エピソード64 帝都と地方部での奴隷の価値の違い
{厳重に警備されている検問所ですな?。我が主}
『髪飾りの言う通りですね』
裏通りで甘くて美味しいアプフェル・クーヘンを販売されている、屋台の経営者らしい中年女性に教えて頂いた道を通り図書館へと向かっていますが。厳重な警備をされている検問所を見掛けまして、ここが帝都のどの区画なのか、頭の中の地図で把握が出来ました。
『私のような平民身分の女子学生には直接は関係の無い商品を取り扱う、帝都奴隷市場へと繋がる検問所ですね。髪飾り』
希望さんの御爺様であらせられる准将閣下と御会いしました、男爵閣下の上屋敷のある貴族街へと繋がる検問所とは異なる種類の警備の厳重さが、帝都奴隷市場への出入口からは感じられました。
{我が主は一年以上帝都で暮らされていますが、奴隷市場を覗かれた記憶はありませんな?}
髪飾りの確認に対して、私は歩きながら横目で帝都奴隷市場の出入口である検問所を眺めつつ頷きまして。
『免状貴族身分の豪商であらせられる御父君の御息女でもある真実さんから聞きましたが、帝都では奴隷を個人所有する為には煩雑な手続きを必要とされるそうです』
飼育している大型犬が逃げ出して他者に噛み付くなどの危害を加えた際の責任は、飼い主にあるのと同じく。購入した奴隷が逃げ出して犯罪を犯した場合の監督責任も、所有者が負う事になりますから。裕福な貴族諸侯であらせられる皆様方や、免状貴族身分の豪商の皆さんの中には、平民身分の使用人を雇用されて、敢えて奴隷は購入されない方針を取られている場合もあると、ナディーネさんとヴェレーナさんが以前に仰られていられました。
{正に高い買い物なのですな、帝都における奴隷は♪}
楽し気に話した髪飾りに対して、私は特に感慨を覚える事は無く。
『先程見掛けました、街路の補修工事を行われていられました、帝国の公有奴隷の皆さんは、監視者に見張られながら仕事をされていましたが。専門の監視役を雇用する必要のある人件費も鑑みれば、奴隷を所有するよりも平民身分の人間を雇用した方が安上がりとなる場合もありますから。貴族諸侯であらせられる皆様方が、御自身の御領地内にて、大規模農場の農奴や、ミスリル銀を産出する鉱山の鉱奴を所有されるのとは異なる感覚が、帝国の首都である帝都では求められます』
地方部にある貴族諸侯であらせられる皆様方の御領地内にあります、大規模農場や鉱山でしたら、奴隷を用いた労働は所有者に莫大な利益を齎しますが。帝国の首都である帝都では、事情が大きく異なります。
『帝都と地方部は同じ帝国内でも本当に異なる別世界であると、一年以上に渡り学生寮で暮らしていても日々新たな発見があります。髪飾り』




