからな。軍務省勤務の爺さんも、帝国の財政に負担を掛けない大将閣下の手腕は絶賛しているぜ』


{帝国の貴族諸侯であらせられる皆様方は、優秀な逸材が揃われていられるようですな。我が主}


封建制度を政治体制に採用している帝国では、貴族諸侯であらせられる皆様方は御領地と領民を御治めになられながら、家臣団を統御とうぎょされなければいけません。能力的に不適格な人物でしたら、自力救済フェーデの慣習により近隣の御領主様に攻め込まれますから、無能ですと淘汰とうたされる厳しい環境にあります。髪飾ハール・シュムックり。


{帝国の貴族諸侯であらせられる皆様方は、ダモクレスのつるぎの故事の世界で生きていられますな。我が主♪}

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