エピソード72 それぞれの見解
『御馳走様でした』
『花は何があっても、必ず食事は摂るよね』
学生食堂での夕餉を摂り終えました私は、向かい側の席に腰掛けていられる恵さんに対して頷きまして。
『人間は何をするにしても身体が資本ですから、肉体を維持して活動する為に必要不可欠な食事は摂るように心掛けています。ハンナさん』
退役軍人でもある祖父が家長をしている農家で生まれ育った地方部出身の私と、貴族諸侯であらせられる男爵家に出入りを許されている御用商人の商家で生まれ育ったハンナさんとでは、同じ平民身分でも考え方や生活様式に違いがあります。
『フロリアーヌは希望と似ている所があるよね。やっぱりお爺さんが退役軍人だからかな?』
ハンナさんの幼馴染みでもあるナディーネさんは、男爵閣下の御息女であらせられる令嬢ですが。御爺様が軍務省で勤務されていられます准将閣下で、帝国騎士身分の兄君の御三方が帝国軍人という軍人一家で生まれ育たれたナディーネさんとは、確かに思考方法などに関しては共通点があります。
『真実さんから見てどうですか?』
私の問いに対して隣の席に腰掛けていられるヴェレーナさんは、紅茶を一口飲まれましてから。
『私達の共通目標である、帝国の君主であらせられる皇帝陛下の直臣の臣下でもある帝国女騎士身分を目指す上では、ナディーネさんとフロリアーヌさんの思考方法は非常に役立つかと思いますわね』
{首飾りの主は免状貴族身分だそうですが、帝国女騎士身分になる事に強い拘りがあるようですな。我が主}
『ヴェレーナは、帝国女騎士身分になる事に拘っているよね』
魔道具でもある髪飾りと、人間のハンナさんの見解が一致しました。
『帝都魔法学園を卒業するまでに、免状貴族身分の御父様を上回る立場に娘となっておくのが目標ですから。ハンナさん』
帝都にて手広く商売なされていられる、免状貴族身分の豪商を御父君に持つヴェレーナさんは、地方部出身の村娘の私よりも複雑な立場にあります。




