エピソード66 知的な刺激と満足感を得られた充実した時間
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迂回路を探して普段よりは時間が掛かりましたが、帝都にある図書館まで無事に辿り着きまして、好きな読書を行っています。
「パラッ」
本日は家督と御領地と爵位を譲り隠居なされた、貴族諸侯であらせられた御方が書かれた回顧録を読んでいますが。当然の事ながら、皇帝陛下と帝室の御威光を毀損する恐れのある内容は避けて執筆された回顧録となりますが。行間を読み他の皆様方の書かれた回顧録や伝記と照らし合わせる事により、帝国では公式には語れない歴史の一端に触れる事が出来ます。
『………………』
ある程度読み進めましてから、頭の中で過去に読んだ他の回顧録や伝記、それに帝国の公式記録と照らし合わせまして、実際に起きた歴史を推察しました。
「パラッ」
封建制度を政治体制に採用しています帝国に限らず、どのような国でも同じだとは思いますけれど、公式記録からは消し去られた歴史が存在しますから。そうした消された過去を複数の書物の行間を読む事により推察するのは、帝都魔法学園では教えてはもらえない、知的な刺激と満足感を得られる密かな楽しみとなっています。
『………………』
皇帝陛下の軍隊である帝国軍にて、三十年間勤め上げられて軍人恩給を受給なされていられる祖父も、過去に従軍なされた軍務に関しては基本的には沈黙されていましたが。それでも家族で唯一、根元魔法の素質を血統により受け継いだ孫娘でもある私に対しては、女魔法使いとして生きていく上で必要な心構えを教える際に、御自身の魔法使いとしての経験を少しだけ話されましたから。図書館で回顧録や伝記を読みながら、祖父が話された内容も思い出しまして、消し去られて空白となっています帝国の歴史を推察しています。
『間もなく閉館の時間となります』
集中して読書をしていますと、時間は本当に直ぐに過ぎ去ります。
スッ
椅子から立ち上がりまして、読んでいた回顧録を丁寧に本棚に戻しますと。本日も知的な刺激と満足感を得られた充実した時間を過ごせた幸運を、天に感謝しました。
もう念話で話し掛けて来ても構いませんよ。髪飾り。
{我が主は本当に集中して読書を楽しまれていられますから、本を読まれながら頭の中で行われていられます推察は、非常に興味深く感じました}
私の思考を全て見れる魔道具でもある髪飾りは、人間相手では決して得られない理解を示してくれます。




