エピソード6 学業の傍らで
『花は、ヴェッケ・ヴェルクを好んで食うよな?』
向かい側の席に腰掛けている希望さんが、私が食べている余った肉と固くなったパンに野菜を混ぜて作る煮込み料理である、ヴェッケ・ヴェルクに視線を向けながら尋ねられましたので。
『ヴェッケ・ヴェルクは貴重な食材を無駄にせず食べられる美味しい料理ですので、私の故郷の村では人気がありました』
地方部出身の平民身分である私による説明を聞かれた、男爵閣下の御息女であらせられる令嬢でもあるナディーネさんは、納得された表情を見せられまして。
『ガキの頃から食べてた飯は旨いからな』
ナディーネさんは御父君であらせられる男爵閣下は、皇帝陛下の宮城にて宮仕えをされている官吏ですが。御爺様と御兄様達は全員が帝国軍の職業軍人という家庭環境にて生まれ育たれましたので。気風の良い話し方をされます。
『そう言えば爺さんが、またフロリアーヌとヴェレーナに仕事を依頼するかも知れないと、上屋敷で親父が話していたな』
ナディーネさんの話しに、私は学生食堂で隣の席に腰掛けていられる真実さんと目を合わせまして。
『前回の依頼で少しでも御役に立てたのでしたら幸いに存じ上げます。ナディーネさん』
『ナディーネさんの御爺様は、依頼の報酬を弾んで下さいますから、天から根元魔法の素質を授かりし女魔法使いとして、御役に立てるのは望外の幸いに存じ上げますわね♪』
私とヴェレーナさんの反応に、ナディーネさんも笑顔を浮かべられますと。
『長年に渡り皇帝陛下の軍隊である帝国軍で職業軍人として働いている爺さんは、必要経費はケチらないからな。詳しい依頼内容を聞いたら二人に知らせる事にする』
『お願いします。ナディーネさん』
『楽しみですわね♪』
帝国の中枢でもある帝都では、お金さえあれば便利で快適な生活を送れますので。帝都魔法学園で根元魔法を学ぶ学業の傍らで、女魔法使いとしての依頼を受けて報酬を得ています。