エピソード74 手慣れた対処
『走って逃げる女子学生を追い掛けたのは、声を掛けて軟派するのが目的だったと言い張るのだな?』
『そーそー。その通りっすよ衛兵さん』
『道を歩いていたら、偶然に金髪の物凄い別嬪さんを見掛けたんで、声を掛けて軟派しようと思っただけっすよ。衛兵さん』
……翌日。帝都魔法学園での講義を受講しましてから、衛兵隊の詰所まで来て欲しいとの連絡があり赴きましたが。
『人攫いが目的では無く、声を掛けて軟派する為だけに、走って逃げる女子学生を追い掛けたのだと飽く迄も主張する訳だな?』
『その通りっすよ衛兵さん』
『俺達みたいな貧乏人の平民は、彼女作るのも大変なんすよ』
衛兵隊の詰所の隣室で行われている取り調べの様子を、伝声管を経由して聞いていますが…。
『カパッ』
伝声管の蓋を閉じまして、詰所に同行をしてくれました、希望さんと真実さんと恵さんに対して、私は瑠璃之青の瞳による視線を向けまして。
『大して重い罪には問われないと解った上での、蜥蜴の尻尾切りによる出頭ですね』
私の見解に対して、ナディーネさんとヴェレーナさんとハンナさんの三人は、揃って頷き同意を示されまして。
『軍務省勤務の准将閣下の爺さんや、帝都魔法学園で教鞭を執る帝国女騎士身分の老女教授が、花を攫おうとした連中を捕まえようとしていると察知して、先に手を打ちやがったな』
ナディーネさんの推測に、ヴェレーナさんも同意されまして。
『根元魔法の姿隠之魔法を発動された、フロリアーヌさんが聞いた話の内容から、最初から人攫い目的だったのは明白ですけれど。立証する為に必要な物証が何一つ無いと解った上での、出頭となりますわね』
地方部出身の私からしますと、このような展開は予想外でした。
『帝都の裏社会で生きる無法者は、こうした対処にも手慣れているのですね』
生まれ育った故郷でしたら、獣欲に駆られて私を襲おうとした男性の処分は、退役軍人でもある祖父に任せれば済みましたが。やはり帝国の首都である帝都の裏社会で生きる無法者は、地方部とは違うと実感しました。
『これはやられたよね。精々厳重注意くらいかな?』
ハンナさんの言う通りです。罰金刑にすらならないと思われます。
『一つ気になるのは、私を追い掛けた三人の中で一番格上だと思われます男性は、出頭しなかった点です?』
衛兵隊に出頭したのは若い二人だけですから、一番格上の男性は詰所に姿を見せませんでした。
『多分前科持ちだな。もしかしたら指名手配中かもしれねぇな』
成る程。ナディーネさんの言う通り前科持ちや指名手配中でしたら、衛兵隊に出頭したら厄介な事になります。
『指名手配中の犯罪者の人相書きを、衛兵隊の皆様から見せて頂きましょう。その中にフロリアーヌさんを攫おうとした男性が居れば、まだ打つ手はありますわ』
ヴェレーナさんの提案に、ナディーネさんも同意されまして。
『それがいいな。アタシ達を甘く見た連中に、一泡吹かせられるかもしれねぇからな』




