エピソード605 家族や家臣では無い異性として
『チャプンッ』
『ふうっ…』
『ザアッザアッザアッ』
窓の外ではまだ激しい雨が降り続いていますけれど、私はノイス家に仕える使用人の侍女に用意をして頂いた温かいお湯に浸かり湯浴みを行っています。
『退役少尉が一家の家長をしています、平民身分の自作農の家で生まれ育ちました私は、お風呂に入る為には準備を全て自ら行っていましたから。本当に贅沢になったと感じます』
私の次に湯浴みをする為に服を脱いでいられます、軍人一家でもありますゾーリンゲン家の男爵閣下の御息女であらせられます希望さんは、日が落ちて暗くなった窓に写ります、均整の取れた美しい自らの姿を見られながら。
『花の話しを聞いていると、アタシは甘やかされて育った令嬢だと感じるな♪』
笑いながら話されましたナディーネさんに対して、私はお湯に浸かりながら苦笑を浮かべまして。
『申し訳ありません。もう退役少尉以外の顔は思い出す事も出来ない、帝都魔法学園に入学する以前の暮らしなのですけれど』
『ザアッザアッザアッ』
『こうした雨音を聞いたりしますと、急に昔の事が脳裏に浮かぶ事があります。ナディーネさん』
着ている物を全て脱がれましたナディーネさんは、灰白色の髪の毛を揺らしながら頷かれまして。
『アタシも突然昔の事を思い出す事はあるからな。音だったり以前に見た光景と似ていると感じた時とか、理由は異なるがな』
ナディーネさんも私と同じだと解りまして、少しだけですが安心をしました。
『ザパアッ』
『お待たせしました。ナディーネさん』
お風呂から出ました私に、ナディーネさんは湯上がりタオルを渡されますと。
『じゃあ次はアタシが入らせてもらうな。湯浴みが終わればバーデン家の女辺境伯閣下やノイス家の上級の騎士様との夕餉の席だからな。フロリアーヌ』
私は自らの金髪を、湯上がりタオルで拭きながら。
『はい。ナディーネさん。アンリ卿とルネ卿とは、夕餉の後に御話する事が出来るかも知れません』
ケルン家の伯爵閣下を御父様とします私と、ゾーリンゲン家の男爵閣下の御息女であらせられますナディーネさんは。レバークーゼン家の子爵閣下の御令息様であらせられますアンリ卿と、デュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息でもありますルネ卿とは。帝都魔法学園の外では家族や家臣では無い異性として、適切な距離を保つ必要があります。




