エピソード608 慌ただしい気配
「パタッパタッパタッ」
「ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ」
『何やら慌ただしく感じますね?』
私の疑問に対しまして、軍人一家であらせられますゾーリンゲン家の男爵閣下の御息女でもあります、令嬢の希望さんが。
『殺気は感じ無ぇから、バーデン家の女辺境伯閣下や、アタシ達を謀殺しようとする企てでは無さそうだな』
ナディーネさんによる見解に対しまして、レバークーゼン家の子爵閣下の庶子にして黒髪と褐色の肌色をされていられます高潔な貴公子であらせられますアンリ卿が、周囲の様子を窺われながら聞き耳を立てられまして。
『はい。令嬢ナディーネ女史。武器や甲冑の立てる音は聞こえません』
封建制度を政治体制に採用しています帝国におきましては、御領地と領民を御治めになられていられます止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方には、領界争いを解決する手段として自力救済の慣習が認められていますが。
『やはり貴族諸侯の家門で生まれ育ったアンリとナディーネは、場慣れしていると感じるな』
レバークーゼン家の子爵閣下の庇護下にあります、デュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息でもありますルネ卿も、地方部出身の平民身分の村娘でした私と、同じ感想を抱かれました。
『御歓談中に失礼をいたします』
『どうされましたか?。騎士様』
帝都憲兵隊の副総監にして、ケルン家の伯爵閣下であらせられます御父様の腹心でもあります呪術師の騎士様は、完璧な所作にて恭しく深々と御辞儀を行われまして。
『先程ノイス家に仕える家臣が騎乗する早馬が到着をいたしまして、上級の騎士様に火急の報告を行われたようです』
ふむ?。
『まさか親父が何かしたのか?』
ルネ卿は野心家の御父君に対して、かなり疑心暗鬼になられていられるようです。
『多分それは無いルネ。父上に成り代わりレバークーゼン家の御領地の領主代行をされていられる兄上が、害獣駆除の為の狩猟という名目にて、デュッセルドルフ家との領界付近に家臣団を率いて出ていられるから、迂闊な行動は起こせないはずだ』
デュッセルドルフ家の上級の騎士様の後ろ盾となられていられます、レバークーゼン家の子爵閣下とジェローム御兄様の御二方としましても、これ以上事が荒立つのは阻止したいと御考えになられていられます。




